短編ホラー『剃刀』後編
居候初日。お風呂を貸してもらい、シャワーを浴びる。今朝の事が脳裏をよぎるが、違う部屋なので大丈夫だろう。そう、思っていた。
「……え?」
また、シャワーが止まる。震える手で、シャワーヘッドを外すと……
「な、なんで……!?」
その中には髪の毛がびっしりと詰まっていた。どうして。あの部屋だけじゃないの?
「……もしかして」
そういえばあの子、私の部屋に来た時、浴室で何かしてた。まさか嫌がらせの為に……?
「……やめよう」
変なこと考えたらだめだ。私は恐怖と疑念でどうかなりそうになってる。それより、まずはこの状況をどうにかしないといけない。
「……うう」
嫌だけど、やるしかない。あの子からしたら、この状況、私のせいにしか思えないはずだ。だから、ここで……
「最悪……」
髪の毛をズルズルと引き抜く。直後、お湯が溢れ出す。シャワーヘッドを取り付け、手に絡みついた髪の毛を洗い流す。
「これも捨てておかないと……」
排水溝に流れた髪の毛を集めておく。排水溝には上蓋が付いており、その中にも入ってしまった。ふたを開け、髪の毛を取り出すと。
「え」
カラン、と何かが落ちる。それは……錆びたカミソリだった。
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「え?」
お風呂から出た後。髪の毛は秘密にして、剃刀が排水溝にあったことだけを告げる。
「危ないから気を付けてね」
「え……あ、う、うん。ありがとね」
その子の表情は優れず、青ざめていた。それからは何も起きることなく、私の部屋の清掃は完了し。
「ありがとね、結局3日も泊めてもらっちゃって」
「ううん。けど……ねぇ。ここ、引っ越した方がよくない?」
「え?」
その子は、突然そんなことを言い出す。
「だって大家さんとかあんなテキトーな対応だし、大学まで結構距離あるし……あ、何なら私も引っ越すからさ、ルームシェアしない?」
「え、えっと」
突然の話に戸惑ってしまう。そんな私を見かねてか。
「ごめんね、急に変なこと言って。でも、考えておいて」
自分の部屋に戻ると、掃除された後だからか消毒液の臭いがする。何より、気になるのは浴室だ。恐る恐るシャワーを確認するも、問題なさそうだ。
「……引っ越し」
本当に、どうしたんだろう。確かに怖いし気持ち悪かったけど、今までそんなこと言ってなかったのに。気にはなるけど、若干あの子の事を疑ってしまっている自分もいたので、あまり気にしないようにしていた。
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翌日。朝から騒がしくて部屋の外を見ると、警察がたくさん来ていた。警官の一人が私に気づくと、話を聞かせてくれと言ってきた。状況も分からず、とりあえず話を聞く。すると……
「え?」
昨夜。隣に住むあの子が、浴室で手首をカミソリで切り……自殺してしまったそうだ。
「………」
突然の事に動揺して、頭がおかしくなりそうだった。どうして急に自殺何て……そんな素振り一切なかったのに。それも、浴室で……
「それと、これが机の上に」
警官に一枚のメモを見せられる。そこには……
「……そんな」
私はすぐに引っ越すことを決めた。この部屋が呪われてるとか、私が呪われてるとかじゃなかったんだ。
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『逃げて。部屋じゃない。剃刀がダメなんだ。あなたは怯えていたから言えなかったけど、私があなたの浴室で見つけた錆びた剃刀……あなたがお風呂で見つけたと持ってきたのと同じだった。部屋を出た時に捨てたはずなのに。きっと私はもうダメだ。だって、今も私を見下ろすように立っている。剃刀を持って』
完




