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姉・リシア編(独占欲+カッコいいお姉ちゃん視点)

――私は、完璧でなければならない。

リシア=フォン=レクスハルト。

侯爵家の長女にして、次期当主候補。

剣も魔術も王国最高峰、政略にも明るく、舞踏会では“氷の華”と呼ばれる。


――でも、本当はね。

ただ一人の弟の前では、そんな肩書き、どうでもいいの。


(カナメ……今日も、私を見てくれるかな)

鏡の前で髪を整えながら、自然と口元が緩む。

腰まで伸ばした黒髪は、父譲りの漆黒。

瞳は母譲りの深碧。

どんな男も、どんな女も、この顔を見れば息を呑む。


……でも、あの子だけは。

「お姉ちゃん、すごいね」って、笑ってくれれば、それでいい。

それ以外は、全部いらない。



カナメは、昔から私に懐いてくれた。

小さい頃は、よく私の後ろをちょこちょこついてきて……

「お姉ちゃん、剣、教えて!」って。

その声が、可愛くて、愛しくて――


(あの頃に、戻れたら)

でも、今はもう、背丈もほとんど同じ。

少年の輪郭は消えて、少し大人びて……

でも、死んだ魚みたいな目だけはそのまま。

(……そこが、たまらないんだけど)



最近、カナメは屋敷で騒がしい。

無限合成? 世界最強?

どうでもいい。

あの子が望むなら、私はどこまででも付き合う。

――でも。


(最近、エリシアが距離を詰めすぎてる)

無表情で、当たり前のようにカナメに触れて。

気づいてる? あれ、完全に“狙ってる”わ。

ふふ、面白い。

お姉ちゃんね、そういうの……潰すの得意なの。



私は完璧なお姉ちゃんを演じる。

――でも、その裏で、弟を奪おうとするものは全部排除する。

舞踏会で近づく令嬢?

「カナメは婚約者が決まってるの、ごめんなさい♡」って笑顔で嘘をつく。

エリシア?

――あれは、どうするか考え中。

無表情の仮面を剥がして、跪かせるのも……悪くない。



そして今、私はカナメの部屋の前に立っている。

ドアを開けると――


「……あ、リシア姉」

黒髪を乱したまま、ベッドに寝転がってる。

だるそうな目。

本を片手に、片肘ついて。

(っ……可愛い)

何その、やる気なさそうな仕草。

世界で一番、私だけが見ていい姿。


「お姉ちゃん、暇だから遊びに来たわ♡」

私は、何気ない風を装って近づく。

ベッドの端に腰を下ろし、そっと肩に手を回す。


「ちょ……近い」

「いいでしょ? 姉弟なんだし♡」

そう言って、私の胸をわざと押し付ける。

だって、もう“子ども”じゃない。

男の子の顔、してるんだもの。


「……お姉ちゃん、やっぱり綺麗だな」

その一言で、心臓が爆発するかと思った。

(言った……カナメが、言った……!)

――もっと欲しい。

もっと、私を見て。

もっと、「好き」って言って。


「カナメ、こっち向いて?」

顎に指を添え、顔を上げさせる。

至近距離で、見つめる。

死んだ魚みたいな目に、私の顔が映ってる。

……この目に映る世界、全部、私で埋め尽くしたい。



「な、なに……」

「ううん。確認してただけ」

唇が触れそうな距離で、私は笑う。

――本当は、今すぐ奪いたい。

でも、それをやったら、カナメに嫌われるかもしれない。

だから――じわじわ、ね。


「じゃあ、ご褒美」

私は、カナメの額にキスを落とす。

軽く、音を立てて。

「っ……な、何するんだよ!」

「お姉ちゃんはね、カナメが褒めてくれたら、すごく嬉しいの♡」



その夜。

私は、自室で紅茶を飲みながら微笑む。

(エリシア、どう動くかしら)

あのメイド、絶対、何か仕掛けてくる。

でも――勝つのは私。

だって、私はカナメの“初めての女”なんだから。

産声を上げたときから、ずっと隣にいた。

誰にも、その事実は変えられない。


(カナメ。お姉ちゃんね、どこまでだってあなたについていく)

例え、王国を敵に回しても。

だって――カナメは、私の弟で、私の全てだから。

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