4-1. 泰氏のアルゴリズム ――冤罪の構図
大和の鳥見の地を
包んでいた銀色の静寂は、
今や刺すような緊張感に
取って代わられていた。
ニギハヤヒが築いた「共生」の秩序は、
内側から蝕まれつつあった。
泰氏の長がアマテラスの耳元で囁き続けた
「一神的秩序」という名の毒が、
ついに実を結ぼうとしていたのである。
泰氏は知っていた。
ニギハヤヒという
「智の巨人」が健在である限り、
自分たちが望む「完全管理社会」は
実現しない。
彼の「自由すぎる知恵」は、
民に自立を促し、
支配を無効化してしまうからだ。
「アマテラス様__。
ニギハヤヒ様は、
密かに地底の魔物と通じ、
あなたの『太陽の光』を
盗もうとしています。
彼の磐船は、
この国を救うためのものではなく、
異界へ魂を売り渡すための門なのです」
泰氏が提示したのは、捏造された
「神託」であった。
彼らは月の周波数を模倣し、
あたかもニギハヤヒが呪詛を
吐いているかのような偽の音響を
国中に響かせた。
アマテラスは、泰氏から授けられた
『八咫鏡』を凝視した。
鏡に映るのは、
不気味に歪んだニギハヤヒの姿――
泰氏のプログラムによって
書き換えられた
「偽りの真実」である。
「……私の光を拒む者は、
この国を統べる資格はない。
たとえ、それが師であっても」
アマテラスの瞳から、
ニギハヤヒへの敬意が消えた。
代わりに宿ったのは、秩序という名の狂気。
彼女は泰氏の書いた台本通り、
スサノオを呼び出した__。




