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第四話

 みんなが留守のすきにヒトの姿に変身した僕は、


「あの……!」


 ペットショップの前でミキちゃんに腕をつかまれた。

 大好きなお肉を干したやつを探しに来たのに……欲しい物って、なかなか手に入らない。


「このあいだはありがとうございました!」


 無事に逃げ出した飼い猫は見つかった、いっしょに探してくれてありがとう……と、言いながらミキちゃんは何度もおじぎした。

 困ったな。逃げ出した飼い猫も、いっしょに探したヒトも、どっちも僕なんだけど。


 でも――。


「お礼をさせてください!」


 そう言ってミキちゃんがピザ屋さんを指さして言うんだから仕方ない。

 チーズのいいにおいが待ってる。行かなくちゃ。


 ***


 おいしいピザに舌なめずりしながら、僕は君と色んな話をした。


 名前を聞かれたとき、〝ユキ〟と答えてしまったのは失敗だった。

 君は気にした様子もなく、


「うちの猫と同じ名前だ!」


 と、言っていたけれど。

 名字は? って聞かれて、


「ユキって呼び捨てでいいよ」


 と、あわてて誤魔化したけど……たぶん、これも失敗。


「じゃあ、私のこともミキって呼び捨てでいいよ」


 にっこりと笑う君の言葉に、わかったとうなずいてしまったのも大失敗。


 僕はユキちゃんで、君はミキちゃん。

 ずっと、そのままでいるべきだったんだ。


 ***


 ピザを食べ終えたあと。

 食後のコーヒーを飲んでいたミキは、食後のミルクを飲んでいた僕に言った。


「ねえ、ユキ。連絡先、教えてよ」


 スマホ……は、知ってる。でも、そんなの持ってるかな?

 あるかな? ないよね。

 ダメ元でズボンのポケットを叩いてみたら……あった。あ、財布も入ってる。

 猫の悪魔は僕が思った以上に太っ腹だ。


 ミキにスマホの使い方を教えてもらって、ミキの連絡先を登録した。


「ユキってば、おじいちゃん? 本当は何才なの?」


 スマホの操作に四苦八苦している僕の手元をのぞきこんで、ミキは肩を震わせて笑っていた。

 そんなに笑わなくてもいいじゃない。そう思ったけど楽しそうだからいいや。


 ミキの笑顔につられて僕も笑顔になった。


 そう言えば、僕はいくつくらいに見えるんだろう。

 バイトに行くというミキと駅前でバイバイして、僕はスマホのカメラで自分を撮ってみた。カメラは怖くない。

 だって毎日のようにミキからモデルを頼まれているから。


 写真を確認してみたら黒髪のやせっぽちの男が写ってた。

 ミキと同い年くらいかな。それなら大学生だ。

 ミキと並んで歩くとどんな風に見えるのかな。少なくとも飼い主と飼い猫には見えないよね。


 写真の中の〝ヒトの僕〟を見て、僕はにまにました。


 と、――。


「ぶにゃ……!」


 突然、スマホがぶるぶると震え出した。

 びっくりして落としちゃった。ぶるぶるしなくなったのを確認して、恐る恐る拾い上げる。


 ミキからのメッセージが届いたみたいだ。

 大丈夫、メッセージの開き方は教わった。ヒトの文字も読める。ちょっと……だいぶ時間はかかるけど。


 四苦八苦しながらメッセージを開いて、四苦八苦しながら解読する。

 つまり、こういうこと。


 ――また遊ぼう。今週末の花火大会とか、どう?

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