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1.世界で一番の遊び人

娯楽


映画、食事、音楽、スポーツ、小説、アニメ、多種多様な種類のこれらは、人間の心を癒してきた。

娯楽とは現実と娯楽は正反対にあるものと言っていいだろう。

誰もが自分の中の本能を開放し、はしゃぎ、笑いあい、感動しあう。

そんな娯楽、私はどっぷりはまっていた。借金をするほどに。


明宮 俊、現実の世界で俺はこう名乗っていた。私は娯楽にすべてをささげた。

麻雀、ブラックジャック、大富豪、将棋などのテーブルゲームから、オンラインゲームの制覇まで、様々

さて、そんな遊び人で借金をした人間はどうなるか。


「...」


借金取りに車に押し込められ、今まさに臓器を失おうとしている。

仕方がない。娯楽は正反対にあるが、オセロの裏表のように接触しあっている。

現実を生きていてもたまの娯楽があるように、娯楽のあとには憂鬱な現実があるように。

後には現実が残るのだ。


『勇者様...勇者様...』


おっとここで何かが頭の中に直接流れ込んできた。こんな状況だ。

どんなことが起きてもあんまり驚かないぞ。


『目を閉じて、私を求めて...』


ガードが堅い女をほだしてベットに入った時みたいなことを言いやがる。

そういう女って少ししつこいから嫌なんだよな。


『お願いします...勇者様』


まあ、やることもないし、このままだと死ぬし。ちょっと求めてみるか。

って言っても女を求めるときってとりあえず繁華街行くか、出会い系でメッセージ送ってたからな。

どうやって求めるんだ?


「...私はあなたを求めてます。私をお導きくださいー」


なーんて試してみたけど、来るわけ...っておお!?

光が!上からなんか降ってくる!?


「うおおおお!!!??」


_________________


「おおぉ?」


景色が変わり、目を開けるとでっかい肖像画のようなものがまず見えた。

次にアニメでしか見たことがないようなぐるぐるの階段、そして...なんか

すごい横にでかい王様がそこに立っていた。


「おおー勇者よ。よくぞ来てくれた」


「...女性の声が聞こえたんですが、女性の方は」


「そなたの後ろにおる」


後ろを見ると、見るからにぼろぼろの服を着た獣人の女が三人立っていた。

耳が垂れている女、まっ直ぐな女、小さい耳の女、それぞれ肌の色や人種も違う。

耳が垂れているのが肌が黒く、小さい耳が白人のように白く、もう一人は中国人のような顔をしている。

いずれも瘦せていて、少し隈が見える。あまり休ませてもらえないのだろう。


なるほど、異世界転生は現実で起こるとこうなるのか。


「この国は、今滅亡の危機にある。我々とともに戦い魔王を打ち倒そう!」


対して王様はというと、肌が白く、横に長い、金髪で青い目をしている。

また太っているわりには肌がきれいで、指や首に大量のネックレスをつけている。


...なるほど


「標準的な異世界召喚だな」


「...?異世界召喚?」


この感じを見ると、この国は王権主義を主軸にした国家だ。中世レベル...だといいが、今のところ外を見ていないから状況がわからない。


「...そなた、勇者ではないのか?」


「一応呼ばれましたよ?女性の声が聞こえて、光に包まれたらここに来ました」


「おお!じゃあそなたが勇者で間違いない!」


...そして、次に周りを見渡す。標準的な装備を付けた兵士がかなりの数俺を取り囲んでいる。優に20人は超えているだろう。そして王の周り、兵士が5人程度だが、フードを深くかぶった人間が2人。


自分の手持ちのものはなし、一応衣服自体は来ているが、白いTシャツとジーンズ、そしてスニーカー、いずれも逃げられる保証はなし。


この世界が標準的な異世界だとするなら、この後テンプレ的にステータス鑑定の装置が登場するはずだ。

そこでこの世界での自分のステータスの確認ができる。この状況での最適解は...


「そんな!?この世界がピンチなんて!魔王軍...許せません。ぜひとも私があなた方の助けになりましょう!」


まずは自分がこの世界でできることの確認だな。


_________________


「こちらでステータスの確認ができます」


白い肌の小さい耳の奴隷女に連れられ、ステータス会場にやってきた。

王様は俺がそんな啖呵を切った後、ゲラゲラと笑いながらほかのやつに案内を頼み、そそくさと自分の部屋に戻っていった。


さて、この部屋は光る水晶を真ん中に置き、下に魔法陣が書いてある部屋だ。明りはなく、水晶と魔法陣だけが青く光り輝いている。

いわゆるテンプレの部屋である。


「こちらに手をかざしてください」


言われたとおりにてをかざす。そうするとテンプレのように、水晶の上にステータスのようなものが表示された...が


「...能力名以外不明?」


そこにはレベル、数字、何もかも開示されていなかったらしい。周りが騒がしくなる。


「...」


兵士達が淀んだ。そりゃそうだ。

ステータスがないんだもの。彼らにとってステータスが低ければ追い出し違う勇者を、ステータスが高ければ使いつぶそうと考えていたんだろうな。


「...能力名、コアギャンブル?」


「ああ、それはな。これだ」


手をかざすと、黒い空間から何かが出てくる。そこから出てきたのは装填式のリボルバー、Smith & Wesson Model 10だった。


「これは俺のいた世界の戦争兵器でな。こいつで脳天を撃っちまえば一発で人が死ぬ」


「...それらを量産することや譲渡することは可能か?」


兵士の一人が俺に聞いてきた。


「いや?できない。この銃に俺以外が触れようものなら四肢がもげ爆散する。試してみるか?」


「...後日、話し合い試す人間を決めよう」


んー、いい判断だ。ここで奴隷に持たせた場合、その奴隷がもしも王様や貴族のお気に入りだったら処刑、また兵士が触ったとしてもその責任を取らされて処刑。

責任を取らず確認するには、まずは上司の意見を聞きに行く。

社会に属するものは行動原理がわかりやすくて助かるよ。


「ひとまず部屋に案内しよう。すまないが非常に稀な事態でな。貴殿をどうするか話し合いたい。明日まで時間をくれないか?」


「...ああ、そうだった。了解しました!あの、今って何時くらいですかね?」


「...何時?」


「ああ、いえ、なんでもございません!対応ありがとうございます!」


時間の概念はなし、朝、昼、夜、太陽の動きで伝えている感じか。


「いったん、部屋に案内したい。ついてきてくれますか」


「ええ!喜んで!」


この部屋に来るまでに窓らしい窓はなし、つまりここは地下か。階段を一回降りただけで着いたならば、元々私が転移してきた部屋は一階...


「あの、私の部屋って何回にありますか?」


「勇者様ですからね。5階の景色がいい部屋を使ってください」


となると、時間がわからなくなることはない。一応私を勇者として祀る気はある...か。


「寛大な心に感謝いたします!」


「...ええ」


この反応を見るに、部屋を指定したのは王様、だけど王様を祀りたいとは思わない。

...色々見えてきたな。とりあえずへやにいどうするか。


_________________


「こちらが部屋になります」


長い階段を登り、たどり着いた場所は広い部屋だった。

でかいベッドがあり、テーブルがあり、インクや紙までそろえてある。


「すごいですね」


「この部屋に奴隷を一人置いておくので何かあれば、これにおっしゃってください。

また、この奴隷は勇者様の命令だけを聞くように作ったので、何かを拒絶することはありません」


...生々しい話になるが、性処理にでもなんにでも使えってことね。


「よろしくお願いします...」


窓の外を確認すると外は夕焼けが見えている。星はまだあまり見えないくらいのきれいな空だ。

外の建物が背が高い建物は城以外なく、自分の部屋より上の階はないようだ。

庭や外壁が見えているのを見ると、ここが端っこなのだろう。


「ほかの奴隷はどうしたんですか?」


「ステータスの確認方法や勇者様の実力を確認したうえで各々配置させていただく予定です。」


食事や魔法での訓練用の奴隷を配置するってことか?気前がいいな。


「...挨拶をしたいので、呼んできてもいいですか?」


そういいながら、私はベットのほうに視線をやる。兵士は感づいたような顔でため息をつき。


「いえ、こちらで呼んできますよ。夜の間でいいですか?」


「いえ、小一時間ほどでいいですよ」


...さて


_________________


「脱出するか」


「なんでですか!?」


元々いる奴隷がでっけえこえをだしてきた。


「...うるさい」


「すみません...」


こいつは、私がセックスをいくらでもできる環境であり、飯も十分に食わせてもらえる好待遇にでも見えているのか?


「あのなぁ、奴隷との話を小一時間したのは暇をつぶすためだ。夜寝静まった時に脱出するため、それ以外はないんだよ」


「なんでですか。ここにいれば、あなたは好待遇で尊敬されながら過ごせるんですよ?」


「馬鹿かお前は、王様と兵士を見ろ。それだけで個々の現状がわかるね」


「...」


「魔王軍が攻めてきている段階なのに、王様は太って金ぴかアクセサリーつけまくり、おまけに兵士に笑顔はない。何をするにも上の確認が必要。

王権主義の一番悪いところが出てやがる。王様がまともじゃなきゃ、機能しなくなるっていう」


「それに、あなたはここと玉座、あとは鑑定部屋にしか言っていないんですよ?この城は広く、あなたが行った部屋以外にも数えられないほど存在しています。その中から出口につながる場所を見つけ出し、その日うちに脱出するなんて無理ですよ!」


「...お前名前はなんていうんだ?」


「ほかの奴隷には聞いていたのに今聞くんですか!?...リーです。」


「では、リー。私の脱出を手伝え」


「!?」


奴隷の女の首に鎖のようなものが巻き付き、そして消えた。なるほど、これが奴隷紋の役割をはたしているのだろう。

ペットは鎖につないでおけということか。


「まあ見ていろ。なんとかしてやる」


「なんとかって!できるわけないでしょ!こんな、あなた何なんですか!あった時からずっと白々しいし怪しいんですよ!勝手に召喚されたのに、使命を理解したわけでも、勝手に召喚されて怒るわけでも、調子に乗るわけでもなく、ただただ目の前の人が喜ぶ言葉だけを選んで答えているだけ!何の心もこもっていない!」


こいつ、なかなかに勘が鋭いのか。


「あなたは一体何なんで」


あたりに銃声が響き渡る。背の高い建物がないこのファンタジー世界では銃声がよく響き渡った。

瞬間、窓から見えていた外壁が待っていたように爆発する。

岩が吹き飛び、外壁に大きな穴が開いた。


松明であろう小さな光が、一つ、また一つと集まってくる。


「...自己紹介がまだだったな。俺はシュン。あらゆるゲームで頂点に立ち、あらゆる娯楽をすべるもの」


さて、ここからの一人称は私ではなく、俺だ。シュンと名乗った以上、俺は


「世界で一番の遊び人だ!」


さあ、脱出ゲームの始まりだ。

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