第4話 封印された魔法と新たな仲間
迷宮探索を終え、俺とリリスは町へ戻った。ギルドでの報告を済ませると、セリアから労いの言葉と共に報酬が渡される。
「お疲れ様でした。迷宮の調査、ご無事で何よりです」
「まあ、大変だったけど何とかなったよ」
俺がそう答えると、セリアは俺たちが持ち帰った古びた書物に目を留めた。
「それは……迷宮から持ち帰られたものですか?」
「ああ。この書物、リリスがすごく重要だって言ってたんだけど、これが何なのかはよくわからなくてな」
リリスがセリアに書物を手渡すと、彼女は驚いた表情でページをめくり始めた。
「これは……古代魔法の研究書ですね。内容はかなり高度ですが、魔法士にとっては貴重な資料です。ただ、これは封印が施されていますね」
「封印?」
俺が首をかしげると、リリスが書物を指さした。
「そう、何か特別な方法でないと開けない仕掛けがあるみたい。これを解くには専門的な知識が必要だわ」
「じゃあ、どうするんだ?」
「実はこの町には、封印魔法の研究をしている女性がいるのよ。その人なら解けるかもしれないわ」
リリスに連れられ、俺たちは町外れにある屋敷を訪れた。屋敷は優雅なデザインだが、どこか生活感が抜けていて、所有者の気まぐれな性格を感じさせる。扉をノックすると、やがて中から柔らかな声が聞こえた。
「はーい、開いてるわよ~。入ってらっしゃい」
中に入ると、そこにはスタイル抜群のお姉さんが悠然とソファに座っていた。長く艶やかな銀髪が肩から背中に流れ、琥珀色の瞳がこちらを見て微笑んでいる。彼女の服装はゆるめの魔導師ローブだが、胸元が大胆に開いており、無意識に目をそらしてしまうほどだ。
「こんにちは~、リリス。今日は何のご用件?」
「久しぶりね、カレン。この書物の封印を解いてほしいの」
リリスが書物を差し出すと、カレンと呼ばれた女性は興味深そうにそれを受け取った。その仕草はどこか気だるげだが、手先は繊細で知的な雰囲気を感じさせる。
「ふむふむ……なるほどね。この封印、確かに古代魔法のものね。ちょっと複雑だけど、私なら何とかなるわよ。ただ――」
カレンは書物を胸に抱え、ふわりと立ち上がる。
「その代わり、私も一緒に冒険させてくれないかしら?」
「冒険?」
俺が驚いて尋ねると、カレンは琥珀色の瞳を輝かせながら微笑む。
「だって、あなたたち面白そうなんだもの。それに、こういう重要な本は解読しながら使うほうが便利でしょ?」
リリスは少し困った顔をしたが、すぐに笑って頷いた。
「確かに、あなたがいてくれると心強いわね。どう、悠斗?」
「まあ……頼りになるのは確かだけど、本当に大丈夫なのか?」
俺の疑問に、カレンは手を腰に当てて笑う。
「何よ、その目は。こう見えても封印魔法の第一人者なのよ? それに――こう見えて結構強いんだから」
カレンの胸元が揺れた気がして、俺は慌てて視線を逸らした。
「じゃ、じゃあよろしく頼むよ!」
書物の封印を解く準備をカレンに任せた俺たちは、町での休息を取ることにした。しかし、夜になり宿で休んでいると、突然激しい鐘の音が鳴り響いた。
「何だ?」
窓から外を覗くと、町の北側が赤く染まっている。火事……ではない。何か別の異変だ。
「悠斗!」
宿の扉が開き、慌てた様子のリリスが駆け込んできた。
「北の方向に魔物が現れたみたい! 数が多いわ、すぐに行きましょう!」
「わかった!」
北門に着くと、無数の魔物が押し寄せていた。兵士たちが必死に応戦しているが、数が多すぎる。
「くそっ、どんどん来るじゃないか!」
俺は剣を構え、スキルを発動した。
「《無限斬撃》!」
剣の光が次々と魔物を斬り裂く。リリスも後方から魔法で援護しているが、数が一向に減らない。
「悠斗、これはただの魔物じゃないわ。何者かが操っている可能性が高い!」
その時、後方から聞き慣れた声がした。
「操られている魔物……面白いじゃない!」
振り返ると、カレンが魔法杖を手に現れた。
「《光輪の裁き》!」
彼女が放った光の魔法が広範囲に炸裂し、魔物の群れを一掃する。その様子に呆然としていると、カレンがこちらを振り向き、ウインクした。
「どう、私の力を信じてくれた?」
「……いや、信じるしかないだろ」
その時、魔物の群れの中に黒いローブをまとった男が現れた。不気味な杖を持ち、鋭い目でこちらを睨んでいる。
「貴様らでは、真の絶望を止めることはできない……」