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Lapis-landiA ─黒曜秘石恋闘譚─  作者: 八広まこと
Season2

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薔薇輝石(ロードナイト)27







「現時刻を持って遂行任務の終了、および任務変更。」 


「新しい任務は『聖女』の護衛。期間は今から滞在期間までの、約五十時間。その間のスケジュールは一時間後に追って知らせる。」

「「了解。」」


 そこまでを、大隊長の顔で指示して、クロウがふっと息を吐いた。


「とりあえず、あともう少しなんで、頼むわ。」

「了解!」

「・・・はーい」

「ちょ、トラ!」


 簡単な打ち合わせと、追加で降って湧いた警護の仕事──元々想定の内ではあったが、クロウは今度こそ息を吐いた。


 そのまま、応接室へと向かう。


 セルサス王と王兄アゼレヴィル、そして王太子アーディヴェルに、リィン、セルゲイ、シオンが一卓をかこんでいた。。

 入り口に立つアゼレヴィル直下の騎士に目配せを送り、室内へと静かに入れば、


「・・・・・っ」

 僅かにコチラを見て、目を細めるシオンに、柔らかい視線だけを送って。そのまま、いつも通りリィンの背後へ立つ。


 これは公式には残さない打ち合わせのようなものであることをセルサス王が宣言した上で、


「まずは何より・・・。」

 と、セルサス王は深く頭を下げた。 

「リィン殿には感謝してもしきれない。本当にありがとうございます。貴殿の軍は文字通り、一騎当千の働きをされる。」

「そういう方を選びましたから、当然のことです。」

 チラリと背後のクロウへと目をやり、リィンが満足気に頷いた。

「まぁ、でも、ワタクシ達よりも、ね。」

「そうですね。」

 リィンは既に色々と報告を受け、承知していると言わんばかりに笑みを浮かべる。すれば、セルサス王はくるりと、シオンの方へと向き直った。

「セレスティニア殿にも。」

「へ・・・?」

 突然名指しされて、考えてもいなかったのか、シオンが素っ頓狂な声をあげる。 

「この度は大変なご迷惑をかけた。その上で、貴女にはその刀の腕と行動力に最も助けられた。心からの感謝を。」

「い、や!別に!俺──・・・私、は・・・。」

「王太子からも聞いている。王妃の心にも添いてくれたとか。」

「そんな、大したことは・・・。」

 感謝を告げられる度に、しどろもどろになるシオンに、セルサス王は眩しそうに目を細めた。

「なるほど、それが本来の貴女、というわけか。」

「あらあら、セレスティニアさん。折角練習したのに、悪女の仮面、剥がれ落ちてるわ。」

「なんと、そんな練習を!?」

 セルサス王が声を上げて笑う。

「貴女をココに呼んだのも、結局私のお節介から、になるしなぁ・・・。」



「・・・・・。」


「そこ、なのよね。」


 リィンが、不意に真面目な顔で指摘にする。


「ワタクシ、当初セレスティニアがこの場所に呼ばれた事を快く思ってはなかったのよ。今だから白状するわ、今更って思った。そうでしょ?」

 そうしてリィンがセルゲイを見据える。すれば、セルゲイは僅かに俯いて、頷いた。

「・・・私も、今更だとは、考えました。ただ、セルサス様から、王兄からの命令だと、聞いていたので・・・。なんとか、呼ぶしかないのか、と。」

「アゼルからの、命令、ね。」

「・・・・・。」

 リィンがアゼレヴィルに目を向ければ、隣にかける王兄は静かに首を振った。

「俺は、そんな事を言ってはいない。」

「・・・私は、てっきり、あの夜の魔人奴隷を目撃した行為の、口止めの事かと。私の妻か娘、もしくはセレスティニア、を人質に、と・・・。」  

「せめて・・・。」

 アゼレヴィルが少し残念そうに、セルゲイを見た。

「一度、連絡が欲しかったな。」

「私も、そうするべきだったと・・・。今は、わかります。」

 お互いが顔を見合わせて小さく笑った。


「セルサス様は・・・その命令を、直接アゼルから?」 

「・・・・・。」

 不意に、ぐらりとセルサス王の身体が揺れる。それに気付いたアーディーが彼の体をすかさず支えた。

「父上!」

「セルサス様!?」

 思わず立ち上がった周囲を制して、セルサスが額を抑えながら首を振る。

「大事無い。少し、目眩がしただけ、だ。」

「・・・・・。」

 その様子を見て、リィンが眉根を寄せる。そして、セルサスは

「私は、兄から、直接、聞いた。」

「・・・・・。」

「聞いた、筈だ。筈、なのだが・・・。」

 はっきりと思い出せない、と。セルサス王は首を振る。その眉間にしわが寄る。


「一つ、気になる事がある。」

 アゼレヴィルが心配そうにセルサスを見つめたあと、リィンを見た。




「ヴェラドンナと、接触が取れない。」

「・・・・・。」




 ヴェラドンナ。

 魔人を専門とする、唯一の奴隷商人。

 ノヴル=オルガヌスを拠点としている、はずだが、この5日は連絡が取れないと言う。

 今までは王兄でもあり、大口の客として必ず連絡が取れていた。それが連日の連絡にも関わらず接触はおろか、一切の反応がないらしい。


「一つの推測、だけど・・・。」

 リィンが、背もたれに体を預け、天を仰いだ。

「拠点の変更、かしらね。」


「そうすれば、カルベラでの、『イ=ラウ』の役人との接触も分かるわ。あそこの鹿やろ・・・、もとい、ケルバス殿は、ワタクシがだ~いすきですしね。」

 酷く意地の悪い顔をして、リィンが鼻で笑ってみせた。脳裏に浮かぶ顔に小さく、クソったれと呟く、心の中で。

「だとすれば、オルソットの反乱もどこまで影響しているか分からないわね。意外とそのルートを清算する目的もあったのかしら?ついでに用済みを排除する、とか?」

「・・・・・。」

「ふふふ、とことん好きにかき回された感じね。」


 リィンがアゼレヴィルを見れば、その顔は苦虫を噛み潰したような顔になる。


「貴方がおサボりしていた影響、かしらね?元『元帥』殿?」


 戦時中の、アゼレヴィルの役職──ノヴル=オルガヌスでの軍の最高位で呼ばれて、アゼレヴィルが嫌そうな顔でリィンを見た。


「貴方達兄弟も、夫婦も、少しおしゃべりが足りないんじゃない?」

「・・・お前んトコの『白銀』にも、似たような事を言われたな。」

「あらあら。」

「そうだ、それについて抗議しようと思ってたんだ。いくらなんでも不敬すぎると。」

 チラリと、アゼレヴィルがクロウを見れば、クロウは僅かに頭を下げては、

「自分は、命令に従ったのみです。」 

 と、飄々と言ってのける、から



「ぶふ・・・っ!」


 耐えきれず、シオンが小さく吹き出す。

 咄嗟、全員からそちらに視線をむけられるから、

「あ・・・。」

 思わずかたをすくめて、口をつぐむ。


 一瞬、クロウに対して、


(お前が阿呆な返しするから・・・!)


 と、非難めいた視線をむけるが、クロウもクロウとてその視線を受け止めつつも、周囲の視線を探りながら、一度だけ舌を出して応えてみせる。


 そんなシオンの様子を見ていたセルゲイが、少し安堵するような、戸惑うような視線をシオンに向けた。


「セティア・・・。」

「あ、はい!セルゲイ兄さま!」

 不意打ちにも近い愛称呼びにも、彼女は、幼少期と同じ、無邪気な返事を返す。それに、懐かしさと切なさを感じて、セルゲイがくっと息を飲んで、


「すまない、セティア。」

「え?」

 不意に頭を下げる。

「に、兄さま!何を・・・!むしろ、コッチが騙してて!」

「いや、違うんだ。」


「あの時、お前を一人にして・・・。確かに、僕の中には考えがあったけど、それでも、お前を一人にしてしまったことは、変わらない。」

「・・・・・。」

「それを、ずっと、謝りたかった。」

「・・・・・。」


 二人の会話に、リィンがチラリと背後のクロウに視線を向ける。案の定斬りかかりそうな雰囲気でセルゲイに目を向けているのを、軽く手で制する。

 すれば、ぐっと奥歯を噛み締める音が聞こえて、


(本当に、この男は・・・。)


 と、呆れ半分、楽しさ半分で肩をすくめる。



「セルゲイ兄さま・・・。」

 暫く無言の後、シオンが、ふっと肩の力を抜くように

「私とて、あの時、貴方を助けには行けなかった・・・。」

「え?」

「父さまが死んで、暫く動けなくて。アルに・・・アルベルトに逃がしてもらったんです。」

「・・・・・。」

「私も、自分だけ。自分が逃げる事に、必死で、兄さまの事も、浮かばなかった・・・。」

 少し目を細めて、シオンが笑う。きっと、半分嘘で、半分真実。

 その声を聞きながら、クロウだけはそう理解していた。


 あの子が、身内を置いて一人逃げるなんて考えるわけがない。地獄の中でも、母親と兄を探したのだろう。そうしているうちに、きっとアルベルト(あの女)が、彼女を無理やり脱出させたか・・・。


「・・・そう、そうか。」

 シオンの話を聞いて、セルゲイが安堵のため息を吐いた。

「それだったら、いいな・・・。」

 彼も半信半疑、と言った様子だが、それ以上を問うのは避けているようだった。

 そして、その目がクロウを捕らえる。突然向けられた視線に、一瞬驚いた表情をしたが、それでも、静かなその視線を、クロウが真っ直ぐに受けた。


「クロウ=シキジマ第四大隊長、だったね。」

「・・・・・。」

 セルゲイの問いかけに、クロウが、無言の会釈で持って応える。

「セティアを守ってくれてありがとう、兄として、心からの感謝を。」

「・・・・・。」


「あと、大変な演技に突き合わせてしまって悪かったね。」

 その言葉に、ピクリと、クロウが微かに反応する。

 その前でリィンの肩が僅かに震えているのが見えて、クロウは、思わず舌打ちをした、これまた心の中で。



「セティアは、これからどうするんだい?」

「え?」

 セルゲイの問いに、シオンが、意味を理解できず、彼の方を見る。 

「ルミナスプェラの、客人としてまた、戻るのか?」

「え?あ、いや・・・」

「もし、君が望むなら、この国での生活も保障できる。今なら、僕も君を助けて上げられる。」


 予想外の言葉に、シオンは言葉も出ない。

 その様に、アゼレヴィルが面白そうな顔で話に割り込んできた。


「なんなら・・・」


 アゼレヴィルの声に、シオンがそちらに視線を向けて、


「今回の功労ということで、俺の妃に、迎え入れてもいい。」

「は?」

「あぁ、セレスティニア殿が良いならそれもいいですね。」


「え?え?いや、なんで、そんな話に・・・?」


 当人が理解できないままに、王と王兄、そして、セルゲイで話が進んでいく、から





「・・・・・。」



 黙して、耐えて、震えて・・・。



「・・・無礼を、承知で、失礼、します。」



 限界を、超えたクロウが、リィンに許可を求める。

 すれば、瞬間、



「ぶはっ!あはっ、あはははははは!!!」



 我慢できないと、言わんばかりに、リィンが体を震わせている大笑いした。


「ちょ、待って待って待って!セルゲイとセルサス様はともかく!アゼル!貴方は流石に気付いてるでしょう!?」

 すれば、きょとんのした顔のセルサス王とセルゲイに対して、アゼレヴィルはニヤリと意地の悪い笑みをリィンに返す。

「何のことだ?今までのは演技だと聞いたぞ?ならセレスティニアは誰のものでもないだろう?」

「やだ!それは宣戦布告?」

 口元を抑えて目をキラキラさせるリィンに、

「そう受け取ってもらって構わないが?」



「・・・・・。」



 瞬間、極上の殺気を惜しげもなく晒した緋い目が、王族も『オブシディアン』も、容赦無く、射抜く。

 それもまた、今までの仕返しとばかりに面白そうな顔でアゼレヴィルが受ければ、クロウは


(やっぱり、どいつもコイツも、ブチ殺せばよかったか・・・。)


 怒気を含んだその姿が小烏丸の鞘をグッと握るだけで、堪らえようとして、



「リィン様。」

「あら?なぁに?」



 当人の話のはずが、なんとなく蚊帳の外な気分に。面白く無さそうな、シオンが、ジト目のまま、リィンに声をかけた。

 そして、まさに何もかも射殺しそうな背後の男を見つめて、


「後ろの駄犬、一旦『返して』頂いても、構わないでしょうか?」


 一瞬、目を見開いたリィンが、ニンマリと笑って、手でクロウに合図を送る。訝しげな表情のまま、クロウが徐にシオンの背後へと付くから、


 振り返るや否や、シオンが


「ん。」

「・・・は?」


 両手を広げて、待機。



 その様に、一瞬息を呑んで。

 だけど、シオンの思惑がすぐには分からず。

 どうするのが正解か、と思案顔のクロウに、再びシオンが呆れた様に、


「いつも、どうしてる?あんだけべたべたくっついてくるクセに。」

「・・・・・。」

「ほら、今、返してもらったぞ?」

「・・・・・。」

 


 そうして、ダメ押しの一言を、笑って告げる。




「仕事中じゃ、ないってさ?」

「───・・・っ!」


 


 なら、迷う必要はない。

 




 その身体を引き寄せて、強く抱き締めた。




 首筋に埋めるようにしてぎゅうぎゅうしがみついてくる、その、白くふわふわな髪を、シオンがゆっくりと撫でる。

 

 演技だと聞いていた二人の、その様子を見て、セルゲイが小さく息を飲んだ。


「・・・セ、ティア?」

「もう、セティアじゃないよ、兄さま。」

「・・・どういう、ことだ?」


 セティアとしての無邪気な顔でもなく、作り上げたセレスティニアとしての妖艶な表情でもなく。


「私は・・・」


「俺は、もうセレスティニアじゃないんだ。」


 悪い・・・。


 と、腕の中の人を優しく抱き締めて、シオンがいつも通り、男前に笑う。



「セティア・・・?」

「客人とかってのも、嘘。」

「・・・・・。」

「今の俺はさ、ルミナスプェラの首都で、親爺の店の手伝いをしながら暮らしてる。」

「店・・・?」

「シオン=オブシディアンとして。」

「・・・シオン。」

「この髪も、嘘。」


 グッと引っ張るけど、中々ほどけないそれを、また無理矢理引っ張ろうとするのを、ようやく顔を上げたクロウが制した。

 耳元に落とした言葉に、だって、と、返すのだけが見て取れて。すれば、クロウがその首に手を回して丁寧にほどいていく。


 少しずつ床に落ちていく、結われた長い髪。


「な・・・」


 元々の、毛先が僅かに肩に触れる程度の、ともすれば男にも見える程の長さへと戻っていく。

 セルゲイが呆気に取られていくその変化を、それでも安堵したようにシオンがほっと息を吐いて。その姿に、クロウもまた優しく目を細めた。


「戦争が終わって、ルミナスプェラに、流れ着いて。縁あって・・・」

「・・・・・。」

 シオンが、クロウの頬に手を当てる。その目が、彼だけなのだと、告げる。

「コイツに・・・クロウに、会って・・・。その、惹かれて、・・・一緒になった。」

「なに、言って・・・」

「俺、もう、コイツのモノだよ?」




「だから、ここには、残らない。」

「・・・・・。」




「俺は、コイツと帰るよ。」

「・・・・・。」




 しっかりと、そう告げるシオンに、アゼレヴィルが小さく「フラれたか」と、肩をすくめ、それを側でみていたセルサス王が小さく笑う。


 セルゲイだけが未だ理解できないと言うように眉根を寄せて、


「・・・リ、リィン様?一体コレはどういう──」

「───・・・っ!!!!」

 セルゲイが彼女に目を向ければ、ニヤける様を隠しきれない様子のリィンが、必死に口元を押さえている。


 と、セルゲイの視線を察して、


「あら、ごめんなさい。ワタクシったら。」


 楽しげな彼女に、セルゲイが思わず声を張る。


「一体どういう事なのです!客人だと伺ったのですが!?」

「うーん、そうね、だから、セレスティニア様は『客人』としてこちらにご案内致しましたわ。」

「リィン様!」

 まるでとんち返しの様なリィンの返事に、はぐらかされたかと、セルゲイが訴える。

 が、それに一瞥をくれたリィンが、


「今回は、正式な招待の上で、文化の違う場所に来る、その配慮故に、客人として彼女を案内しただけ。」


「ただ、ワタクシがお会いしたときには、既に彼女は、シオン=オブシディアンだったのですよ。彼女が、彼女自身の力で勝ち取った、自由と生活の中にいた。その上で、我が国の第四大隊長と出会い、愛され、愛した。ただ、それだけの話です。ソコに、ワタクシが入る必要があるかしら?余地すらないわ?」

 全くの正論に、反論もできず。セルゲイが、ただただ、唸る。

「そ、そんな・・・。セティアが、あの娘が、そんな生活を・・・。」

「その感覚だからよ。」

 リィンが指をさす。その仕草に、セルゲイが僅かに臆した息を飲んだ。


「シオンは自由だわ。その、自由の中で、シオン自身が止まり木を選び、共に飛ぶ相手を選んだ。それのナニが駄目なのです?」

「・・・・・。」

「彼女を守る役目はもう貴方にはない。それは純粋に、ウチの大隊長・・・、じゃ、ないわね、クロウ=シキジマさんのものだわ。だって彼女が望んだんだもの。」

 

 それだけを言うと、リィンが掲げた手をふいっと下ろす。すれば、エルヴィスとトラヴィスがとん、とリィンの側へと下りてくる。


 そして、そうそう、と。


「クロウ=シキジマ第四大隊長サンに、一つお願いするわ。きっと貴方の頭の中には、この二日間の警備配置とか色々あると思うのよ。」


 不意に話が変わって、クロウが、


「・・・ん?」


 シオンを抱き締めたまま、訝しげに首を傾げる。

 エルヴィスが、一時間後に警備計画の告知をすると言っていたのを思い出し、トラヴィスが頷いた。


 しかし、リィンは


「ただ、ね?三人でこれ以上の連続勤務は、流石に限界かなって。」

「・・・は?」


 本来なら、ありがたい言葉のはずが、それでもギリギリまで準備や計画の修整などに思考を寄せていたクロウにしてみれば、寝耳に水、だ。


 そんな顔を横目に、それでもリィンは、すっとぼけたような表情をしながら、



「セルサス様の許可もさっき下りたので、ファウストのオジサマに追加人員を送って貰うように頼んであるの。だから、交代して頂戴。」 

「いやいやいやいや!それ先に言ってくれよ、ホント!!」

「ボスボス!素が出てる!」

「・・・・・。」


 思わずシオンの肩にもたれかかってがっくりと肩を落とすクロウに、アゼレヴィルやセルサス王が思わず吹き出した。


「やはり、『白銀』をうまく使いこなすのはリィンしかいないか。」

「いいえ、ワタクシより、上手に使いこなす方を知ってるから。」

 

 そのまましゃがみこんでぐったりとするクロウに、困った様な顔で見下ろしながら。だけど、シオンがその耳元に何やら言葉を落とせば、それで一つ、クロウの視線が上向きに。そこに小さく笑ったシオンが、もう一つ、二つ。

 それだけで、二人の間が笑顔で満ちる。

 その様を嬉しそうに目を細めて眺めて、リィンがぱんっ、と手を叩く。


「ま、そういうわけだから!追加人員が来次第、三人は一旦交代ね!はい、お疲れ様!」

「・・・了解。」


 どうにも釈然としないものではあるが・・・



 それでも無理矢理自身を納得させ、クロウは敬礼にて、リィンに応じ



「よかった、な?」

「ん?」





「・・・お疲れさん。」

「───・・・。」


 隣で小さく労ってくれる、最愛の人の、


「そちらも、ね?」

「ホントだな!」



 笑顔に、嬉しそうに目を細めて、頷いた。




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