第3話 迷宮と新たな試練
リリスと出会い、町に戻った翌日。俺たちはこの世界で初めての正式な依頼を受けることになった。
「迷宮の調査依頼?」
冒険者ギルドの受付で聞かされた内容に、思わず声を上げてしまった。ギルドのカウンターに立つ女性、セリアは微笑みながら頷く。
「はい。町の北にある迷宮で最近魔物が活発化しているという報告がありまして。その原因を突き止めていただければと思います」
「迷宮ねえ……いきなりハードル高くないか?」
俺が苦笑すると、隣でリリスが小さく笑った。
「迷宮探索なんて、冒険者の醍醐味じゃない。悠斗には期待してるわよ」
「期待されるのはいいけど、俺まだこの世界に慣れてないんだよな……」
そうは言ったものの、俺は「勇者」としての責務を果たさなければならない。魔王を倒す道のりの一環だと思えば、迷宮探索も重要な経験になるだろう。
町を出て、北にある迷宮へと向かう。道中、リリスが迷宮について説明してくれた。
「この迷宮は昔、強力な魔法使いが作ったと言われているわ。彼が残した宝や魔物が今も眠っているらしいけど、詳しいことはわかってないの。最近、魔物が活発化したのはその魔法使いに関連する何かが目覚めたのかもしれないわね」
「なるほど。つまり、何が起きてもおかしくないってことか」
「そういうこと。でも大丈夫、私もいるし、あなたならきっと大丈夫よ」
リリスの言葉に少し励まされながら、俺たちは迷宮の入り口に到着した。
迷宮の入り口は古びた石造りのアーチで、周囲には不気味な静けさが漂っている。中に一歩足を踏み入れると、空気が一気に冷たくなり、かすかに湿った匂いが鼻を刺した。
「ここが迷宮か……」
「気を引き締めていきましょう。油断すると足元をすくわれるわよ」
リリスがそう言った直後、足元にある仕掛けが作動し、矢が飛んできた。
「うわっ!」
とっさに身を伏せると、矢は頭上をかすめて壁に突き刺さる。
「言ったそばから危ないじゃないか!」
「ごめんなさい、注意が足りなかったわね。でも、これくらい序の口よ」
リリスは魔法で周囲の罠を感知しながら進む。俺も剣を握りしめ、いつでも戦えるよう警戒を怠らなかった。
迷宮を進むうちに、さまざまな魔物が襲いかかってきた。小型のスライムや飛行するコウモリ型の魔物は、リリスの魔法と俺の剣で次々と倒していった。
「《炎の矢》!」
リリスの魔法が巨大なスライムを貫き、俺はその隙に背後から小型魔物を一掃する。
「連携がうまくいってきたな」
「そうね。あなた、初めてなのに飲み込みが早いわ」
リリスに褒められると少し嬉しくなるが、迷宮の奥から低い唸り声が聞こえた瞬間、緊張感が再び高まった。
「この先にいるのがボスかもしれないわね」
「わかった。気を引き締めていこう」
俺たちは慎重に進み、やがて広間に出た。そこには巨大な甲冑をまとった魔物が待ち構えていた。その目は赤く輝き、巨大な斧を持っている。
「《アーマードガーディアン》……かなり厄介そうね」
リリスが呟く。俺は剣を構え、すぐにスキルを発動した。
「《絶対防御》!」
アーマードガーディアンの斧が振り下ろされるが、俺の防御スキルが攻撃を弾く。その隙に剣で攻撃を仕掛けるが、硬い甲冑に阻まれた。
「くそっ、こいつの防御力、どうなってんだ!」
「悠斗、足元を狙ってみて!」
リリスのアドバイスに従い、素早く足元に回り込む。甲冑の隙間を狙って剣を突き刺すと、魔物は大きく体勢を崩した。
「今よ、リリス!」
「《雷撃の槍》!」
リリスの強力な魔法が炸裂し、アーマードガーディアンの体が痙攣する。その隙に俺はスキルを発動する。
「《無限斬撃》!」
剣から放たれる連続攻撃が魔物を完全に打ち倒した。
「ふう……なんとか倒せたな」
俺は大きく息をつき、汗を拭った。リリスも疲れた様子だが、笑顔を浮かべている。
「さすが勇者ね。これで迷宮の魔物も落ち着くはずよ」
倒した魔物の近くには宝箱が置かれていた。中を開けると、中には一冊の古びた書物と青白い光を放つ宝石が収められていた。
「これは……?」
「どうやら、この迷宮の主が残したもののようね。書物にはこの世界の古代魔法に関する記録があるわ。これは貴重な発見よ!」
「俺には難しくてわからないけど、リリスがそう言うなら役立つんだろうな」
「ええ、必ず。さあ、町に戻りましょう」
こうして俺たちは迷宮探索を終え、初めての正式な依頼を無事に達成した。新たな発見を手にした俺たちは、さらなる冒険への期待を胸に抱き、再び町へと戻るのだった。