異世界転生したら、最強家族とメイドに囲まれた件
初投稿です
――目を覚ました瞬間、俺は理解した。
ここ、俺の知ってる世界じゃない。
まずベッド。ふわっふわ。高級ホテルのキングサイズ以上。
天井には金ピカのシャンデリア、壁には剣と魔法の紋章みたいなのが飾ってある。
「……え、なにこれ、異世界?」
状況を整理する。
確か俺は――会社でブラック残業した後、ビルの階段で足を滑らせて……あ、そうだ。
死んだんだ。
「え、ってことは、これが……転生?」
と、その時――。
「おお、カナメ。目を覚ましたか」
低く響く声が部屋を震わせた。
振り向いた俺は、そこで言葉を失う。
――バカみたいにイケメンが立ってた。
漆黒の髪に銀のメッシュ、大剣を背負った長身の男。
アニメやラノベでよく見る『最強剣士』みたいなオーラをまとってる。
いや、むしろ現実にこんな人間いないだろレベルで整った顔。
「えっと……どちら様?」
「何を言っている。我はお前の父だ」
「は?」
頭がバグった。
父? 何? 俺、親父こんなキャラじゃなかったぞ?
ていうか日本人? 設定おかしくない?
さらに追い打ちをかける声がした。
「カナメちゃん♡ 起きたのね♡」
甘ったるい声と共に、俺の目の前に現れたのは――
とんでもない爆美女だった。
腰まで届く白銀の髪、紫の瞳、妖艶な微笑み。
胸のボリューム、ドレスの露出度、なんかもう全部規格外。
「えっと……どちら様?」
「何を言っているの? ママよ♡」
「はああああああああああああ!?」
思わず素で叫んだ。
親父が最強剣士風のイケメンで、母親が女神みたいな美人?
いやいや、待って。そんなのありえんだろ。
「説明してくれ……」
「よかろう」父は腕を組み、豪快に笑った。
「お前は異世界に転生した。我らはこの世界の英雄。そして――お前は我らの息子だ」
「…………」
「運命を背負いし者、カナメよ。世界を救う力はお前の中にある」
「いやいやいや、待て待て待て」
――なんでそうなる!?
そもそも俺、そんな大役やりたくないんだが?
ダラけたい。寝たい。ゲームしたい。
異世界転生したって、ブラックな運命とか御免だぞ!?
と、俺が必死に現実逃避していると――。
「……ご主人様、起きられたのですね」
冷ややかな声が背後からした。
振り返ると、そこには――銀髪ロングの完璧なメイドが立っていた。
「……」
無表情。だけど、目だけがやたらと鋭い。
顔は超絶美人なのに、笑顔ゼロ。まるで暗殺者のオーラ。
「ど、どちら様?」
「ご主人様専属のメイド、エリシアと申します」
「専属……?」
「はい。命ある限り、あなたにお仕えします」
……いやいやいや、なんだこのフラグだらけの状況は。
親父最強、母親爆美女、謎の殺し屋系メイド。
で、俺は――?
「……え、俺、強いの?」
「はい、ご主人様は無限合成の適性をお持ちです」
「むげん……ごうせい?」
「世界にただ一つの力。あらゆる素材を合成し、理想のアイテムを創り出す能力」
――きた。なろう系テンプレの『俺だけのチート』。
でも、俺は確信している。
この世界、絶対に面倒くさいことばっかりだ。
「……できれば使いたくないんだが」
「残念ですが――」
エリシアがわずかに微笑んだ。冷たい、けどどこか狂気を含んだ笑みで。
「放っておけないのが、あなたの性分ですから」
――やめろ、その通りすぎて泣きたくなる。
こうして、俺の異世界生活は幕を開けた。
ダラけたいだけなのに、何で俺、こんなにフラグ立ってんの?
(第2話へ続く)