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11.一方その頃、追放メンバー全員は浮かれるが、突然の知らせに驚愕し悔しがる その2

11.一方その頃、追放メンバー全員は浮かれるが、突然の知らせに驚愕し悔しがる その2


(前回からの続きです)





「カナデ・ハイネンエルフ侯爵令嬢が国賓級の待遇となることが、全家臣一同の前で宣言されたようです!」


伝令兵が叫びます。


しかも!


「そ、そのうえ! シャルロー・エリゼ侯爵夫人が後見人としてつかれたようです! あのブリュンヒルト大公国の『無敵』とうたわれた次期大将軍候補レン様のご母堂に当たる方です!!」


と続けたのでした。


その知らせに、私としたことが思わず、


「はああああああああああああああああああああああ!?!?!?」


などと絶叫してしまいました。


しかし、同時に、


「なにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!??!?!?」


私だけでなく、皇子やその親友たち全員。追放した一同が一斉に驚愕の声を上げたのです。


おかげで私が普段上げない声を上げたことは気づかれていないようでした。


ですが、ホッとなどしていられません。


あの魔女が!


あの下級貴族が!


私に負けて異国へ連行された負け犬令嬢が!


こともあろうに特別待遇!


しかも、しかも、しかも!


「信じられません! ありえません! あんな女が国賓級の待遇なんて! あの女は我が国からの人質なのにぃ!」


どうしても、普段冷静で可愛らしい素振りが出来ません。


それくらいショッキングな出来事だったのです。


「確かにありえないことだ! あんな女の何を評価したというのか! 何も見るべきものがないあんな女に!」


皇子が叫びます。同時に、他の皆さんも同意するように力強く頷きました。


もちろん私もです。


しかし、伝令兵は淡々と、


「ど、どうやら、詳細ないきさつは分かりかねるのですが、ブリュンヒルト大公国の医者たちですら手をこまねいていたレン侯爵の病気を、カナデ令嬢は一目見ただけで原因を看破し、しかもその場で治癒されたとのことです! 一部では聖女などとも呼ばれているようで……」


「そんなことがあの女にできる訳ないでしょうが!!!!! しかも聖女ですって!!! 笑わせないで!!!!! 聖女はこの私のことよ!!!!! この私こそが聖魔術を扱える選ばれたっ……!! なのにあんな魔女なんかにいいいいい!!!!」


私は思わず机をたたき立ち上がります。


「シ、シルビア?」


し、しまった。


余りに私が普段とは異なる、激高した様子を見せたために、皇子が驚いた表情で私をマジマジと見ていました。


なんてこと!


これも全部カナデ、あの女のせいよ! 悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい……。


で、でも、今は取り繕わないと。


だ、大丈夫よ、シルビア。


け、計画は順調なんだから。


「も、申し訳ありません、皇子。いきなり大声を上げてしまって。皇子が人質として送った女を国賓扱いするなど、余りに無礼な振る舞いです。だからこそ、腹がたったのですわ」


「そ、そうだったのか。は、ははは。びっくりしたぞ、シルビア」


まだ少し怪訝そうな表情はされてますが、何とかごまかしきれそうね。よし、それなら。


「ねえ、皇子様」


私は甘い声を出します。こうすると皇子や他の男は簡単に私の言葉に従ってくれるんです。


ふふふ。


見てなさい、カナデ……。


「ここははっきり抗議の書状を送り付けて、カナデ様の特別待遇を取り消すように言ってください。そうでなければあの魔女を追放した皇子や他の皆さんの面目も丸つぶれではありませんか。それはひいては、この国の威信にも関わりますわ。ね♡」


そう言って皇子にしなだれかかります。


こうやって甘えて言うことを聞かなかった男はいなかったのです。


今回もそのはず。


そのはず……だったのに。


「いや、すまない、シルビア。少しそれは待ってもらえないか」


「は?」


私は耳を疑いました。


しかし、その聞いた言葉に誤りはないことは明白でした。


皇子は悔しそうに歯噛みしながらも、ごまかすように目を宙に逸らしたのです。


「ブリュンヒルト大公国の国力は相当なものだ。人質をどう扱ったか程度のことを指摘すれば、どれほどの報復がなされるか分からん……」


「しかし、それでは皇子の威信が!」


「分かっている! 俺だって悔しい! だが、しょうがないだろうが!」


今度は皇子が机をたたいて立ち上がりました。


「あの国は最近になって領地を広げた成り上がりのくせに、古くからの名門である我が公爵家に敬意を払うことすらしない田舎者どもだ! だが、軍事力、政治力ともに奴らはっ……! くそ! くそ! 成り上がりのくせに! いつも俺の気に障ることをしやがって。よりにもよってあの魔女を国賓だと!」


「ひっ」


私は思わず驚いてしまいます。怒鳴られたからではありません。


私の思い通りにならないことが、現実に起こったことが信じられなかったからです。


「おい! 二人とも落ち着け!」


アレックス様の声がひびきます。


そして、冷静……を装っているルイス様が眼鏡に指をあてながら、


「そうですよ。ええ、確かに追放したはずの魔女が、レン侯爵の病気を快癒に導き、国賓待遇を受けることになったことは大きな誤算です。しかし、そんなものは偶然の産物に違いありません」


「そうだよ! あいつにそんな知識があるわけないじゃん! 多分、偶然病気が治っただけだよ!」


ルイス様の言葉にハイネ様が同意しました。


「ええ、ええ。そうですわね」


私は彼らの言葉で冷静さを取り戻しました。


「そうだな。は、ははは。単なる偶然に過ぎん。これからきっと様々なボロを出す。それで国賓級の待遇などはく奪されるだろうさ!」


その言葉に、みんなホッとするのと同時に、ニヤリと唇を歪めます。


そう、偶然です。偶然。彼女にそんな技能や能力が備わっているわけがないのですから!







「そ、それに。だ、大丈夫ですわ。皆さん。安心してください」


「シルビア?」


突然、場違いな、明るい声を出した私に皇子は怪訝な目を向けました。


「ふふふ。彼女が住む場所がどこか。それを決めたのは私たちでしょう?」


その言葉に、


「ああ! く、くくく! そうだった! そうだったなあ!」


「あの女には相応しい末路、というわけか」


「細工は流々。ふふふ、実に我ら策士らしい」


「自業自得ってやつだよね!!!」


男たちが一斉に喜色を帯びた声を上げたのでした。


ふふ。


ふふふ。


残念でしたわね、カナデ様。


国賓待遇になれたことは運が良かったようですが、その幸運もここまでです。


そして分不相応な聖女などと言う肩書きもすぐに撤回されるでしょう。


その肩書きがふさわしいのは、この私のみ!


対照的に、あなたはやはり、地べたをはいずっているのがお似合いですわ。


うふ。


うふふ。


あはははは!!


私の内心の笑い声はまるで世界にとどろくかのように響くのでした。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「カナデたちは一体どうなるのっ……!」


と思ったら


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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