表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lapis-landiA  作者: 八広まこと
Season2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/74

珪孔雀石(クリソコラ)3










「な、なんでこんなとこにあの人がいるんだよ!」

「知らないよ!オレだって知りたい!」

「あ、あれが、噂の第四大隊長さん!?」

 思わず顔を隠すように、三人が顔を突き合わせて、ヒソヒソ声。動揺した様子を隠せないように第四大隊長を盗み見る。

 三人の視線の先、どうやら顔見知りなのか、大隊長とイケメン店員の、気心しれた会話が、聞こえた。


「お前かよって・・・酷くない?客なのに。」

「客だな。でも、お前かよって。」

「・・・素直なのは、わかった。」

 入るや否やの不躾な発言を、咎めるとも不貞腐れるたも取れる、言動。それに対して軽口で返す店員に、ディックを含めた三人の方がハラハラして見守った。

 だけど、溜息一つ、まるで慣れているかのように、自身等の上司は、カウンターの端に腰を下ろして、慣れているかのように注文を伝える。それに頷きながら、ふと、店員が何か小声で伝えると、


「・・・・・。」


 見たことがない様に、目を細め表情を和らげて。頷きながら何か返事をする。

 了解した様に、離れていく店員の、その手を一度掴んで、


 不意に、引き寄せた。


 顔を寄せて、耳元で何かを告げる、様にも見えた、けど。

 振り払われるよりも先に手を離して、見せて


「じゃ、それで、よろしく。」

「───・・・っ!」

 

 と、少し意味深な表情でニヤリと笑って。すれば、その目尻を少し赤らめて、目に毒だと思うような表情のまま、はぁっと一つ溜息を吐く。


「な、ななな、な、なにを言われた、の、かしら!!?」

「「・・・・・。」」


 明らかに動揺したような、むしろ興奮したような顔でサラが鼻息荒く二人を眺める。

 それに対して、男二人は見なかったフリをするしかできない。夢中で唐揚げにかぶりついた。

 じゅわっと、口のなかで広がる鶏の油に、香ばしくかおるごま油が混じり、塩気のある旨味が舌に広がる。

 一瞬、何もかも忘れて、ほっこりと表情を綻ばせれば、店員に、視線を送るのに、夢中になっていたサラが二人の美味しそうな顔に惹かれて、再び唐揚げにかぶりつく。

「これ、酒に会うな・・・。」

「あぁ。」

「本当、美味しい・・・!」

 そのまま、くっと酒を煽るサラが思わず破顔した。

 と、

「そりゃよかった。」

「───・・・っ!」

 背後から告げられた声に、バッとサラが振り返る。すれば、三人の食べっぷりを眺めていたのか、嬉しそうな目を細めた店員が立っていた。

「まだ食えるか?」

「「「・・・・・っ!」」」


 こくこくと頷いた、三人に、笑みを深めて、コトリと大皿に乗せた焼きそばを置く。


「コレ、サービスな?」

「え・・・!?」

「い、いんですか!?」

 ディックとイヴァンが口々に告げれば、東方種の店員は頷いて、

「あんた等の食べっぷり、親爺も喜んでるよ。」

「あ、ありがとうございます!」

 すれば、ひらりと手を振って、再び彼が厨房へと入っていく。


 焼きそばを食べながら、ふと、ディックが顔を上げた。

 視線の先には、自分の上司が日本酒の徳利を傾けている。彼が向けている視線が見たこともないくらい、柔く、優しく、甘い。

 その視線の先には・・・


 とん、と。


 カウンターの前にあの店員が立って、何かあきれたような、顔をしながら、小鉢を二つ程前に置く。

 すればますます目を細めて、盃を軽く回しながら、大隊長は彼に何かを告げれば、眉間に皺を寄せた店員が、顔を寄せる。それを、至極嬉しそうに、見上げて、大隊長が言葉を紡ぐ。


 と、


 二人が、破顔して、笑い合う。


 その笑顔が、あまりに、素直で、無邪気で、幼くて。


 あぁ、お互いをこんな顔にしあえる様な間柄なのか、と。


 ディックは、思わず目を奪われていると、二人の視線が、こちらに、向けられる。

 緋と黒の目がディックを射抜いて、



「・・・・・。」


 二人が、唇に人差し指を当てる。



 しーっと、




 何かを示唆する様が、あまりにも、楽しげで。



 ディックが思わず視線を反らす。 

 二人の関係性を、これ以上考えてはイケナイものに見えてしまう。いや、これはほとんど確定だろう。あの二人は、そういう関係だ、と。

 唐揚げを貪りながら、あの、恐ろしくも怖くも真っ直ぐな大隊長が。正直めちゃくちゃ怖くて、ビビっていた大隊長が。



 あの、格好良すぎる店員を、どんな風に・・・。



(・・・て、)



「うぁぁあああ───・・・っ!!」


「な、なに!?」

「なんだよ急に!!」


 不意に奇声を上げたディックに。

 驚いて、声をあげた二人の、視線に、彼自身が耐えられなくなる。

 テーブルに、突っ伏してぷすぷすと燻り続けるディックに。


 気付かれないように、彼の上司がカウンター端で、突っ伏して肩を震わせた。










 帰り際に・・・


 支払いは既に済んでいる、と告げられて、呆気に取られた二人と、視線が落ち着かないディックに、


 シオンが二人の隙を見て、そっと耳打ちする。


「アイツの下で、働いてくれて、ありがとな?」

「───・・・っ!?」

 交わる視線が、不意に優しく柔らかく細められる。


 不意に、腑に落ちた。

 今までどうして男だと思っていたのかと、思うほど。

 化粧っ気がないのに彩られた唇も、長いまつ毛に縁取られた瞳も、酒のせいか少し彩られた目元も。

 


(いや、完全に、女の人じゃん、この人・・・)



「また来てくれると嬉しい。」

「あ・・・、はい、もちろん・・・」

「今度は、差し障りがない程度に、仕事の・・・」

「・・・・・。」


「アイツの、話とか、聞かせてくれ、な?」

「・・・・・は、い。」


 小さく、照れたような笑みは、多分明らかに自分よりも年上の相手の、愛らしさというか、可愛らしさに溢れていて。



 何故今まで思い込んでいたのかと、不思議に思うほどに、綺麗な顔した相手から。

 これからも、頼む、と真っ直ぐな目で見られて。

 高鳴る胸は気付かないフリ。


「やだ、飲みすぎたの?」

「・・・多分」

「明日仕事だろ?早く寝ろよ?」

「・・・うん。」











 ディックは、明日から、どんな顔で自身の上司の前に出ればいいか、頭を悩ませた・・・。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ