表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】なぜか皆から愛されて大公爵の養女になった話~転移TSから幸せになるまで~『オロレアの民 ~その古代種は奇跡を持つ~』  作者: 稲山 裕


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

273/295

第九章  十三、三つめの古代施設

  第九章  十三、三つめの古代施設




 古代のものとはいえ、精密な地図を手に入れたのは大きかった。


 オートドール任せで、目標の施設を指定して海への迂回ルートを定めると、後は自動飛行だった。


 この体の頑強さを頼りに、音速を遥かに超える速度で飛行したらしく、あっという間に到着した。




 これなら、日帰りで行ける範囲がかなり広がる。


 もしかすると、最高速度で飛行すればこの星のどこにでも、何時間かで行けてしまうかもしれない。


 そしてその分、施設探しや調査に時間を使える。




 今回の施設は、水の生産施設だった。


 大山脈から離れ、それらに比べれば緩やかな山々の中腹に、洞窟のような入り口を保ったまま残っていた。


 中はやはり、腐食を知らないかのような、金属製のプレートで建造されている。


 土と雪が混じった汚れが、沢山付着していてかなり荒れてはいるものの、それは奥の扉までだった。




「……何千年もそのままだった割には、土が堆積しているわけでもないし……もっと後まで使われてたのかな」


 けれど、扉が何をしても開かなかったので、刀で強引に開けてしまった。


 そこから緩やかに下り道になっていて、電力がまだ生きているのか、不自然に明るい。


 通路が幅広の階段であるのも、はっきりと見える。




 慎重に進み降りて行き、数分ほどを下ると扉が見えた。

 おそらくは、最奥の管理室。


 ここの本体機器だけは生きていたらしく、大きなモニターと制御用の機器が、私が入室したことで反応して、稼働し出した。


 意外なほどすんなりとリンクも出来たし、管理系と通信系にもアクセス出来た。


 ここは生産施設というよりは、山で自然ろ過された水の水脈に干渉して、飲料水として使用するためのものらしい。


「発達した科学でも、水の使い方は同じなんだ」


 もしかすると、お金持ち相手の自然水、という扱いかもしれないけれど。




 施設の工場としての稼働は止まっていて、今更動かしても飲めるのかは分からない状態だ。


 モニター画面に映る、衛生管理の文字の横に、使用不可と表示されている。


「稼働管理のための作業場が、こことは別の入り口にあるのね」


 全体図を表示すると、私が入ってきた所よりも下の方に、工場があるらしい。




「それもそうか。私が通ったのって、ただの通路だったもの」


 もしも私がエンジニアだったら、もっと色々と分かったりして興味深いのかもしれない。


 でも、王国とは距離的に遠すぎて使うことも出来ないし、私はさっさと、目当てにしていたダラスのメッセージを探した。


 …………けれど、それらしきものが見つからない。


 オートドールに任せた操作ではあるけれど、自分でするよりも格段に正確だ。


 だというのに、メッセージが見つからない。




 それに、衛星へのリンクもなかったし、近くの施設とのリンク機能もない。


 私がこの水施設にリンク出来ているのは、オートドールの機能でハッキングしているだけらしい。


「今回は、ハズレかぁ……」

 せっかく海をまたいで来たのに……残念だ。


 先日と今日のことで、『リンク可能な施設』といっても、ダラスのメッセージを受け取れる施設だとは限らない……というのが分かった。


 私がリンク出来る可能性があるだけ……となると、ダラスの住んでいた国以外の施設は、全部ハズレの可能性が高いのではないだろうか。




「はぁぁ…………うそでしょ?」


 最初の武器施設でしか、メッセージを受け取れていない。


 自国の生産施設は、地図があったから当たりだと思っただけだ。


 ……道のりが、一気に遠くなった気がする。




 私は、人が本当にがっくりとすると、肩を落とすものなのだというのを初めて、今まさに体験した。


 肩だけではなくて、頭も下がっている。


「手当たり次第といっても、連日だと緊張もすごいし……明日はお休みにしよう」




 移動も、自動とはいっても知らない所をひたすら飛び続けるというのは、かなりの緊張を強いられる。


 不意の出来事で墜落しようものなら……そこで翼を失ったら……。


 そんな風に、不安に思うことは沢山あるから。


 初めての場所、知らない施設、そこに、古代の防犯設備が生きていたら……という緊張もずっと続く。




「その上、ハズレだった時の、この落胆加減は……つらい」


 雲を掴むような話だ。


 幸いにも、今日までの三つの施設はなんとか動いたけれど……もしかするともう、機能が完全に壊れているものもあるかもしれない。


 古代の科学技術といっても、永遠に維持できるものではないだろうし。


 ダラスも、衛星がまだ動くうちにと、急がせるメッセージを残していた。




 ……やっぱり、明日も探した方がいいだろうか。


「エルトアに、相談……した方がいいかな」


 私ひとりで探し回るのは、さすがに効率が悪い。


 でも、すぐに決断出来ない。


 ……なぜ迷うかというと、どういう人物なのかがはっきりと分からないから。




 ダラスの軍事衛星ともなれば……彼女は飛びつくことだろう。


 ――その後は?


 これまでの方針を翻したり、何かしら気が変わったり……しないだろうか。


 あれだけの科学技術を持ちながらも、世界に干渉しないような都市だから、エルトアをはじめとして誰も妙なことはしないと思うけれど……。




「いや、変な勘ぐりはやめよう」


 そもそも、私が王国を出て、この施設に居ることもエルトアは把握しているはずだ。


 干渉してこないから忘れがちだけど、彼女は私の行動を、いつでも見ることが出来るのだから。




「……そう思うと、恥ずかしいわね…………」


 ふと気になったのは、旦那様との伽や、気を許して甘えている時の姿――。


「まさかそんな、悪趣味なことはしていないわよね?」


 覗かれているのではと心配になったけれど、エルトアはこういう話が好きではなかったから……大丈夫だと思うことにしよう。




「やっぱり相談しよう。衛星に干渉できる場所を知らないか。もしくは、回遊都市の通信を借りられないかを」


 ――そう決めたら、なんだか気持ちが軽くなった。


 断られる可能性もあるけれど、理由を説明すれば、手助けくらいはしてくれるだろう。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ