(⚠️グロ描写あり⚠️)幕間 アリシア=セナ=イレーネの手記
グロ描写あり
私は、アリシア・セナ・イレーネ。
古より王家に仕えるイレーネ家の令嬢として、この王都で育てられてきました。
そして、私には――
物心ついた時から、ずっと傍にいてくださった方がおりました。
王都直属騎士団に所属する、「光剣」の異名を持つ剣士、レイ=アストリア様。
学校へ向かう時も、王都で買い物をする時も。
ピクニックの草原にも、いつもその方がいてくださったのです。
気がつけば私は、あの方の笑顔に、剣筋に、声に……すべてに、惹かれていました。
レイ様が剣を振るっている姿を遠くから眺め、
お昼時にはお弁当を持って行き、「美味しい」と言ってもらえるのが、
私の何よりの幸せでした。
……あの時までは。
その日、部屋に“商人”と名乗る男が現れました。
屋敷の警備は厳重です。衛兵たちが門を守り、許可のない者は立ち入れないはずなのに。
私の部屋の前にも、もちろん衛兵はいたはずです。
けれど男は、何の妨げもなく部屋に入り、私の髪を掴んで無理やり外へ引きずり出した。
衛兵たちは……私たちの姿を、見ようともしませんでした。
あろうことか、侍女たちも……私を、見ていないのです。
私の髪は引きちぎれそうになり、服は破け、足元には血。
それでも“誰も”気づいてくれなかった。
やがて私たちは、王都の商業区――
その中心に現れた“黒い半球”の中へと踏み入れました。
中にいたのは、肉塊と化した数体の衛兵。
そして、その中央で膝をつく――レイ様。
駆け寄ろうとしたその時、
“男”がレイ様に何かを囁いた。
直後、レイ様は叫び声をあげ、剣を拾い、男に向かって突進した。
その瞬間、
髪を掴んでいた商人が魔獣へと姿を変え――
レイ様の頭部と胴体を、まるで玩具のように引きちぎった。
地に落ちたのは、
私が慕った人の、かけら。
私は、無我夢中でそれを拾い集めていました。
肉片を、腕を、頭を――血に染まりながら、必死に……。
その時、男は私の前に立ち、言いました。
「このことを、誰かに話せば――お前とお前の家族、大切な者たちをすべて殺す」
その言葉と同時に、
全身に“呪い”のような衝撃が走ったのを覚えています。
それからというもの、
毎晩レイ様の笑顔と、死に顔が、夢に現れます。
気がつけば、紙にレイ様の似顔絵を描き、
赤い絵の具――いえ、赤い水で、それを塗り潰していました。
……なぜ、彼は私を殺さなかったのでしょうか。
なぜ、あの場で終わらせてくれなかったのでしょうか。
なぜ、私だけが“見届けさせられた”のでしょうか。
なぜ……
なぜなのよ……!!!
……この先の記憶は、もう……
わかりません。
あの男に、何を思えばよいのか。
怒りか、恐怖か、哀れみか……
……もう、なにも、ございません。
アリシア=セナ=イレーネ