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Lapis-landiA ─黒曜秘石恋闘譚─  作者: 八広まこと
Season2

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薔薇輝石(ロードナイト)4





「あぁ、楽にして頂いて構わないわ?」

 リィンの執務室に、敬礼して入ったクロウに、第一声、そう呟いてリィンはニンマリと、笑う。

 それでも、案内してきた文官が遠ざかるのを待ってきっかり十秒。


「・・・どういうつもりだ。」

「ふふふ。本当に、あの子のコトとなると目の色変えちゃって。」

「るせぇよ。わかってんならどうしてあんなこと言った。」

   ── 今すぐ取り消せ。


 緋色の目が脅すように、この国の国家元首に対して、自身の上官に対して、まるで敵のような視線を送る。

 国の単騎戦力最強の殺気に対して、それでも年端もいかぬ少女のあどけない表情をさらして。リィンは楽しそうに微笑んだ。

「ふふふ、そう言うと思ったわ。だけど、ね?断言する。」


「今回『も』、必ず巻き込まれるわよ?当然よね?」

「・・・・・。」 

「当事者、だもの。貴方の過保護でどうにかできる問題じゃあ、ないの。」

「・・・・・。」

「貴方がどれだけ遠ざけて目を耳を塞いだとしても。それは、絶対。だったら、堂々とさらして、守る理由を前面に押し出した方がいいわ。」

 深く椅子に腰掛け、顎を反らしながら。

 至高の上から目線で、リィンはクロウに問いかける。さぁ、どうする?と。

(どうするもこうするもねぇだろ・・・。)

 そこまで考えているからこその、シオンへの提示であったことは承知している。

 そして、否定したい、連れて行きたくない気持ちが先行した結果の、クロウの行動も否定せず。そんなリィンの配慮には気付いて、クロウぐっと奥歯をかみしめた。

 そんなクロウを見つめて、愉しげにリィンは目を細める。当人が目の前にいなければ舌なめずりをしたい気分。何度も言うが、こういうシチュは大好物だ。ただ、なるべく穏便平和である方が、楽しむにしても素直に楽しめる。

 その為の布石が、ある意味この、大隊長でもあった。

「ただ、どうしたってあの子は素人。そこは貴方がどうフォローし、カバーし、守るか、よ?悪女に仕立て上げつつ、ね?」

「・・・・・。」

「期待してますよ?第四大隊長さん?」

 それは真底本音。先にお膳立てはした。なんなら

「必要なら、緊急避妊薬パボの使用、ワタクシの権限で使用して頂いてもいいわ。」

「────・・・っ」

 文字通り、カッとなったクロウが、咄嗟口を開きかける、が。

「お兄ちゃんの裏側が見えない以上。そして、それほどの人数を送り出せない以上。ある意味、貴方にかかってるは、本当よ?そういう意味では、手段は選んでられないんじゃない?」

「・・・・・。」

「まあ、必要ならもう一人二人、表の『囲い』を増やすのはありだけど・・・。その方が、悪女らしいかしら?」

 どうする?と、煽るようにリィンが問えば、

「いらねぇよ。」

 承知の上で、クロウが唸る。

「アイツにはオレだけでいい。」

「そう言うと思った。」


「ちゃーんと忠犬宜しく貼り付いているのよ?」

「・・・・・。」


 テヘペロの顔で。

 親指立ててに軽く言ってのける、自身の上司に、軽く殺意が湧いたのは、言うまでもなかった。







 

 そうして、一月ほど経過して・・・。


 準備の期間はあっという間に過ぎ、シオンは遠く、『ノルブ=オルガヌス』の地にいた。


 セレスティニアを歓迎する宴が、セルゲイ主催で開かれる。

 かのオブシディアンの姫を一目見ようと、国中の貴族があの手この手でその招待状を求め、しては、一介の貴族の祝宴に王族までもが参列する事となった。

 元々のセルゲイの屋敷では人が入りきらず、急遽王室が王宮のホールを貸し出すという異常事態に・・・


「聞いてねぇぞ、コラ・・・。」

 シオンは一人困惑し、頭を抱えている。

「兄さまに会うだけの話じゃなかったのかよ、オイ。兄弟の再会にしちゃぁ人目が多すぎだろうが。」

 時間までの待機、どころか、訪国中の滞在場所として、シオン個人にあてがわれた部屋は、なんと王宮の客室丸々だった。既に権力もクソもない、元令嬢の待遇としては破格だ。

 確実に、ナニかある、と。

 ガチガチに緊張したシオンの背後で、クロウは無駄に冷静に周囲に気配を巡らした。

 今のところは、問題なし。

 誰かが近づいてくる気配もない。故に、シオンの仕草にも口出さない、好きにさせている。きっと、これ以降は気の休まるタイミングもそんなにないだろうから。

 天井へ視線をむければ、異常無しを告げる合図。

 第二大隊長のキリングスが選び抜い二人の随行者の内、一人からの合図だ。常にシオンとクロウに張り付いて、彼等を裏側からバックアップする役目を担っている。

 一度打ち合わせをしたが、果たしてどうなるのかはまだ読めない。が、それでも、それなりの、相手である事は理解しているから、


(まぁ、うまく使うまで、か・・・。)


 そう決めて、クロウは改めてシオンを見る、

「ま、いい加減覚悟決めちゃいなよ。」

「・・・・・。」

「てか、さ?」


  ───今の格好、凄ぇイイ・・・。


 吐息交じり、耳元で落とされる言葉に、シオンが僅かに目を見開いては、そのまま、目尻を染め上げて目を伏せる。

 リィンがワザと用意したドレスは、明らかにナニかを意図した物だ。

 無論、事前にクロウへも打診されていたが、まさか、ここまでとは思っていなかった。事前のお膳立てとしては、中々クロウ好みに煽ってくる。正直、仕事でなかったら・・・


(確実に、押し倒してたなぁ、コレ・・・。)


 しかも、いかに剥かないようにナカまで暴いて、そのまま───・・・。


「・・・・・。」

 ざわつきそうになる内側をぐっと抑えて。クロウは、ああでも、と・・・。


「・・・一つ、化粧施しとくわ。」

「え・・・?」

 

 そのまま背後から、首筋に


「う、ぁ・・・っ」

 

 唇を、寄せて、強く、吸い上げる。

 咄嗟に甘い声が漏れて、クロウの腕がその腰に回された。ぐっと引き寄せる様に抱きしめられて


「ん・・・。」

 ふるりと小さく震えるシオンの、その白い首筋に咲いた赤い赤い花を見つめて・・・


(あー・・・。)


「・・・やば。これ、止まらなくなりそう。」

「お、おい!おま・・・っ!」

「過去一難易度高いかも、コレ・・・。」

 言葉の割には酷く楽しそうで。   

 ぺろりと一つ唇を舐めるクロウに、シオンが思わず待ったをかける。

「ホ、ホントに・・・。」

「ん?大丈夫大丈夫。仕事だからね?ちゃんとやるよー。」

 腰に手を回したまま、首筋に、再度顔を埋めて、いつもより、少し人工的な香りを吸い込む。その中に交じる、ほのかに慣れ親しんだ匂いに、安堵して、


「ま、精々お兄ちゃんに文句言ってきな。」

「お前までそういう事言うなよ・・・。」

「いいの、そのための悪女でしょ?」

「・・・まぁ、そうだけど。」

 まだ、舞台が上演されていない、素のシオンの顔に、クロウが眩しげに目を細める。今はよそ行きの顔と化粧。艶やかに、鮮やかな彼女はきっと、誰よりも美しく妖艶だろう。

 だけども、同じ化粧同じ衣装で。普段の表情を浮かべた、

(今、この瞬間のコイツが一番綺麗だと知っているのが、オレだけって言うのが、最高だわ。)


 意味の無い優越感だと知れど、それが自分にとってたまらないヨリドコロになるのだから。


「・・・精々、『セレスティニア様』に、鼻の下伸ばしてる輩を見極めていきますか。」

「なんだそれは・・・。」

 呆れた様なシオンの頬に、キスを落とした。

 

 

 






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