あのミミック、スケベすぎる!!
視界が霞む……息が苦しい……、今眼の前には宝箱があり過去にこんな話を聴いたことがある。
ダンジョン内で宝箱の前で命を落とした者は魂が乗り移り“ミミック”になると……流石に考え過ぎだろうと想いながらも息を引き取ると眼の前には自分の倒れた姿があった。
『な、なんだ……これ……? 何がどうなっているんだ!?』
状況を整理する、ミミックになる噂は本当で眼の前には亡くなった自分の身体、魂が宝箱へと乗り移りミミックになってしまったのである。
『何だ、誰か来る!?』
遠くの方から松明を持った二人の女冒険者が歩いて来ると俺の遺体に手を置き息があるか確認する。
「ダメね、亡くなって直ぐみたい。」
剣を背中に携えた紅い髪長で蒼い眼をした女性が黄色い髪が肩までかかる清楚な身振りの緑色の眼をした胸部の大きな女性へと語りかける。
「残念ですね、この方のご冥福をお祈りします。」
「セレイン、宝箱の前で息絶えたってことはだ。」
「ええ、感じます……この宝箱ミミックと化しています。」
『待て待て待て!! 俺は別に危害を加える気は無いって!! 話聴いてる!?』
「エレナさん、人思いにしてあげてください。」
「あいよ!!」
エレナと呼ばれた剣士の女性は剣を高く振り上げ、俺に思い切り振り下ろすが何とか身体を動かし横に避ける。
『っぶねええええ!! 何をするんだ!!』
「清浄なる光よ、数多の光弾となりて闇を払わん! “アトミックレイ”!!」
『うおおおっ!? やめろって言ってんのに、こうなりゃヤケだ!! 先に攻撃してきたのはそっちだからな? 唾でもくらえ、かーっぺっ!!』
攻撃をやめる気配の無い剣士と僧侶の女性に対して俺は唾を吐きかけるとエレナがセレインを庇いかかった唾が剣と鎧を溶かす。
「エレナ!? 大丈夫ですか!!」
「このくらい問題無い、……が厄介だな。」
「ええ、今までのミミックと何かが違いますね。」
『お、これは中々いい事思い付いたぞ! 攻撃してくるなら手段を奪えばいい!! 溶解液乱射ああああ!!』
「「きゃあああああああああ!!」」
溶解液を二人の冒険者へと余すことなく吐きかけると武器も防具も全て失い全裸となる。
「え、エレナさん! どうしましょう!!」
「どうするっつっても!!」
『悪い子にはお仕置きしないとなあ?』
俺は口から長い舌を伸ばし二人を同時に拘束すると箱の中へと閉じ込める。
「た、食べられちゃいましたよ!!」
「ひうっ! セレイン何処触って……」
「私じゃありませんよ! ひゃあん!?」
エレナとセレインの肌を舐めると可愛らしい声をあげる。
『これが……女の子の味!!』
「この! ヌルヌルして気持ち悪いな!!」
「やだあ!!」
〘SPを200獲得しました、使用しますか?〙
『何だSPって? もしかしてSPってことか?』
眼の前にはステータス表記の様な物が表れ、そこには【一心同体】と表記された項目に使用ポイント20と書かれている。
『よく分からないが獲得するか、ポチっと。』
気持ちで一心同体の項目を指で押すイメージをすると獲得し、取り敢えず何が出来るか頭に流れ込んでくる。
『これは良いな、取り込んだ人物の身体を自由に使えるのか! 早速試してみるか!!』
「な、なに!?」
「エレナさん!! 脚!?」
「え、やだ! 脚が消えてく!!」
「消化が始まったの!?」
エレナに一心同体の能力を使うと宝箱の底へとエレナの脚がニョキっと生え自在に動かせた。
『うおっ! 凄えな、自在に動かせる!!』
「な、何よこれ!?」
「大丈夫ですか?」
「ええ、消化された訳じゃないみたいだけど何か脚が地面に着いてる感じ?」
「よ、良かった……早くミミックのお腹から出ませんと!」
「そうね、けどどうやって脱出しようか。」
俺はエレナの脚を使い歩いてダンジョンの出口へ出ると空は明るく何やら人の気配を感じた。
『ん、何か良い匂いがするな? 肉でも焼いてるような、行ってみるか。』
気配のする方へと赴くと野営を終えた冒険者の男が二人が話をしていた。
「エレナさん達、遅いっすね。」
「ほっとけよ、ダンジョン内で亡くなった誰かを弔うとか言って準備不足で入った女のことなんてよ!」
茶髪の小柄な少年と白髪の短髪の大きな盾を携えた青年が口論していた。
「僕見て来ます、やっぱり心配ですし。」
「アラン、やめとけって邪魔になるだけだろ。」
「ですけどローレンスさん。」
「はぁ、女なんてパーティーに入れるんじゃなかったぜ。 俺とアラン二人で成り立ってたってのによ、あの二人が加入してから護ってやってばっかでマトモに戦えやしねえ。」
「あはは、でも加入申請しに来た時のローレンスさん鼻の下伸ばしてたじゃないっすか。」
「ばっ! お前そりゃ、あんな美人二人に詰め寄られたら鼻の一つや二つ伸びるだろ!!」
「カッコいいとこ見せようと必死だったっすからね。」
「ったく、お前は何時もそうやっておちょくるな。」
「何だかんだ言って心配なんすよね、探しに行くっすよ。 ローレンスさん?」
「アラン、近くに二人の気配を感じる……」
「え……、本当っすね……」
「そこに居る奴、姿を現せ!!」
話を盗み聞きしているとアランは両手にダガーを逆手持ちにし、ローレンスは巨大な盾と短剣を持ち戦闘態勢になり俺は生脚を生やしたまま茂みから姿を現す。
「ミミック……?」
「貴様、エレナとセレインをどうした?」
「ローレンスさん、なんか今までの魔物と何かが違うっす!」
「ああ、分かっている。」
『やっぱり仲間居るよね、絶対二人だけじゃないとは思ってたけど……』
「ねえ、今の声アランとローレンスですよね?」
「だな、なんとかなるかも知れない! アラン!! ローレンス!!」
「この声、エレナ!! セレイン!! やはりミミックの中に居るのか!?」
「ええ! まだ消化されてないわ、助けて!!」
『え〜、なんか俺悪者みたいになってない?』
「アラン、俺がミミックの口を盾で開けさせたままにするからその間にエレナとセレインの救出を頼む。」
「了解っす!」
『……てことは二人を返したら確実にやられる!? ならば!!』
「ふぇ、なに?」
「「!?」」
俺はこの場を切り抜ける為、セレインの上半身も一心同体の能力を使い箱の口を大きく開き外に出すとセレインの豊満な胸部がバルンバルン揺れ動きアランとローレンスは咄嗟の判断が出来ず鼻血を噴出してしまう。
「きゃあああああああああ!!」
「ぶふぉっ!?」
「ぶふっ!?」
『よし、今だ!!』
「いやあああああああああ!!」
セレインは顕になった胸を見られた後に真っ赤になり隠し、俺は街の方へと走り去る。
「ローレンスさん、すみません鼻血が……」
「いや、構うな……俺もまさかあんな不意打ちをしてくるとは思わなかった……」
「「あのミミック、スケベすぎる!!」」
面白くなる要素が薄くボツにしていた物語ですが、気が向いたらノクターンで書くかどうかを考えている作品です。