表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】なぜか皆から愛されて大公爵の養女になった話~転移TSから幸せになるまで~『オロレアの民 ~その古代種は奇跡を持つ~』  作者: 稲山 裕


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

130/295

第五章 一、エラ・ファルミノ(三)―乙女の養成―

   第五章 一、エラ・ファルミノ(三)―乙女の養成―



(あれは……キス――よね)


 一人残された執務室で、しばらく放心していた。


 髪はもう、光が収まっている。




 反省してなさいと言われたけれど、一体何を反省するべきだったのか、どうにも思い出せない。


(それよりも……キスって、あれでしょう?)


 愛し合う二人が、するものよね……。




 貴族教育の、座学でも性の教育は受けた。カミサマは感情が無いのかと言うくらい普通にしていたけど、私はドキドキして聞いていた。


 もっとその先の……夫婦の営みについても――。


 でもそれは、許嫁が出来ても、婚約の後でも、結婚するまでは上手く躱せという教えも一緒に。


 そしてキスは――状況によって使い分けなさい――と、先生から教わっていた。




(私とシロエは……女同士よね)


(私とリリアナも……女同士よね)


 カミサマの記憶には欠けているものが多くて、今のこの、肝心なことが分からない。


(今回のことは、どう考えればいいの?)


 女同士でも、愛し合うものなのか。




 でも、私は二人のことは好きだと言っても、男女の関係のような感情ではない。


 尊敬や恩、あこがれもあるだろうか。


 大好きで大切な存在だし、護られるばかりではなく、護れるようになりたい。


 シロエやリリアナは、庇護の気持ちが強いのだと思っていた。




 それとも、やっぱり魅了の影響を受けていて、過度な愛情を発現させてしまったのだろうか。


 けれどこれは、本人に聞いたところで、魅了を受けているのかどうかの自覚さえないようだから……確認のしようが無い。これが一番もどかしい。




 ――(エイシア! エイシア!)


 さっきは勝手に口を挟んできたのだから、どこかで聞いていたはず。


 あの子なら記憶の網とやらで、色々と知っているかもしれない。



 ――(うるさいぞ)


 ――(聞いてたわよね? さっきのことは、どう考えたらいいの?)


 ――(何の事だ)

 ――(知らないふりをする気?)


 ――(何を聞きたいのか分からぬが)


 ――(キスよ! キス! されたの!)


 ――(貴様が愚かすぎて、愛情とやらを示したくなったのだろう。それがどうした)


 ――(だから……女同士なのよ? 魅了の影響を受けているかどうか、確認する方法はないの?)




 ――(あれば良いのだろうがなぁ)


 ――(どっちなのよ)


 ――(ふむ……人魔の魅了は厄介でな。先ずは初対面でそれなりの好感を持つ。……だが、貴様ら人魔の容姿に魅かれたのか、魅了の力なのかさえ分からぬのだ)




 エイシアは、念話でも分かるほどに、かなり真剣に話してくれている。


 まるで、遠い記憶を呼び覚ましながら、ゆっくりと確認するように。


 ――(その後は、徐々に浸透してゆく。……人魔も違和感を覚えぬほど。受けた本人らも同じく、だ)


 ――(でもさっきみたいに、女同士でキスをすれば、さすがに気付くわよね?)


 私にとっては、衝撃だったのだから。




 ――(さて。人間どもの性癖までは把握しておらぬ。それが魅了のせいなのか、本人の性質なのか、誰にも分からぬ事よ。どうでも良かろう、そんな事)


 どうでもいいわけがない。


 魅了のせいなら、何か対策を考えなければ。


 エイシアが言っていた滅びの道を進むことは、避けたいのだから。




 ――(今、真剣に考えてくれてたんじゃないの? もっと教えなさいよ! 私達は同じ魔のつく者なんでしょう?)


 ――(ハァ……。元は、嫌われる心配をしておったのだろう? 好かれているのだから、良かったではないか)


 ――(単純に、そんな風に割り切れないから悩んでるのよ! 私、半時間もずっと放心していたのよ?)




 ――(これまでの人魔どもは、基本的に男に殺されておったな。嫉妬に狂った男に。雌の人魔はもちろんだが、雄の人魔も、伴侶や恋仲の雌を奪われたという男からだな。いつも殺し合いを始めるのだ。貴様らは同族を魅了するものだから、そうなるのだろうがなァ。滑稽なことよ)


 ――(なにそれ。それじゃ、あなたは自分の種族には使っていないということ?)


 ――(そもそも、だ。誰彼となしに力を振り撒いている事が、狂っておるのだ)


 ――(私は使っているつもりなんて、ないのだけど。使えば熱がこもるから、分かるわ)


 そのはず……それで間違いはないはず。


 魔力みたいなものが体の中を流れていて、目に集中した時に……。それが、力を使った時の感触だったのだから。




 ――(それは、集中した時の力であろう?)


 ――(……どういうこと?)


 この先を聞くと、自分が嫌いになるかもしれない。


 でも、聞いておかなくては、絶対に後悔する。




 ――(聞きたくなさそうではないか。貴様の直感通りに、聞かぬ方が良いやもしれぬぞ?)


 ――(もったいぶらないで)


 ――(フッフ……。クフフフフ)


 嘲るような、見下している笑い声。


 ――(……人間みたいに笑うのね)




 ――(貴様の魅了の力は、まるで下の世話を放棄したかのように、お漏らしをしておるわ)


 ――(そんな……)


 ――(貴様のゴーストが……滲んでいた時は、そうでも無かったがな。それでも、少しは染み出ていた。だが……今は、どうだ? 人間どもに、抗う術はないだろうなぁ?)


 それが本当だとしたら……私は……。




 ――(エイシア。お願い)


 ――(我に、お願いだと?)


 ――(うん。……制御方法を教えて)


 ――(嫌だ。……と、言ったら?)




 ――(…………逆らえなくしてやる)


 ――(クハハハハハハ! 野蛮で愚か、浅慮で無謀。貴様が我を、どうしてやると?)


 こいつは……魅了が掛かっていて、私に従ったはずなのに。


 ――(いいから教えなさいよ! 無理矢理に従えさせたり、したくはないの)


 もしかして、魅了に掛かったフリをしていた?


 魅了とは……なんて不確かで、扱いづらい力なのだろうか。




 ――(……愚か者よ。貴様が感情を揺さぶられれば、比例して力が漏れるのだ。気付いておらぬのか? 見事に青く光る、その髪に)


 そう言われて、自分の髪がはっきりと青く光っていることに、今、違和感を覚えた。


 視界には入っていたはずなのに、光ったことを何とも思っていなかったのだ。


 ――(なん……で?)




 ――(聡い我は、説明よりも手早い事をしたのだ。剥き出しの感情は、そのまま力を剥き出しているにほかならぬとな)


 これって……弄ばれた?


 ――(感情さえ落ち着いていれば、大丈夫ということ? それとも、漏れ出ているの?)


 ――(……ふむ…………。どうだろうな。魔力の扱いは、今の方が優れて見えるが?)


 ――(もったいぶらないで! 私に分かるように教えて!)


 ――(少々からかいが過ぎたか。だが、その程度では貴様が困る事になろう。まずは落ち着いてみせよ。小娘)


 ――(……何よ。偉そうに……)




 信じていいのだろうか。こいつは……やっぱり油断ならない。


 でも今は、ダメで元々のつもりでも、何か取っ掛かりが欲しい。言うことを聞いてみるしかない。


 ――(そうだ、そうだ。上手に出来ておるぞ。髪も元通りではないか)


 ――(できた?)


 ――(元より、貴様で遊んでやっただけだ。貴様は、記憶の網にある人魔とは、どうにも違う。それを確認してやったとも言うが)


 ――(タチの悪いことをしないで! 本気になった私が、バカみたいじゃない……)


 悔しい。恥ずかしい。




 こいつはやっぱり、意地悪をするのだ。


 今回は、まんまとそれにやられたのか、それとも本当に……。


 いや、あまり疑っていると、頭がおかしくなってしまう。


 ――(ねぇ、それじゃあシロエのあの……キスは? リリアナは? そういう性癖だっていうことなの?)


 それはそれで……話がややこしい。


 けれど、その方がまだましなのかもしれない。


(ううん……どちらが良いのか、本当にわかんない)




 ――(性癖など、本人どもに確かめろ。我が知るわけがなかろう)


 くだらない話を蒸し返すなと、そう言っているかのような、面倒臭そうな声。


 ――(偉そう。偉そう過ぎる。ねぇ、ガラディオも見ていたのよ? 私の……キスを。恥ずかしくてもう、まとに話せなくなりそう)


 ――(小娘のくせに、発情しておるのか? 念話で痴情の話などしてくれるな。しばらく貴様からの念話は遮断しておく。気色が悪い)


 ――(ちょっと!)


 発情なんて、していないのだけど。




 念話の遮断……エイシアは、私の知らないことを色々と知っている。


 そうしたことも、これから全部聞き出していかなくてはいけない。


 今出来ること、持っている力についても、考えていきたいのに。


 エイシアは、やっぱり一筋縄ではいかない。


(結局、頭を混乱させられただけのような気もするし)


 リリアナに言われた反省すべきことは、もはや何なのか、分からなくなってしまった。




 それよりも……。


 今の話を、全て信用できるものとして、整理しなくては。


 ――魅了の力は、普段は漏れていないと考えると……髪が光ったのは何回?


 王都で一度、ファルミノに来る頃には徐々に戻って……この時が一番長く光っていたわね。

 後は、さっきの会議中と、今の二回だけよね。


 ということは、キスされたのは私の力のせい……よね。エイシアに滅びの原因だと言われて髪が光って、それからあんなことになったのだから。




 なら、とりあえず私は、感情的にならなければ魅了は使っていないと考えても、良さそうね。


 エイシア……まるで、わざと私を揺さぶっていたみたい。


 許せない……。


 ――けれど。


 言葉で説明されるよりも、実際にそうなってしまったからこそ、問題がありありと浮かび上がった。


 ――自覚した。


 ……ううん。させられた……。


 もしくは……ありえないと思いたいけど、させてくれた?




(心を強く持たなくちゃ、皆を護るどころじゃなくなっちゃう。あいつに遊ばれるのも、腹が立つし……)


 そうと決まれば、私は――。


 心の修行だ。


(カミサマの後ろでずっと、指をくわえて見ていただけだった分を、取り戻さなくちゃ)






 ……修行って、何をすればいいのかしら。

 



いつもお読み頂き、ありがとうございます!



ツギクルバナーのポチっと、ブクマ、評価、いいねの全てありがたく、感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。


読んで「面白い」と思って頂けたらば、ぜひとも他の人に紹介して頂いて、広めてくださると嬉しいです。

「つまらん!」という方も、こんなつまらん小説があると広めてもらえると幸いです。

ぜひぜひ、よろしくお願いします。


*作品タイトル&リンク

https://ncode.syosetu.com/n5541hs/

『 オロレアの民 ~その古代種は奇跡を持つ~』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ