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命の輪(サークル・オブ・ライフ)  作者: 此花 陽
第一章:銀の磐船と月の種(ニギハヤヒの降臨)

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2/2

1. 降臨 ――鳥見の地の衝撃


 宇宙の深淵に浮かぶ月は、古の時代、

 ただの岩塊ではなかった。


 それは膨大な記憶を蓄積する

 銀のアーカイブであり、生命の設計図を

 静かに守る聖域であった。


 その月より、一柱の智者が選ばれ、

 未だ荒削りな熱を放つ地球へと差し向けられた。


 その名は、天照国照彦あまてるくにてるひこ火明櫛玉饒速日命ほあかりくしたまにぎはやひのみこと

 長い名は、彼が背負う役割の重さを物語っていた。

 天を照らし、地を照らし、

 火のような情熱と、くし――


 すなわち調律された知恵を持つ、

 豊饒の風を運ぶ者。


 彼は、後に「天の磐船あめのいわふね」と

 呼ばれることになる、

 重力をも超越した銀の船に乗り、

 大気圏を滑るように降下した。



 磐船が着陸の地に選んだのは、

 列島の中心部、大和の鳥見とみ

 白庭山であった。


 大気を震わせる共鳴音とともに、

 巨岩のような銀の船が山頂に鎮座したとき、

 周囲の森は一瞬にして静まり返った。


 鳥たちは歌うのを止め、

 獣たちはその「未知なる美しさ」に首を垂れた。


 船のハッチが音もなく開いたとき、

 そこから溢れ出したのは、

 この地球には存在しなかった

「銀の光」であった。


 天照国照彦あまてるくにてるひこ火明櫛玉饒速日命ほあかりくしたまにぎはやひのみことが、

 最初の一歩を大地に刻んだ瞬間、

 その足元から清浄な水が湧き出し、

 枯れかけていた草木が一斉に

 花を咲かせたという。


 彼は武器を持たず、

 ただ腰に「十種の神宝とくさのかんだから」を帯びていた。


 それは、物質を分解し、生命を蘇生させ、

 空間を歪めて外敵を退ける、

 月の文明が到達した

 究極の「道具」であった__。



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