学院行き、決定!? ダラけたい俺に新たな地獄が…
やっぱり投稿する
――盗賊団を蹴散らした俺たちは、屋敷に戻っていた。
白い大理石の床と金の装飾。壁に並ぶ絵画。……何度見ても思う。
(いや、これ、完全に“貴族の家”じゃん……)
――そう、俺はアルグレア公爵家の次男。
父は“剣帝”、母は“聖女”。
そして俺は、その二人の息子……肩書きが重すぎるんだよなあ。
(前世、ただの社畜だった俺が、なんでこうなった……)
――そう、俺はこの世界に来て16年。
記憶を取り戻したのは5歳の頃だが、その日から俺の目標は一つ。
「二度と働かない」
――それだけ。
実際、昨日までは完璧に平和な日々を過ごしていた。
剣も魔法もサボりまくり、寝て、食って、たまに本読む。
“将来は引きこもり貴族”――そう思ってた。
……昨日までは、な。
⸻
「よくやったな、カナメ」
父――ジーク・アルグレアが豪快に笑った。
“剣帝”と呼ばれる男は、筋肉の塊みたいな体で、片手にワインを持っている。
「盗賊団を三十人、一瞬で片付けるとは……やはり我が息子だ!」
「……俺、別にやる気なかったんだけどな」
気だるげに答えた俺の声は、ひどく無感情に聞こえただろう。
なぜなら――俺の顔がそうだからだ。
黒髪に黒い瞳。形は整っているのに、目だけが死んでる。
童顔のせいで“イケメン”と呼ばれることもあるけど、覇気ゼロ。
「本気でやる気ないんだな」って顔らしい。
(まあ事実、やる気なんてかけらもないんだが)
――それでも、昨日の戦いで**“何か”が目覚めた**。
脳内に浮かんだ、光のインターフェイス。
素材を組み合わせて、新しいアイテムを創る能力。
《無限合成》
――創造系統の最上位スキル。英雄譚にしか出てこない、伝説級の力。
(でも、なんで今になって覚醒したんだ?)
父いわく、「英雄家系の血に眠るギフトは、命の危機で発現する」らしい。
……いや、俺、ただ「死にたくない」って思っただけなんだが!?
⸻
「だが――お前の力は危険だ。制御も必要だし、何より……狙われる」
「いや、それマジでやめてくれ……」
「だから――王立魔導学院に入学しろ」
「…………は?」
学院――この国で最も大きな学舎であり、英雄候補が集まる場所。
王族や名門貴族、軍の精鋭、果ては化け物級の天才まで集う地獄。
(いや、待て、何で俺がそんなキラキラ青春の場に……)
「お前の力は国の未来に関わる。すでに王も知っておられる」
「……はあああ!? 国王!?」
(完全に逃げ道なくなったんですけど!?)
⸻
夜。
「カナメ♡」
姉――リシアが俺の部屋に突撃してきた。
相変わらず、モデル顔負けの美貌とスタイルで、距離が近すぎる。
「学院、楽しみね♡ カナメと同じクラスだったら最高だわ♡」
「いや、まさか姉ちゃんも行くのかよ……」
「当たり前でしょ? 公爵家の長女よ?」
「……はあ、マジか」
(俺のダラダラライフ、完全終了のお知らせ)
さらに――
「ご主人様、準備は整いました」
音もなく現れたのは、銀髪の暗殺者メイド・エリシア。
「学院でも、私がお世話します」
「いや、メイドって学院に……」
「許可は取りました」
「…………」
――もう、やだ。
⸻
翌日。
巨大な白い城のような建物と、空に浮かぶ魔導障壁。
「ここが……王立魔導学院……」
「カナメ、頑張ろうね♡」
「ご主人様、怠惰は罰です」
「……うるさい」
そのとき、前方で――
「きゃっ!」
金髪碧眼のお嬢様が荷物を落とし、しゃがみ込んだ。
俺はため息をつきつつ、しゃがんで拾う。
「……ほら、落としたぞ」
「ありがとう……!」
微笑む彼女は、絵本から抜け出したみたいな完璧なお姫様。
――と、その瞬間。
脳内にシステムメッセージが浮かんだ。
【特殊素材を発見:???】
(……は? 今、この子、素材扱いされたよな!?)
意味がわからず固まる俺の後ろで――
「カナメ? 誰、それ」
「答えてください、ご主人様」
姉とメイドの声が、氷点下に落ちた。
――俺、入学初日から地獄なんですけど!?
(第5話へ続く)
整骨院凄い、復活