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2-いや、洗濯物を干させてください

目の前に長方形の何かが現れている。何を言っているかわからないと思うが事実自分も何を見させられているのかわからない

しかもご丁寧に上部に質問付きである。とりあえず気にせずに前を進もうとするが何故か足が一歩も前に出ない。ここで声を上げてもいいのだが声を上げようとすると急に言葉が詰まってしまう。なんだこれは。しかも、はてなの部分はなんなのだ。長方形の隣にシルエットみたいなものが浮かんでおりその中に?がついているがこっちがはてなだ。何に巻き込まれているのかさっぱりわからないが現状この廊下には人がおらず正直洗濯物を持っている腕がプルプルしてきた。体は全然動かないのに重みだけ伝えるのはひどすぎると思う。このままの体制で居続けたら確実に選択籠を7個も運べないことは明確だった


「えっと、…とりあえず、庭で」


何処に行くかどう選ぶのかわからないが行きたい場所は決まっていた。この籠を早く置きたい。腕が動かないならと声でそう選択するがどうやらあっているようでピコンという軽い音と共に踏み出した一歩が自然と地面につく。何があったかは未だにわかっていないがとりあえず庭に向かって洗濯を干してしまおうと歩みを進めた。分からないことを調べることは後でもできるがこの時間帯に干さないと洗濯は乾かない。しかも、誰かが見ていた場合が恥ずかしすぎた一人で意味の分からないことを言っていた人物になってしまう。足早に庭に向かい洗濯籠を降ろす


「重たいそれをちょっと退けてくれないかな?」


ことができなかった。何故か、誰かの足が洗濯籠を降ろす地点にありその足に向かって洗濯籠を置いてしまったのだ。前方不注意とかではなく、本当に籠を降ろす瞬間、降ろしてから声がかかる瞬間までティアはそこに人の足はおろか人が居ることすら気づいていなかった。ついうっかりではない。明らかな意識外からの事実にティアは震えあがる。こんなこと入城以来あったこともない!認識疎外の魔法でもかけられていたのかくらいのミスだ。冷や汗が背中を垂れる。その声は聞き覚えがあった。柔らかく優しい声色だが、何処か凛とした響きを持ったその声は明らかにこの国の第一王子。王位継承権第一位。慈悲深く優しく下々の平民にすら柔らかな笑顔を見せる一方で剣技も得意であり、策士でもあるという天は二物以上を与えたと噂のその人だった。慌てて洗濯籠をどけるとそのままの流れで地面に伏す


「も、申し訳ありません!セフィエル様!」

「うん、僕がここに座っていたのも悪いからそんなに謝らなくてもいいよ。ただ、ちょっとだけ周りに意識を向けたほうがいいとは思うな」

「仰る通りです…」

「じゃあ、一回立ち上がろうか。いくら綺麗に整えられている庭だからといって土で汚れてしまうよ」


促されるままに顔を上げ立ち上がる。セフィエル殿下は柔らかい微笑みでこちらを見てそこが汚れているよとスカートを示してくれた。そのしなやかな肉体に反して意外と武骨な手を持っているのは剣を振るわれるからだろう。流石もうすぐ行われる剣技大会の優勝候補でもあるなどと意識を飛ばしたとしてもやってしまったことは変わらない。とりあえず指定された場所を払い自分でも土がついていないか確認を終えればもう一度、今度は地面に膝をつかずにお辞儀をする


「改めまして、申し訳ありませんでした」

「いいんだ。洗濯をいつもありがとうね」


正直に言えばこんなところで何してるんだ執務室か自室で寝てくれと思わなくもないが相手は王族そんなことは口が裂けても言えない。何故ここにいるかはわからないがとりあえず自分がやりたいことはあの籠いっぱいの洗濯物を干しきることだけだ。それなのに頭を上げてそして離れる胸を告げようとしたのと同時くらいにその無慈悲な声は聞こえる


「よかったら、ちょっとだけ話をしないかい?」


誰が話をするか!!!

と思うままに遠回しに遠慮の言葉を告げようとするがピコンと聞きたくないその音が聴こえて恐る恐る目を開ける。お願いだ、何もありませんように…そんな思いと裏腹に存在する目の前の長方形


話をしますか?

【光栄です。よろしければお話し相手にならせてください】

【いえ、職務があるので無理です。迷惑です】

【べ、別に貴方と話したいわけじゃないけど。少しくらいなら時間があるわよ】


今度は言葉として相手に返すみたいだ。いや、洗濯物干させてください

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