第三章 幕間、儚い現実 青い光
幕間
星々が空に煌めく、冷たい夜。
「弔砲用意」
南の城壁では、銀髪の少女が号令を受けていた。
祭事を執り行う祭事長の男と、銀髪の少女しか城壁には登っていない。
「弔砲用意よし……」
三段ほどの台の上を、儀礼的な場所に仮定していた。そのため、黒く染めた紐で囲っている。
「あなたのタイミングで撃ちなさい。エラ」
祭事長の男は、低く穏やかな声で少女に伝えた。
「……はい」
少女は胸の前で手を組み、祈りを込めた。
そして空に向けて、力を放つよう翼に念じた。
翼は意図を汲んだかのように、一度大きく羽ばたくと一斉に青い光を放った。
幾筋もの光は途切れる事なく、絶え間なく空へと伸びてゆく。
それはまるで、こちらと天を結ぶ道のようでもあり、人々の想いを届けるための、空へと昇る流星のようでもあった。
そこには、人も獣も皆、空に帰れるようにという、少女の想いも込められていた。
――青い光。
誰もが見つめるその光の帯は……その残滓は、儚く天へと消えていった。
「全ての死者と、その家族に。祈りを……」
祭事長の男は、無意識につぶやいた。
「祈りを……」
……ただ祈りを、少女は捧げた。
ただ、それだけしかない。
――いつか、報われる想いがありますように。
お読み頂き、有難うございます。
前回もブックマークを頂戴しまして、本当にありがとうございます。
心から嬉しく思っております。
これからも応援のほど、どうぞよろしくお願い致します。
(今回の内容が、神妙な雰囲気なので粛々として書いております)




