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九話 にゃあ。




【聖約】を結んだ翌日。


 俺、アリア、リナリーはヘイゲンの街で冒険者ギルドにやってきていた。


『なんだか……寂れているな』


『そ、そうですね』


 ヘイゲンの街の冒険者ギルドは少し寂れた木造の建物で思わずこぼれた俺の言葉に、アリアが同意するように頷いてみせた。


『ヘイゲンの街周辺は冒険者的にみるとお金になる魔物が少ないので、あまり人気がないのです』


 アリアとは別の落ち着いた女性の声が頭の中に響いた。


 この声はアリアのメイドであるリナリーの声だ。


 魔導具の【ハーネットの指輪】を使って、今回はリナリーを含めて三人で意志疎通させていた。


 ちゃんとリナリーより謝罪を受け取ったが……正直、彼女の声を聴くと昨日の死闘で殺されそうになったことを思い出して、ビックっとなってしまう。


『リナリーはヘイゲンの街の冒険者ギルドには知り合いが居たりするんですか?』


『私が冒険者を引退してからだいぶ経っていて、それは分からないですね』


 アリアの問いかけにリナリーは首を傾げながら、ギルドの扉を開き入っていく。


 リナリーに続いて冒険者ギルドの中に入ると……比較的若く見える覇気のない数人の冒険者が目に付いた。


 彼らを横目にギルド内を進んでいき受付カウンターへ向かった。


「%&#%#$&%#$&#?」


「%#%#%#%。%&$%&$&$&」


 俺には何を話しているのか分からないが。


 リナリーが受付カウンターに居たお姉さんになんかしらのカードを見せた。


 すると、お姉さんは目を大きく開いて驚きの声を上げる。


 さらに、その声を聞いたギルドのお偉いさんみたいな人まで出てきた騒ぎになった。


 要件は黒い狼のことを報告するだけだったのだが、予想以上に時間が取られてしまったのだった。


 俺に言葉は分からないのでどのようなやり取りがあったかは詳しくは分からないので割愛する。


 ただ、ギルドの職員やお偉いさんもリナリーの下手にでて、どうにか引き留めようとしていたのは分かった。




 冒険者ギルドで少し足止めされて遅れたが、アリアの住んでいる家があるという王都ベルクートへと向かう馬車に乗っていた。


 この世界では魔法があるのに移動は馬車が主流であるようだ。


 八人ほど乗れる大きな馬車の荷台にはアリアやリナリー以外にも二人ほど居て、計四人ほど乗っていた。


 ちなみに俺はアリアの膝の上に乗せられ。そして、アリアに撫でまわされていた。


『ふふ、モフモフです』


『……』


 アリア曰くなんでも毛並がきれいで柔らかく気持ちいいんだとか?


 それで撫でられ始めてからかれこれ、三十分くらい経つんだけど。


 全身がもふ毛に覆われた俺からしたらもさもさして少し暑く煩わしく感じてしまうのだけど。


 まぁ……撫でられるのは嫌な気分ではない。


 前世ではずっと怖がられ恐れられていた俺としては、なんだか少し嬉しかった。


 ……すごく恥ずかしいんだけどね


 ちなみに、どうなっているのか俺自身よく分からないのだが、アリアに撫でてもらっていると、喉が自動でゴロゴロと鳴る。


 人間であった時に俺は喉をゴロゴロと鳴らしたことはないのでとても不思議な感覚だ。


 これは猫独特の器官なのだろうか?


『アリア様……そろそろ』


『ふふ、そうですね』


『は、はい、私にも』


 アリアは俺の上半身をぐいっと持ち上げて、リナリーの膝の上に乗せる。


 すると、リナリーは表情を破顔させて、俺のもふ毛を撫でてきた。


 うん、やっぱり撫でられるのは気持ちいいんだが……リナリーに撫でられるとやはり俺の体に緊張が走る。


『にゃ……にゃあ……にゃあ……ふふふ』


 俺もアリアも一切触れないでいるのだけど。


 俺とアリアに聞こえていると自覚しているのだろうか?


 俺のもふ毛を撫でる時、リナリーはなぜかにゃあにゃあと言ってくる。


 リナリーはかわいい動物は好きだそうだが、隠し切れない覇気で逃げられ触れなかった。


 つまり、今まで触れなかった分の反動的なものが漏れ出しているのだろうか?


 まぁ……俺も前世で動物に好かれなかったので気持ちはわかるのだけど。


『では、そろそろ、ノヴァの文字の勉強を始めましょうか』


 アリアは鞄から手帳のような本を取り出して見せてくれた。


 その本を開いて、白紙のページに鉛筆を取り出すとスラスラと何か書き始めた。


『まずは、普段に使用する言葉の単語から勉強していきましょうか』


『うん、そうだな』


 俺はリナリーに撫でられながら、顔をアリアの持っている本へと向けた。

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