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Lapis-landiA  作者: 八広まこと
Season1

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26/74

EP6.:紅石英(ローズクォーツ)⑤

  

 時間は少し戻って・・・。



 公開剣技会で、柔剣道場での演目が全て終わってから、少し経過した頃。

 リュウシン=シキジマは、すぐそばの模擬店の前に立っていた。串焼き、綿飴、ドリンクと賑わう中で、

「さて、どれにしようか・・・」

 と、周囲の人間同様、リュウシンは悩む楽しさを味わっていた。少し小腹が空いた、と。串焼きの屋台に、並び、鶏肉と温かいお茶を購入して、側の植え込みに腰掛ける。杖を片手に、『よっこいせ』なんて呟く姿は、どこにでもいる御老体の姿だ。

 鶏肉の串焼きにかぶりつく。じゅわりと染みた鶏の油に、舌鼓を打ちながら、目を細め、何度も頷く。

「おいしそうですね。」

「旨いよ。香ばしくて最高だ。」

 背後からかけられた声にも、臆する事なく。リュウシンはニコニコと応える。背後の人物も笑顔を浮かべたまま

「私は綿飴にしました。」

 その手には、水色の大きな綿飴が握られている。

「ほぉ・・・。」

 リュウシンが興味深そうに振り返った。背後には黒の燕尾服を着こなした、優しげな長髪の男が立っていた。 

「これは、甘いのかな?」

「そうですね、結構甘いです。」

「少し、もらってもいいかな?」

「もちろんです。」

 どうぞ、とリュウシンに、綿飴を差し出す。リュウシンが少しつまむと、綿飴は、ほどけるようにして、塊から離れる。 

 ベタつく指先ごと口に入れて、リュウシンは確かめるように口を動かした。 

「うむ、うーむ・・・」

「如何です?」 

「うむ、・・・甘いな。」

「砂糖菓子ですからね。」

 リュウシンは直ぐ様お茶を口に入れて、潤す。

「腹にはたまらなさそうだ。」

「女子供が喜ぶシロモノですよ。」

 

   ─── ああ、そういえば・・・


 あの方も、実は甘い砂糖菓子が好きだった、と燕尾服の男が物思いにふける。

 そんな男を見て、リュウシンが

「例のお嬢様、かぃ?」

「ええ、私の大切な思い出ですよ。」

「そうかそうか、思い出は大事だ。」

 リュウシンが目を細める。

「私も、妻との思い出が何より大事だ。」

「・・・そうですか。」

 リュウシンの目が仄暗く光る。老人の詳細を知る男は、そのまま小さく微笑んだ。

「そう言えば、お孫様には会えました?」

その言葉に、リュウシンの目が鋭くなる。変わらない笑顔故に、酷く恐ろしげな気配を纏う。

「私に孫はいないが・・・。目的のモノは見つけられたよ。」

 それでも、臆する事なく、男は恭しく一礼した。

「そうでしたか。それは、失礼しました。」

「マザリモノで、マガイモノだよ。」

「そうでしたね。」

「なんの価値もない。」

「ふふふ。」

「君の方は見つかったのかぃ?」

 リュウシンの、笑顔は再びもとに戻る。今度は燕尾服の男の表情が変わる。縋るような、乞うような。

「残念ながら、まだ・・・。」

「そうか。」

 しかし、と、恍惚とした表情で、男は呟いた。

「直ぐ側まで来ているのは、わかるのです。私の、お嬢様は、直ぐ側・・・。」 

  

「セレン様・・・。すぐにお迎えに参ります。」

  

 自身に言い聞かせる様な男の、その眼は、確実に


( 狂っているなぁ・・・。 )


 リュウシンは小さく笑う。それは、自身も一緒であった。魔によって、狂わされた自身達。故に許せず見出せず、縋るものに執着し、失われた者に救いを求めて、今はただ、破壊を希う。



「まさしく、『人災』よ。我らは・・・。」


 自らを、例えて的を得た表現に、リュウシンは酷く愉快そうに、嗤った。




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