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【完結】なぜか皆から愛されて大公爵の養女になった話~転移TSから幸せになるまで~『オロレアの民 ~その古代種は奇跡を持つ~』  作者: 稲山 裕


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第四章 五、人魔の幼子(三)



「それじゃ、次の話なんだけど」

 リリアナがそう切り出した内容は、わたしだけではなくガラディオも、そしてシロエさえ驚いた。

「お嬢様…………本気ですか?」

 わたしに頬ずりしていたシロエが一瞬で固まった。そしていつになく真面目な顔で言うものだから、本当にただ事ではないのだと分かった。ガラディオも目を見開いている。



「――当然よ。王位継承に名乗り出てやる。これだけ参加しないと言い切っていても私の大事なエラに手を出すんだもの。頭にきてるの。本気で怒らせた事を後悔させてやるわ」

「でもたしか、無用な争いに参加したくないって……」

 わたしは、リリアナが王位継承から降りた理由を思い出していた。



「エラ。これはもう、無用な事ではなくなったのよ」

「どういう事ですか?」

「言ったでしょ。あなたを傷付けられそうになったのは、絶対に許せないって。私が女王になって、全てをねじ伏せてやるの。女王になれば、あなたを狙う事は女王に対する反逆に等しいのだから、誰も手出ししなくなるわ」

 愛が、重い――。



「そ、そこまでしなくても、わたしは反撃できますよ? それに、魅了してしまえば襲えないですし」

 そう言うと、シロエはまた心配してくれたのだろう。やさしく抱き付いていた腕が、ぎゅっと強張った。

「いいえ。これまでもずぅっっと、ねちねちと嫌がらせを受けてきたもの。二年くらい前も……そう、あの日、エラを拾う直前も、獣に囲まれたところに弓矢で追い打ちを受けたわ。ガラディオが居なければ、精鋭を何人か失っていたかもしれない。我慢はもう、限界だったのよ」

 リリアナの決意は、もはや固いようだった。



「家族だからって、もう手心を加えてはあげないわ」

 という言葉が、全てを物語っていた。

 わたし達は固まっていたけれど、彼女だけはご機嫌な様子だった。



「そうと決まれば、お兄様方に布告ね。一緒に警告文を全員に出さないと。『私のエラに手を出した事、今になって悔やんでも遅いですから』ってね」

 フフフと笑うリリアナの顔は、物凄い気迫とはうらはらに、本当に楽しそうに見えた。



 その雰囲気に呑まれて忘れそうになっていたけれど、わたしはわたしでお願いをしにきたのだ。きちんと許可を取らなくてはいけない。

「あ、あの……訓練のお願いがあるんですが……」

 心配の対象になっているのに、言い出しにくいなあと思った。

 それでも、エイシアに見せられた兵器の使い方を試してみたい。もっと有用に、強力で確固たる力として、使えるようになりたい。



「あら、何を訓練するの?」

 ご機嫌に見えるまま、彼女は小首を傾げた。

「まさか、また危ない事をしようと……してないわよね?」

 だが笑顔とは、こんなに恐ろしい雰囲気を纏うものだったろうかとシロエを見ると、彼女はふるふると顔を横に振っている。

 明らかに、続きは口にしない方がいいというジェスチャーだ。



「……ん? 言えない事……じゃ、ないわよねぇ」

 もう一度リリアナと見ると、目は笑っていなかった。

「ええっと……その」

 カミサマなら、こういう時でもしれっと言うのに、わたしには荷が重かった。どうしても相手の顔色を伺ってしまう。



「気にせず言うといい。訓練なら俺が見てやるし、新しい事を試すにしても助言くらいしてやれるだろう」

 困っていた所に、ガラディオが助け舟を出してくれた。

(怖いけど、やっぱりちょっと、いい人なんだ)



「あら、ガラディオ。厳しくし過ぎないなら、許可しなくもないけど」

「最低限の事はしないと役に立たないだろう」

 これはやっぱり、わたしの扱いを巡ってばちばちっと、しているのだろうか。



「あ、あの……、一人でも出来ると思うので……」

「それはダメよ!」

「それはだめだ」

 二人から同時に、ギッと睨まれた。

「……はい、ごめんなさい」

 時々、二人は意見を揃えてわたしを制止する。普段は反発して見えるのに。



「それで、何の訓練をしたいの?」

 威圧感を少し緩和させて、リリアナは改めて聞いてきた。

「あ、はい。その……翼の、光線や羽剣の使い方を練習したくて。人の居ない場所で、地面が抉れてもいいような所に行きたくて……」



「抉れるって……可愛いエラから聞くと、さらに仰々しいわね」

「――それなら、北か西の森の向こう。山脈の近くならどうだ」

 リリアナがわたしの言葉にギョッとしていると、ガラディオが場所の目星をつけてくれた。



「でも……ここから何日もかかるわ。遠すぎる」

「エラなら飛んでいけるだろう。もしも俺を抱えて行けるなら、の話だが」

 自然と、二人の視線がわたしに向いた。

「ええ~っと……ガラディオを、私がですか……?」

 やってみないと分からないけれど、重くて無理そうな気もする。



「ま、やってみるか。俺は少し、試してみたかったんだ」

「え……はぃ」

 もしかしたら、こうなると予想してわたしを庇ったのだろうか。

「じゃ、それは後で試すとして、無理だったら諦めなさい。もしくは、他の方法を考えること。いいわね?」

「う……はぃ」

 わたしはさっきから、「え」とか「う」とかしか、言っていない。



「ほ、ほらエラ様。少し休憩しましょう。きちんとお願いが言えて、偉かったですよ? さぁさ、外の空気でも吸いに行きましょう」

 見かねたのか、シロエはわたしの腕を引いて連れ出そうとしてくれた。

 そうかと言って、この場に居ておかなくてもいいものかと、迷ってしまう。


「……しょうがないわね。と言ってあげたい所だけど、もう少しだから居て頂戴」

「は、はい」

 そしてリリアナは続けた。この先の計画を――。




 ――エイシアの偶像化。

 ――古代種の保護法案。

 ――エラ暗殺を目論んだ兄への罰。これまで、リリアナにちょっかいをかけた兄達への罰。

 ――ファルミノの領地拡大と人口増加。

 ――それに伴う獣討伐隊の編成と砦造り。



 大きくは、これらを行うという事だった。どれも、わたしにはピンとこなかったけれど、時間がかかるだろう事だけは分かった。


「またえらく、大きな事業を進める気だな。実績作りの本格化か。だが工夫も兵も足りないぞ。城壁を広げるための物資も……」

 ガラディオは計画を聞いただけで肩を落として、うんざりとした顔になっていた。その声はもっと面倒臭そうだ。本当に大変な事をするのだなと、ぼんやりと思った。



「それは、当分の間はあの三百騎を使うのよ。維持費も物資調達のコストも、エラを襲った兄から頂くわ。そのくらい当然よね? 城壁はひと区画ずつ作っていけば、少しずつでも領地を拡大出来るし……人を呼び込むのは、エイシアを上手く使うの。あの子は見栄えするもの。エラを乗せて王都を練り歩いて、移住者を募集するの。その前に、古代種の保護法案ね」


 と、鼻息を荒くしたリリアナを見るのは初めてだった。それに、聞いていると本当に出来そうな気がした。実際の苦労は、わたしには想像もつかないけれど。

「そんなにうまく行くかねぇ。食料備蓄はどうするんだ」

 ガラディオは、まだうんざりのままだった。

「まあ、見ててよ。とにかく、やってみない事には何も始まらないのだから」


読んで「面白い」と思って頂けたらば、ぜひとも他の人に紹介して頂いて、広めてくださると嬉しいです。

「つまらん!」という方も、こんなつまらん小説があると広めてもらえると幸いです。

ぜひぜひ、よろしくお願いします。


*作品タイトル&リンク

https://ncode.syosetu.com/n5541hs/

『 オロレアの民 ~その古代種は奇跡を持つ~』

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