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「でもお高いんでしょう」増殖中

作者: 雨内学修



『でもお高いんでしょう?』


『それがなんと・・・』


今俺は通販番組を見ている。

なんとなしにテレビをつけた結果やっていたためなんとなく見ている。


『でもお高いんでしょう』


なんて言葉は通販番組ではよく聞くが実生活で聞くことはまずない。


こういう特定の状況下でよく使われる言葉を聞くとモヤモヤする。

非常にモヤモヤする。


なんでこの状況で使われる言葉がテンプレ化してるんだってな。


もっと多種多様な言葉を使ってほしい。

じゃなければ俺が困る。


テンプレが嫌いなんだ。



「と、そんなくだらないことを考えている暇はない。

買い物にいかなければ」


テレビの前から離れ買い物の支度をする。


本当は買い物なんて行きたくないが独り暮らしだから仕方ない。

米さえあれば米を食ってれば買い物にいくこともないがその米もない。


財布を持ち玄関を出る。


スーパーは徒歩五分のところにある。


ふと『でもお高いんでしょう』が頭をよぎった。


俺の頭に悪魔的な発想が―――――


もし俺がセールスの最中に『でもお高いんでしょう』といったらセールスマンはどんな反応をするだろうか。


くくく、これぞ悪魔的発想。


俺はこんなことをたまに考えたりするのだ。


大勢が歩いているところでいきなり大声を出したら皆どんな反応をするのか、自分の親にお袋なんて呼んでみるとかな……


ぞくぞくする。


たまにやってみるのだ。


そのときの反応が面白いこと面白いこと。


くくく、愉悦。



そんなことを考えていたらもうスーパーについたではないか。


どこで『でもお高いんでしょう』と言うか。


考えるだけで胸が踊る。


ワクワクしながら俺はスーパーに入っていく。


そのまま歩いていくとホールに通販番組の様に実演販売を行っていた。

おあつらえ向きに観客は女性客中心であった。

それもそのはず調理器具の実演販売だったからだ。


「ほらこの通り、スパスパ切れる!」


「「おーーー!」」


周りの女性客は歓声を上げている。


よしここでここで言うんだ。


『でもお高いんでしょう?』


あともう少しだ。

もう少しで時がくる。


実演が終わってからが勝負。


実演はまだ終わる気配がない。


どこからか電話帳を取り出して包丁でぶったぎっている。


「ほら、電話帳もスパッとね!」


「「えー!」」


ふふふ、もう少しだ。


「こちらのなんでも切れる包丁を特別価格でお譲りします」


きた!


いつの間にか実演は終わっていた。


つまり値段の御披露目。


俺が『でもお高いんでしょう』を言うタイミングはここだ。


まだ、少し待とう。

じらしてじらしてじらすんだ。









「でもお高いんでしょう?」








俺………じゃない。


なぜリアルでこんなことを言う人がいる。


この『でもお高いんでしょう』は画面のなかだけではないのか。


嘘だろ。


誰だ、言ったのは誰だ。


先を越された。


辺りを見渡す。


今さら見てももう遅く、誰が言ったのかわからない。


ふと違和感に気づく。


『でもお高いんでしょう』


なんていった人がいれば周りは気にしてもいいはずだ。


だが誰も気にしていないようだ。

まるで『でもお高いんでしょう』という言葉が普遍のようになにも気にしていない。





いつの間にか実演販売は終わっていた。


周りの客もいなくなっていた。


ぐるぐると頭が回る。


意識が朦朧としたままスーパーに向かう。


ルーティンの様に決まった動作で買い物かごに半額商品を詰め込んでいく。


半額の商品を品定めする。


朦朧とした頭でもそれくらいのことはする。





「でもお高いんでしょう?」





…………あ?





なんだ………なぜこの場面でその言葉が出てくる?


言った人間を見てみるとどこにでもいそうな女性。


手を顎にあてている。


テンプレ。



ふらふらと野菜売り場へいく。


半額コーナーへ。




これまた同じ様に品定め。




「でもお高いんでしょう?」




………は?


朦朧とした頭で声の主の方へ顔を向ける。


…………



この人がこれを?


どう見てもそういうことを言いそうにない人だ。



訳がわからない。



『でもお高いんでしょう?』



これは空想の産物ではなかったのか?



俺の頭がおかしくなったのか?


もう三回目だぞ。


もしかして『でもお高いんでしょう』は日常的に使われていたが俺が知らなかっただけなのか……



朦朧とした頭でスーパーを逃げるようにあとにする。







『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』

『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』






―――世界は『でもお高いんでしょう?』に支配されていた


なにもかもが『でもお高いんでしょう?』で埋め尽くされている。


地面を踏み歩くと地面からクッションのように『でもお高いんでしょう?』と音がやってくる。


財布からコインを落としてしまった。


チャリン、チャリンではなく


『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』


とコインがなった。



車の走る音も、人々の話し声も、カラスの鳴き声も、自転車のベルの音も、スクリーンに写し出された人の声も、スマホのタップ音も、親とはぐれてしまった子供の鳴き声も、定時を知らせるチャイムも、木々のざわめきも、信号の音も、川の流れる音も、そばをすする音も、缶コーヒーをあけるときの音も、



この世の全ての音が―――



家に帰宅。


扉を開けるとガチャリ―――とは鳴らず


『でもお高いんでしょう?』


と鳴った。


玄関で靴を脱ぐときも

『でもお高いんでしょう?』


床を歩くときのギシギシとなるはずの音も

『でもお高いんでしょう?』



晩飯は買っていた冷凍食品を食べた。


袋を開けると『でもお高いんでしょう?』


電子レンジで温める。


『でもお高いんでしょう?』


と電子レンジから音が。



温め終わった冷凍食品を実食。


『でもお高いんでしょう』の味がする。


食感は


『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』


この冷凍食品の後味は―――


『でもお高いんでしょう?』


の一言で表せる。





風呂に入る


湯船にはつからずシャワーだけだ。


シャワーから出るお湯の音、お湯が床に落ちた音、お湯が体に打ち付けられる音―――


『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』『でもお高いんでしょう?』



歯磨きをするべく洗面台から『でもお高いんでしょう?』をとる。


『でもお高いんでしょう?』に『でもお高いんでしょう?』をつける。


歯を磨く、磨く。


口のなかで『でもお高いんでしょう?』が反響し耳に響いてくる。


風呂上がりに酒を飲むのが日課だ。


酒を飲まないと寝られないのだ。


最も下戸なためそれほど飲めるわけでもなく、度数の低いものしか飲めないが。


酒を飲む。


今日の酒の度数は『でもお高いんでしょう?』だそれほど、高くないが自分的には高い部類だ。


味は・・・・


それほど『でもお高いんでしょう?』って感じだな。


そろそろ眠くなってきたな・・・


『でもお高いんでしょう?』


『でもお高いんでしょう?』


『でもお高いんでしょう?』



◇◇◇◇◇



「でもお高いんでしょう?

よくでもお高いんでしょう?したな」


『でもお高いんでしょう?』は『でもお高いんでしょう』するために『でもお高いんでしょう?』

をした。


『でもお高いんでしょう?』を『でもお高いんでしょう?』して『でもお高いんでしょう?』なため『でもお高いんでしょう?』した。


ふと『でもお高いんでしょう?』から『でもお高いんでしょう?』が『でもお高いんでしょう?』た。

『でもお高いんでしょう?』は『でもお高いんでしょう?』まで『でもお高いんでしょう?』いった。


『でもお高いんでしょう?』は『でもお高いんでしょう?』だったようで『でもお高いんでしょう?』をしつこく『でもお高いんでしょう?』してきた。


『でもお高いんでしょう?』は『でもお高いんでしょう?』なため『でもお高いんでしょう?』を『でもお高いんでしょう?』した。





「でもお高いんでしょう?」





―――世界には『でもお高いんでしょう?』しか残らない



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