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七話 戦い。

 俺は空地に追い詰められて、リナリーと十メートルくらいの距離を開けて、互いに見合っていた。


 うわぁ……やばいメイドさんだなぁ。


 戦いの場で見合ってこそわかる相手……リナリーの戦闘能力の高さにため息しか出ないんだけど!


 彼女の強さはそこら辺にいた不良達とは訳が違う。


 女だからと言って手加減なんて考えられないレベルである。


 しかし、彼女から逃げるために動かしていると、だいぶこの体にも慣れてきた。


 んーリナリーと戦うに当たり、まずは不意を衝いて攻めるしかないだろ。


 そして、考えついたのは黒い狼を倒すことになった炎だ。


 正直、なんで炎が出たのかまだわかっていないが、アレを引き出せれば……ワンチャンあるかもしれない。


 あの炎を人間相手に危険かもしれないが……目の前の強すぎるメイドさん……リナリーを前にしてやはり手加減なんて言えない。


「#%$%$%%$」


 リナリーは何か言って、走り出して一気に間合いを詰めてくる。


 だから、何言っているかわからないって!


 迫ってくるリナリーに対して心の中で愚痴を零しながら、俺もリナリーに向かい走っていく。


 距離を詰める俺がリナリーの間合いに入りそうになった瞬間、俺は右前足で地面を思いっきり蹴って砂埃を巻き上げる。


 巻き上がった砂埃がリナリーの視界を遮った。


 リナリーは立ち止まってその砂埃を短剣で振り払う。


 対して俺は息を殺して砂埃に紛れるように、リナリーとの距離を詰める。


 そして、爪を立てて飛びかかった。


 ただ、リナリーは俺が飛びかかった時にできた砂埃の揺らぎを見逃さず、俺の爪を二本の短剣で受けたのだった。


「#$$$%%っ! 【$%%$$】」


 くそ……隙をつけることができたと思ったのに……受けられた。


 そして、受けられたと俺が頭の中で思った瞬間、リナリーは何か呟く。


 すると、彼女の腕力が急激に増幅して俺は簡単に弾き返されてしまう。


 俺の今の体が人間の一歳の子供くらいの大きさしかなく、軽いのもあるのだろうが。


 それにしても……おかしい。


 そうだ……さっきから何度か短剣を振るう力が強くなったり、走る速度が速くなったりすることがあった。


 もしかして、何か魔法の類のものなのだろうか?


 厄介な……。


 ただ、これは嬉しい誤算か、予想以上に俺の体が早く動ける。


 それに加えて反射神経などの反応も良くなっているようだった。


 ここまで、動けて相手の動きが見えるなら、俺にもやれることはある。


「&&&%%&&【$%&%】」


 リナリーが何やら呟いた後、今までには無かった速度で走り出し、一気に俺との間合いを詰めてくる。


 そして、俺に対して右手の短剣を振るってきた。軽くジャンプし躱して……リナリーの視界から消えた。


 リナリーは次に左手の短剣を振るおうとしたようだが、突然俺の姿が消えたことで目を見開いて驚きの表情となった。


 はぁ……うまくいってよかったぁ。


 今の半分賭けだったわ。


 この時、俺がどこにいたかというと、最初に振るわれたリナリーの右手に持っていた短剣の刀身の上に乗っていた。


 そして、リナリーに飛びかかり、爪を立てた右前足を振り下ろした。


 俺の爪が届く寸前、リナリーは咄嗟に左手に握っていた短剣を振り上げた。


 ただ、俺もリナリーには攻撃を受けられることを予想していた。


 俺は体を捻って左後ろ足でリナリーの肩口のあたりに思いっきり蹴りを入れる。


 その蹴りが入るとリナリーは右に軽く体を飛ばした。


「っ! $%&%&%!」


 リナリーがすごい形相で俺を睨む。


 こわ……。


 まだ、本気ではなかった……?


 いや、これは戦闘のスイッチが切り替わった?


 たまにいるんだよな。


 戦闘が長引けば長引くだけ、自然とスイッチが入っていって危なくなっていく奴がいるんだよな。


 リナリーもそのタイプか……。


 本当に厄介な……。




 俺とリナリーは三十分ほど戦いが続いていた。


 俺が奇手きしゅを絡めてリナリーに何とか食らいついている感じで、戦闘が進んでいた。


 ただ、徐々に動きが読まれだしているような気がする。


 そんな危機感を俺が感じ始めた時、不意にリナリーが俺から離れて、間合いを取った。


 そして、両手に握る短剣を逆手に握り直して、今日初めて見る右腕を前に突き出し、左手を後ろにやる剣の構えを取る。


 俺はリナリーが何かやってくること察した。


 なんだ? 空気が……凍り付くように冷たく変わった。


 まだ強くなるとかやめてくれよ?


 こっちはもう限界が近いんだけどねぇ。


 ……これはあの黒い狼を焼いた炎しかないか。


 リナリーは剣の構えを取ると、ふーっと長く息を吐いて、目を瞑ってゆっくりと口を開いた。


「#$%&%%$%。#%%&&%【$%%$$】【$%&&%】……『%$%%』」


 あぁ……これはほんとにやばいな。


 リナリーが何かつぶやいた瞬間……リナリーは忽然と姿を消した。


 ゾク……。


 俺は寒気が走って……咄嗟に左後方に飛び上がる。


 俺がいた場所にはドンっと地響きのような音とともに小さなクレーターと右手に握った短剣を振るったリナリーの姿が現した。


 奇跡に近い運の良さで、人間の稼働限界を軽く超えたリナリーの一撃を左後方に飛び上がることで回避した。


 しかし、次いでリナリーの左手に握られていた短剣が迫ってくる。


 その迫ってくる短剣を傷は負ったものの、なんとか先爪で受けて致命傷から避けた。


 それでも、短剣の勢いで後方十メートルくらいを飛ばされ、地面に爪を突き立てて停止した。


 リナリーはまた短剣を構えなおし、小さな砂埃を上げて姿を消した。


 死が目の前にある中で俺は目を瞑って深く深く集中していく。


 思い出せ……あの……体の内から熱く燃えるような感覚を。


 俺の中にくすぶる熱が大きくなっていくように感じる……熱い……熱い。


 ボワァ……っと小さく音が聞こえて、目を開けると視界全体が炎で埋め尽くされた。


 俺の全身から炎が溢れ出していた。


 俺は先ほどリナリーの一撃を躱したときと同様に、ゾクっと寒気がした。


 ただ、今回は躱すのではなく寒気が走った方へ前方に飛び上がる。


 リナリーの神速と俺の炎……どちらが強いのだろうか?


 俺とリナリーの互いの攻撃が相手に届こうとした時であった。


「$#%%$%&%&!」


 いつの間にか空地に姿を現したアリアから声が上がった。


 リナリーの短剣が俺の首もとで止まった。


 俺も何を言っているかわからなかったが、俺も止まった。


 ただ炎を止めることはできなかったが、軌道寸前のところで変えて、リナリーの背後の地面を盛大に燃やした。


 そして、俺とリナリーは止まった状態で、そのまま視線をアリアの方に視線を向けた。


「$%&&%%&&&」


「$&%&%&&&&」


「&、&%&%%&%%」


 アリアがリナリーに近づいて、二人で話し始める。


 まぁ……俺には何を話ししているのか分からないから待っていたのだが。


 二人の会話が終わると、リナリーが俺の前にやってきた。


 そして、バッと頭を下げてきた。


「%#$%#$%#$%」


 リナリーの突然の行動に俺は何事かとびくっと体を震わせた。


 何事? え、えっと、どうやら謝られているのか?


 対応に困っていた俺に、アリアが助け舟を出してくれて一旦俺が目覚めた宿屋の部屋に戻ることになった。

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