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【完結】なぜか皆から愛されて大公爵の養女になった話~転移TSから幸せになるまで~『オロレアの民 ~その古代種は奇跡を持つ~』  作者: 稲山 裕


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第二章 一、再生の時(四)



 


 夕食まで少し、時間がある。


 空いた時間の使い方が分からないのは、元の時と同じだなと思った。


 リリアナは仕事が残っているとシロエに引っ張られていったし、そのお付きのシロエは基本的にリリアナと一緒に居る。




(明日からに備えて、少し横になっておくか)


 リリアナの部屋の共通寝所となった三人用の特大ベッドに、また寝転がりに行く事にした。


 とはいえ、悪夢はもう見ないだろうとしても、眠るのはやめておこう。


(それに、起き掛けに夕食だと、食べきれなくなるしな……)




 この体は小食だ。食べたいと思っても、すぐにおなかいっぱいになる。寝起きなら尚更だ。


(一人で過ごす時間は、本当に久しぶりだな)


 三階の広い廊下を奥まで行くと、部屋の前に居る警備兵は、オレを見ると扉を開けてくれた。


「ありがとうございます」




 公爵令嬢はあまり頭を下げるなと教わっているが、つい下げそうになる。


 軽く会釈をして、下がりかけた頭をすぐに引き戻した。


 視線を下げ過ぎると、いざという時に反応出来ないからだそうだ。


 箱入娘状態のオレには、何の実感もないのでうっかりする事が多い。




(さて、ただ休むのも、勿体無い気もするな)


 寝室に入った所で、姿見鏡に映った自分の横姿が目の端に止まった。


 いつもはシロエやフィナが身の回りの事をしてくれるから、自分自身をじっと見る事がなかったなと思ったからだ。


 あまり人前で自分を見つめると、恥ずかしい気がするのでシロエやフィナを見ている。


 話しかけてくれるし、オレも話すから鏡越しに目を合わせる、という理由もある。




(やっぱり胸……大きくなったか?)


 体術の時に、勢いよく腕で挟んでしまうと痛いし、邪魔に感じる事が増えた。


 毎日見ていると、見た目ではそこまで気にならないのが不思議だ。



(筋肉も、少しはついただろうか)


 お風呂では洗ってもらうため、自分でチェックするタイミングがない。


 至れり尽くせりというのは、自己管理ではなく他人管理になるという事だ。




 部屋には誰も居ないので、オレはおもむろにドレスを脱いだ。


 下に着けている簡易コルセットは、ウエストラインを作るために胴当てのような感じだ。


 その反面、胸を下から支える形をしているが、ブラではないので上は裸に等しい。


 体をチェックするために、これも外してショーツ一枚の姿になった。




(ガリガリだった一年前よりは、しっかりお肉が付いたな。でも……)


 力こぶなど出来ないし、シックスパックもない。


 当然と言えば当然だが、やはり戦闘するには無理があるだろう。


 背も低いままだ。ほんの少しくらいは伸びたような気もするが。




 逆に考えれば、スラリとして子供なりにモデルのような体型と言えるだろう。女としては、こちらの方が良いだろうか。


 足が長いから、鍛えられたら良い蹴りが出せるだろうに。


(預けた白煌硬金……あれが無いと、本当にただの女の子だな。いや……)




 ただの、というのは間違いだった。


 白い肌は輝いて見えるし、顔も小さくて本当に可愛い。


 まだ少しあどけない感じが、妖精のような美しさになっている。


 胸も上向きで張りがあり、形が綺麗だ。そういえばおしりも、プリンとしていて可愛らしい。




(オレは、この星に飛ばされた事をネガティブに捉えていたし、今でもここで生きる事に不安ばかりだ。


とはいえ、この容姿、今の環境、どれも最上級に恵まれているんだよな)


 そう考えると、念動と仮定した白煌硬金への特別な力も、古代種だと言われたこの容姿も、誰もがオレに優しいのも全て、もっとありがたく感じるべきだ。


(もっともっと肩の力を抜いて、自分の事も、皆の事も、受け入れていこう)



 ……とはいえ、やはり無理矢理ここに飛ばされた事は納得がいかないか。


 何か意図があったらしいが、ともかく飛ばされた事は一旦保留にしておこう。


(でないと、整理できそうな事もできなくなりそうだ)



 ここに来てから、気持ちとしては『ひとつのミスが取り返しのつかない事になる』と思い込み、神経をすり減らしていた。


 だが、今はそうではないと実感できた。


 きっと自分では気付いていない失敗も、皆はフォローしてくれたり許してくれたりと、寛容に接してくれているのだろう。


(生きていくための土台は、これ以上ないくらいに大きい)



 ならばオレは、この容姿をもっと磨くべきだ。


 どうすれば魅力的なのか、皆に試したり教わったりしてみよう。




 念動はどうだろう。


 アレが無くても、小さな紙切れならば動かせるようにはなった。


 まだ実用性は皆無だが、こんな事が出来るというのは何か期待してしまう。


 それに、使い方のイメージをもっと、膨らませてみてもいいのかもしれない。


 思ってもみない使い方があるかもしれない。



(根本的な所で力が抜けると、物事が楽しく考えられそうだな)


 体に合った体術の習得も、楽しみでしょうがない。


(あとは、この胸が邪魔にならないように動けるかだ……)


 やはり、一年前よりも大きくなったように思う。重みも増しているような――。




「――エラ様……お胸でお遊びになるのは、まだ少し早いかと。服までお脱ぎになって……」


 胸を持ち上げて確認しているところに、不意に声をかけられて飛び上がった。


「ちょっ、えっ? シロエ。ちがう、違うんです! 大きさがその、大きい方なのかどうなのかと、気になって」



 咄嗟に胸を隠したのは、この体の本能だろうか。


「でも、お年頃ですものね。呼んで頂ければ、お手伝いいたしますのに」


(手伝わんでいい!)



「て、ていうか、ノックは? 急にびっくりするじゃないですか……」


「すみません。お嬢様は書斎ですし、エラ様はまだ、ウィンお爺様とイチャイチャされていると思っていましたので、つい」



 お義父様と何かある体で話さないで欲しい。


(はっ! まさかこれは……シロエはオレをからかっているだけなのか?)


 お風呂では、胸の大きさでリリアナと競う所を見せていたし、お義父様との話もそうだ。


 かなりオープンな感じだなと思っていた。


 緩いという程ではないが、寛容的だ。


 それなのに、オレが棒に跨って飛べるかを試していた時も、そして今も、一人で何かしている風な時は咎めるのだ。


 逆にこれらは、からかうには絶好のタイミングと言えるだろう。




(……でも、シロエは真顔だ。ニヤニヤしているわけじゃないから、本心なのか?)


 子供が一人で致す事は、あまり推奨しないという観念があるのだろうか。


(わからん……シロエの表情からは読み取れん)



「……何か?」


(真顔でなければ、優しい女神のような美人なのになぁ)


 あえて真顔を作っているのだろう。


 じっと見られると、誤解にしてもからかっているにしても、責められているように感じてしまう。



「い、いえ。その、私の胸は年齢的に大きい方なんでしょうか。体術の時に少し邪魔になってきましたので」


 とにかく、話を修正するために冷静を装って質問した。



「あぁ……大丈夫ですよ、誰にも言いませんから」


 ここでニッコリと微笑むのは、やはり確信犯だろう。


 絶対にわざとそういう方向に持っていこうとしている。


「……シロエ。そうじゃないって分かってて言ってますね?」


 ショーツ一枚で胸を隠した姿では説得力がないけれど、オレはそんな事をしないと分かっているはずだ。


「フフ」



 そう笑うだけで何も答えないのも、きっとシロエの狡猾な心理戦だ。


 狼狽えるのを見て、楽しんでいるに違いない。


 そこで負けじと、オレは口を少し尖らせてじっと見つめ返した。




「あら、やりますね。えぇと、そういう時は女性用の胸当てを借りると良いですよ。


胸への意識が否応なしに鍛えられるので、体が胸を邪魔にしない動きを覚えてくれます」


「ほら、やっぱり! ……でも、良い事を聞きました。ありがとうございます」



 油断していたとはいえ、とんだ災難だった。


「いえいえ。でも、ほどほどになさってくださいね。フフ」


「だから、違うんですってば……」


(結局、からかうのか。いつもの事だし、もういいけどさ……)




 クスクスと笑いながら、シロエは三人分の寝間着をベッドに置いて部屋を出ていこうとした。


(そういえば、これも聞いてみよう)


「あっ、そうだ。私のウインクって、何か変でしょうか?」


 そう言って、一瞬だけパチンと片目を閉じてみせた。


 我ながら上手に出来ていると思うのだが、お義父様は他人に見せるなと言う。


 どういう意味なのか、シロエなら正直に教えてくれるだろう。


「はぅっ! …………い、いけませんエラ様。それは他人に見せてはいけません。私にだけ、存分に見せてください。いいですね?」



 そう言うと、シロエはフラフラしながら部屋を出て行ってしまった。


(そんなに変なのか……?)


 フラつく程気持ち悪いとかじゃ、ないと信じたい。


(そうだ、鏡で自分で見てみればいいじゃないか)




 映る自分を見ながら、パチンとウインクをしてみた。


 可愛らしい顔が、そして古代種特有の赤い目――煌めくような深紅の瞳――を片方、一瞬閉じて開くというだけで、強烈な魅力が飛んだ。


 ような気がした。それも裸の美少女がウインクをしたのだ。



(……これ、めっっっちゃ効くじゃないか)


 だが、これは使えると思ってしまった。


 自分で見惚れるくらいだからだ。


 もう一度見てみたいと思ったが、完全なナルシストになりそうだから止めた。


 そして、とりあえず服を着ようと、簡易コルセットとドレスを手に取った。


 もうすぐ夕食の時間だ……。


――「面白い」 「続き!」 「まぁ、もう少し読んでもいいか」


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どうぞよろしくお願い致します。  作者: 稲山 裕

週に2~3回更新です。



『聖女と勇者の二人旅』も書いていますので、よろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n4982ie/

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