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第1話 ありふれた日常からの異変



「遅刻だ、遅刻!」

走りながら自分に呟く。今日もまた、朝の目覚ましをスヌーズしてしまったせいで、いつもギリギリだ。片手にトーストを咥え、もう片方で学校の鞄を引きずる。


俺の名前は篠原悠斗しのはらゆうと。どこにでもいる高校二年生で、特に目立つ才能もなく、人生も平凡そのものだ。友達はいるにはいるが、大勢に慕われる人気者というわけでもない。将来の夢なんて、まだ漠然としていて、何か「普通の幸せ」を掴めたらいいなと思っているくらいだ。


けれど、そんな平穏な日常が、この日の終わりには完全に崩壊していた。


学校に向かう途中、交差点で信号を無視して突っ込んでくるトラックを目撃した。俺の目の前にいた小さな女の子が、そのトラックに気づかず歩いている。


「危ない!」


考えるよりも早く体が動いた。咄嗟に女の子を突き飛ばし、自分が代わりにトラックと衝突する形になった。


その瞬間、目の前が真っ白になり、全身が浮遊感に包まれる。


目を開けると、俺は見知らぬ草原に立っていた。どこまでも広がる青い空、耳に響く鳥のさえずり、そして目の前には巨大なクリスタルが浮かんでいる。


「ここは……どこだ?」


呟いた声はやけにクリアに響いた。自分の体を確認するが、怪我どころか擦り傷一つない。だが、それ以上に異様だったのは、自分の服装だった。


「何だ、この装備……?」


見覚えのない黒と銀の鎧を身に着け、腰には長剣が吊り下げられている。まるでRPGゲームの主人公そのものだ。


すると、目の前のクリスタルから声が響いた。


「勇者よ、目覚めよ。我が名は世界の導き手、エリシア。この地、アリュセアに訪れし汝を歓迎する」


「……勇者?」


状況が飲み込めず、思わず問い返すと、クリスタルの光が強まる。


「汝は他の世界より召喚されし選ばれた者。我が世界は魔王の脅威に晒されており、その力を持って救済せよ」


いわゆる「異世界転生もの」ってやつか? 冗談だろう、と思いつつも、心のどこかでワクワクしている自分がいた。


「待てよ。俺、死んだんだよな……?」


「汝の肉体は元の世界において滅びた。しかし魂は再生し、ここで新たな生を得たのだ」


クリスタルの説明を聞くうちに、なんとなく納得してしまった。考えてみれば、現実世界ではただの高校生だった俺が、ここでは鎧を着て剣を持つ「勇者」として存在している。それだけで人生が一気にドラマチックになった気がした。


「……わかった。やってやるよ。その魔王ってやつを倒せばいいんだろ?」


「感謝する、勇者よ。だが、その力を完全に覚醒させるには試練を乗り越えねばならない」


試練? と聞こうとした瞬間、足元に魔法陣が現れ、俺の体がその中に吸い込まれていった。


気が付けば、暗く湿った洞窟の中に立っていた。


「これが試練ってやつか……」


洞窟の奥から不気味な唸り声が聞こえる。剣を握りしめ、慎重に進んでいくと、巨大な魔物が現れた。六本の腕を持ち、全身が黒い鱗で覆われたドラゴンのような存在だ。


「いきなりこんな奴と戦えってかよ!」


俺は恐怖で足がすくみそうになるが、妙な感覚が湧き上がってきた。心の奥底から熱いエネルギーが沸騰するような感覚だ。


「……これが、俺の力?」


無意識に剣を構えると、それが眩い光を放ち始める。そして、頭の中に「スキル」のようなものが浮かんできた。


「《絶対防御》……《無限斬撃》……?」


その言葉が口から漏れると同時に、俺の体が自然と動き出した。剣が光の刃となって魔物に襲いかかる。一撃ごとに地響きが起こり、魔物は防御すらできずに次々と傷ついていく。


数分後、目の前にいたはずの魔物は消え去り、俺の足元には宝石のようなアイテムが残されていた。


「……強すぎないか、俺?」


思わず自分に突っ込む。どうやら、俺はこの世界で「最強」の存在になってしまったらしい。


洞窟を抜けると、再びクリスタルが現れた。


「試練を乗り越えた勇者よ、汝はその力でこの世界を救う使命を持つ」


「わかったけど……これ、本当に俺一人でやれるのか?」


「心配するな。汝には仲間が現れるだろう。これからの冒険に期待している」


そう言われると、なんだかやる気が湧いてきた。この世界でどんな冒険が待ち受けているのか、そして自分がどこまでやれるのか――未知の未来に胸が躍る。


こうして、俺の「異世界転生最強伝」が幕を開けたのだった。


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