メイドの忠誠と、俺の初チート発動
2話
――翌朝。
俺は豪華なベッドの中で、天井を見つめながら思った。
(ああ、やっぱり夢じゃなかった……)
昨日の衝撃は、まだ脳に焼き付いている。
イケメン過ぎる親父。
女神級の母。
暗殺者みたいな美人メイド。
そして俺――英雄の息子で、無限合成チート持ち。
「……ああ、でも俺、やっぱ働きたくないんだよなあ……」
そうつぶやいた瞬間、部屋の扉が静かに開いた。
「ご主人様、お目覚めですか」
――エリシアだった。
銀髪ロング、氷みたいに冷たい美貌。
完璧な執事服風のメイドドレスを着こなして、俺に一礼する。
「朝食の準備が整っております。ご案内いたします」
「……いや、もうちょい寝たいんだが」
「許可できません」
「即答!?」
エリシアは俺の布団を一気に剥ぎ取った。
いや、ちょ、冷たっ! ここ、石造りだから床冷たいって!
「ご主人様、あなたは世界の要となるお方。生活習慣の乱れは許容できません」
「いやいやいや、俺、まだ世界救うとか決めてないから!」
「決める必要はございません。すでに運命です」
「やめろ、そういうパワーワード!」
逆らえずにダラダラと起きた俺は、エリシアに連れられて食堂へ向かった。
――そこには、さらに衝撃的な光景が待っていた。
広すぎる食堂。長すぎるテーブル。
その中央に座っていたのは、昨日の爆美女――母。そして――
「カナメ♡ おはよう♡」
母が手を振る。その横に、さらにやばい美人が座っていた。
俺と同じ黒髪、でも腰まで伸びた艶のある髪。
顔立ちは母譲りの美貌+ちょっとクール系。
そして――やたらと距離が近い。
「ふふっ……弟、ようやく起きたのね」
「……え、えっと、誰?」
「お姉ちゃんよ。リシアよ」
お姉ちゃん――!?
いやいやいや、なんで姉がこんな爆美女なんだよ!
ていうか、距離近っ! 顔近っ! 胸当たってるって!
「お姉ちゃん、昨日は会えなかったから、今日はいっぱい可愛がってあげる♡」
「ちょ、やめ――ぐええ!?」
首に腕を回され、押し付けられる。
柔らかい。いい匂い。
でも、息できねえええええ!
「……ご主人様」
氷点下の声が後ろからした。
振り向くと、エリシアが無表情で俺を見ていた。
……こわっ! 目が笑ってないどころか、完全に殺意宿ってる!
「ごはん食べよっか♡」
母が笑顔で言う。
――いや、これ絶対、普通の朝食じゃないだろ!?
(中略)
――そして、問題の『無限合成』タイムが来た。
「カナメ、せっかくだから力を試してみろ」
親父が言った。
渡されたのは、古びた剣と宝石。
「これを……合成するのか?」
「そうだ」
俺は恐る恐る、二つのアイテムを手に取り――
――システム起動。『無限合成』開始。
脳内に光の文字が浮かんだ。
【素材:古びた剣+火炎宝石 → 炎剣を生成します】
「うおおおおお!?」
剣が光り、真紅の刃に変わった。
……めちゃくちゃカッコいいんだけど!?
「すごい……!」
姉が目を輝かせ、母が「さすがカナメ♡」と頬を染め、エリシアは――
「……ご主人様、最高です」
いつの間にか至近距離で、耳元に吐息かけてきた!?
え、なにこのメイド、怖いけど色気ヤバいんだけど!?
――こうして俺は、チートのヤバさを理解した。
でも、俺の心は決まっている。
(使わない。だって俺、ダラけたいし)
……そう思った矢先、屋敷に飛び込んできた使用人が叫んだ。
「大変です! 盗賊団が近くの村を襲っています!」
エリシアが、すっとナイフを抜いた。
「排除します」
おい、待て待て待て!
まだ第2話だぞ!?
俺のダラダラライフ、どこいった――!?
(第3話へ続く)
日本暑すぎる…