三題噺参
三題噺参 お題「罪 セロハンテープ 〆切」
ちぎる。貼り付ける。ちぎる。貼り付ける。ちぎる。ちぎる。ちぎる。貼り付ける。
作業が終ると私はべたべたになった手を洗う。意外と糊を取るのが大変で、冷たい水が手首から温度を奪い去っていく。ばちゃばちゃばちゃ。ごしごし。
それが終ると、どうしてこんなことをしているんだろう、という気分になる。ずっと部屋にひとりきりで、誰とも会わないまま。私の部屋には透明な、それでも白色とも黄色ともつかないオブジェ。部屋に収まるかどうかという大きさのそれは、大きな城の姿をしている。この数カ月、私が作り続けてきたものだ。原材料は、セロテープ。ONLY。もともとは丸めたセロテープが塔みたいな形になっていただけだったのだけど、どうしても捨てられずにとっておいたのだった。いつの間にかそれはいろんなものを吸収してこんなに大きくなってしまった。意味もなく厩まで再現してある。いやまあ、やったのは私なんだけど。
こうして考え事をしていると、いつの間にか私の手指はセロハンテープの糊にまみれ、そして城がまた一段と成長している。実際今もセロハンテープをちぎっては貼り、ちぎっては貼りを繰り返している。多分、精神科にでも行けば自動障害とでも言われて大層な治療を受けることになるのだろうけど、あんまりお金もないしそれは避けたいところだ。こんな罪滅ぼしみたいな行為でもいつかは「働かなきゃいけませんよ」と〆切がやってきてがんがんとがなるのだ。それまでに私はこれを破壊し、家から出て働き口を見つけなければならない。
さっき洗ったばかりの手をごしごしと洗っていると、普段は一日に一回たりとも鳴らないことがデフォルトであるはずの携帯が着信をお知らせした。よりにもよって目の前で。これでは出なければならない。
久方ぶりに話した親は下らないことを言い続けていたが、それも早々に断ち切って座り込む。電話は相手が見えないから疲れる。社会に復帰したらこんなこともずうっと続けなければならないのだろうか。だとしたらそれは滑稽だ。そして酷刑だった。
私は部屋に戻ると家にあるあまりのセロテープを全て持ってくると、一心不乱に貼り始めた。きっとこれで世界が救われると信じて。
10時間以上かかってそれは完成した。見た瞬間、何だこれはと思った。小さい子供が作る砂のお城のほうが上品に出来ている。
私は私の部屋に居座っていた巨大な城を撮影してネットにアップすると、完膚なきまでに踏み潰した。巨大な城は跡形も残らなかった。
そうして私は社会に復帰した。




