第二話 女神見習い
「っそれより、ここどこだよ!?お前誰!俺、なんで女の子になってんの!??」
「そんなに一気に質問しないでよ。頭がこんがらがっちゃうじゃん。」
ここまでで溜まった疑問を一度に並べるイズミ。それに対して少女は頬を膨らませた。
「ええっと、じゃあ、君は何?」
数ある疑問の中で、これを質問したのは、単純な少女への興味からだろう。
その言葉を聞いた少女は、にやり、と笑みを浮かべる。少し身構えるイズミだったが、少女はバッと立ち上がり、
「よくぞ聞いてくれました!私の名前はフィオナ。未来の大女神様にして随一の美少女!よろしくね。イズミ」
左手を腰に当て、右手の人差し指を立ててイズミに向け、ウインクする。おそらく決めポーズか何かなのだろう。
どんな原理か分からないが、まるでアニメの主人公の自己紹介シーンのように桃色の髪が揺らいだ。
彼女―フィオナの自己紹介通り、確かに美少女である。
しかしそれよりも、聞き捨てならない単語があった。
「女神…?」
女神といえば、死んだ後に天界に導く美しい女性の事であったり、宗教だのの御神体であったりする女神なのだろうが…
「あの、女神?」
「そう。あの、女神」
「どの女神だよ」
「ずるい!あんたが先に言ったんでしょ!?」
ここがどこか別の場所だったり、自分が女の子になったりしていなければ、フィオナの言うことをすぐに信じはしなかっただろう。
しかし、この状況でフィオナの言うことを嘘だと鼻で笑うわけにもいかないのだ。
「未来の女神って事は、まだ女神ではないんだよな?」
「まぁそうね。女神見習いって所かな。」
話を一度整理しよう。目の前に座る少女、フィオナ。彼女は女神を目指す女神見習いで、イズミが居るのは真っ白な空間。そしてなぜかイズミは美少女になっていて――
――何一つ解決していない。むしろ謎が増えたまである。
イズミは他に聞くべき事をフィオナに聞こうと顔をあげた。
その時、どこからか、否、その白い空間全体を耳心地の良い音が包んだ。何事かとフィオナの方を向くと、彼女は上を見上げて嬉しそうな表情を浮かべ、
「あっ、お母様がお呼びだ!イズミ、ついてきて!」
そう言って、未だ床にへたり込んでいたイズミの手を引き起こすと、白い空間に、それまでなかった、上に続く階段が現れた。
「このままとって食われたりしないよな…」
そんな不安をフィオナに聞こえないようにぼそりと呟き、手を引かれるがままに階段を駆け上って行った。
読んで頂きありがとうございます。
ついにヒロイン?の名前が出てきました。
“フィオナ”とは、「白い」、「青白い」、「明るい」などを意味するケルト語に由来する。らしいです。
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