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ソードマスター  作者: 雨宮結城
第一章 学園編
3/5

Episode 3

 「団体戦? それってなんですか?」


 「アンタ、そんな事も知らないでこの学園に来たの?」


 「ま……まぁ」


 「はぁ……あきれた奴ね。 団体戦ってのは、三人のチームを作って優勝を目指す競技。 名の通り皆で勝つ団体戦よ」


 「そして個人戦と違い、チームで勝ち残った人数で勝敗が決まります」


 「じゃあ極端(きょくたん)な話、人数が多い、それこそ全員が勝ち残ったら、それで勝ちって事ですか」


 「はい。 峰村君のおっしゃる通りです」


 「体育館の場所知らなかったり、アンタは何を思ってこの【ミスト】に入学したのよ」


 「それは……」


 「まぁサラちゃん。 彼のプライバシーな事ですし」


 「それに、私入らないわよ。 アンタらのチームに。というか、カレン・トーマスランド、貴女(あなた)と同じチームなんて、ごめんよ」


 「サラちゃん……」


 「話ってそれだけ? なら失礼するわね」


 サラは、カレンの言葉に耳を(かたむ)けず、立ち去って行ってしまった。


 「……えっと、カレン先輩とツインベールさんって、仲悪いんですか?」


 「まぁ、彼女はきっと、私が嫌いでしょうね」


 「どうしてです? 同じ剣士名家の人間同士なのに」


 「同じだから、かもしれませんね。 峰村君、少し、聞いてもらっても、構いませんか?」


 「はい」


 カレンは、剣士の名家であるトーマスランド家とツインベール家の話を始める。


 「峰村君は、八十年前の話はご存知ですか?」


 「隕石が地球にってやつですよね」


 「はい。 今私達の血にも流れている力の源。 全ての始まり、戦争、その終焉(しゅうえん)に学園の立ち上げ。 その当時、隕石(いんせき)が地球に飛来( ひらい)して、当然世界には混乱(こんらん)がもたらされました。 そして、隕石に眠っていたであろうエネルギーは、空気中にばら()かれ、その力に適合(てきごう)した人間は、今の我々と同様、もしくはそれ以上に、驚愕の身体能力を手にし、一部の人間の間では、魔法まで使える者すらも現れた」


 今でこそ、平和な世の中が出来上がってはいるが、その当時の世界には、恐怖( きょうふ)混沌(こんとん)(みにく)さ、そして(あらそ)い。


 まさに地獄のような世界。一部の人間のみが超人へと進化し、優越感(ゆうえつかん)(ひた)らずにはいられなかった。


 必要以上に力を振るい、世界は少しずつ、確実に、終わりへと向かっていった。


 「そんな世界を救ったのが、ツインベール家、そしてトーマスランド家の人間だったそうです。 私自身も、祖父から聞いた話なので、どこまでが正確かは(さだ)かではありません。 しかし、そうでなければ、ここまで大きく名家として名が通っていないはずです」


 「確かに、ニュースとかをほとんど見ない俺も、その家の話はよく聞きます」


 「祖父の時代は、(まさ)に世の終わりだったそうです」


 「凄い人、ですよね。 カレン先輩のお爺様(じいさま)


 「今も(なお)生きている方や、当時戦った人は、とても強いです」


 「刀にエネルギーを()める方法も、ですからね」


 「えぇ、(じゅう)にも、一応の適合はしたそうですが、威力(いりょく)が核爆弾並で、危険すぎるあまり、銃に関するものへの適合は、実験含め法によって止められています。 刀が唯一、威力を制御(セーブ)でき、あの時代で戦い抜く為に、必要不可欠(ひつようふかけつ)だった」


 「今学園があるのは、また来るかもしれない脅威(きょうい)から、世界を守る為、ですもんね。 その為に剣士を育成( いくせい)している」


 「まぁ、ニュースではそうですね」


 「ニュースでは?」


 「いえ、こちらの話です。 話が脱線(だっせん)してしまいましたね。 (よう)するに、剣士の名家であるツインベール家とトーマスランド家はその功績(こうせき)(ゆえ)に、その子供や孫にも影響( えいきょう)があるのです」


 「どちらも天才剣士の名が目立ちますからね」


 「えぇ、そして私は、エネルギーである魔力こそあれど、魔法の適正(てきせい)がなく、剣を振るうしかできない、家では落ちこぼれの烙印(らくいん)です」


 「先輩が!?」


 「えぇ、そしてサラちゃんは天才剣士」


 「でも、それがどうして仲が悪いに繋がるんですか?」


 「引き分けですからね。 私とサラちゃん」


 「引き分け?」


 「私とサラちゃんに限らず、ツインベール家とトーマスランド家は、名家故に子供でも実力こそあれば、剣士大会へと参加を義務付けられました。 他で言うなれば、合同練習もですね。 その時、私と歳が一番近いのがサラちゃんなのですが、よく……というより、会っては毎度決闘(けっとう)していましたね」


 「もしかして」


 「えぇ、峰村君の考えてる通りだと思いますよ。 落ちこぼれと天才が引き分け、これが何を意味するか」


 「……」


 「サラちゃんにとっては、きっと(にく)まれてもいますよ」


 「……それは、多分無いと思いますよ」


 「ん? どうして、そう思うのですか?」


 「お二人の事は、良く知ってる訳では無いですけど、ツインベールさんは、そういう人ではないと、直感ですが思うからです。 それに、カレン先輩の手、その手は、血のにじむような、絶え間ない努力の証です」


 「……引かないのですか? 女の子の手じゃないって」


 「引きません。 むしろカッコイイです。 それに先輩の女子としての魅力は、それ含めたとて、素敵だと僕は思います」


 カレン・トーマスランドは、落ちこぼれの烙印だけでなく、実力が付くに至るまで、剣士としても女子としても見られず、家では肩身の狭い思いをしていた。


 後輩にこうして言われたのは、生まれて初めてだった。


 「ありがとうございます。 峰村君」


 「いえ、僕はなにも」


 「男の人にそう言われたのは、生まれて初めてで、嬉しくて」


 カレンは、気づけば涙を流していた。


 「え!? いや、その」


 「ごめんなさい、嬉し涙です。 ホントに、ありがとう」


 「いえ、あ! 俺、やっぱりツインベールさん誘って来ますよ!」


 「え……ですが」


 「思うんです、カレン先輩とツインベールさんは、同じチームになるべきです! では!」


 峰村涼太は、急いでサラ・ツインベールを追いかけに向かった。


 「……やっぱり、峰村君は素敵な人ですね。 流石は、貴方の息子です。 ( りん)さん」


 峰村凛(みねむらりん)、峰村涼太の母親にして、カレン・トーマスランドの 師匠(ししょう)


 そして、元人類最強剣士(ソードマスター)

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