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5-2. 大国主の慟哭 ――奪われるアイデンティティ
スサノオが率いる大和の軍勢が、
出雲の稲佐の浜に現れたとき、
大国主はかつての義兄弟の
変わり果てた姿に愕然とした。
「スサノオよ!
その瞳に宿る、
氷のような無機質な光は何だ!
お前はニギハヤヒ様から、
命を震わせる『嵐のリズム』を
学んだはずだ。
なぜ、あの泰氏という
得体の知れない者たちの、
ただの執行官に成り下がったのだ!」
大国主の言葉は、スサノオの内に
残る最後の良心を抉った。
スサノオは自らの罪を忘れるように、
より苛烈な圧力を出雲へと加える。
「黙れ、大国主!
時代は変わったんだ。
石や木と喋っているだけで何が守れる?
姉上の、いや泰氏が築く
『完璧なシステム』こそが、
この国を外敵から救う
唯一の道なんだよ!」
出雲の民は、
初代統治王を失いながらも、
必死に抗った。
彼らにとって国を譲ることは、
先祖代々受け継いできた
「宇宙の呼吸」を捨て、
秦氏の「一神的管理」という名の
機械仕掛けの神話に
従属することを意味していた__。




