第6話 専務のソファフカフカ
「まあ、お座りください」
専務がソファに座るように促す。
やべえ。沈む。
足閉じてないとパンツ見えそうだよ。閉じてても見えるんじゃない。どうする?
咄嗟に膝を斜めに傾けて両足を横にそわす。そうだよ、上品なポーズってこういう感じ。
秘書のお姉さんが、麦茶を出してくれた。
コップが薄い!
握ったら割れるんじゃない?
「いきなり店長と言われて、びっくりしたんじゃないですか?」
「は、はい。ABCKIDSってなんだろうって思っています。英会話を教えるんですか?」
「英会話を教えるというのは、難しい日本語ですね。福本さんが直接生徒さんと英会話をすることはないのでご安心ください。英語の授業は外国人がオールイングリッシュで行います。福本さんにお願いするのは、講師の指導と保護者の対応です。顧客満足度期待していますよ」
「は、はい」
「どうぞ、お飲みになってください。グローバル事業部といっても、社員は福本さんだけです。本部長は私が兼務します。なので、有給取りたい時とか、残業申請とか私に印鑑をもらいにきてくださいね。」
「へ?」目が丸くなった。
「冗談ですよ。システム化していますから、グループウェアで申請してください。印鑑もらいに来ることはありません。
真面目な話をすると、教室の備品など何もありません。今日の午後ABCKIDS本部のスーパーバイザーが来ますので、いろいろ必要なものを聞いて購入リストを作成してください。単価が5000円以下の品は、福本さんの決裁で購入できますので、そのまま経理に申請してください。それ以上のものは私が承認しますので、私の承認をもらってから経理に提出することになります。机とかスマートボードとか早めに決めてあげてくださいね」
スマートボード?なにそれ?東京オリンピックで正式種目になった奴?
「教室はまだ何もないので、工事の立ち合いからお願いしますね。ノートパソコンとスマホを総務で受け取ってください。これがスーパーバイザーの連絡先なので、スマホをもらったら連絡してください。何か質問はありますか」
「私は今日からどこで勤務するのでしょうか?」
「ニトリ金沢文庫店ですよ。総務部長から会社のクレジットカードを借りてくださいね。
我が社は、部門別会計なので、グローバル事業部が利益を上げているかどうかすぐにわかります。当期の目標としては、最終月で償却前利益を出すのを目標にしてください。
損益分岐点は40名と伺っていますので、3月の新学期に40名確保してくださいね。
経理のことは何もわからないと思うので、スーパーバイザーに相談してくださいね。結構な額を支払っているので、堂々となんでも教わってください。よろしいですか」
「は、はい」
部門別会計?
トウキ?
最終月?
償却前利益?
損益分岐点?
3月が新学期?4月でなくて?
意味不明だよ。