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三話 猫。

 ◆・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・◆




 俺はゲームセンターの跡地で火に巻かれて激痛で気を失った。


 そんな俺であるが目を覚ますと……。


 どこかわからない洞窟のような場所にいた。


 更に巨大な猫にペロペロと顔や体を舐められる。


 更に更に視線を自身の体へと向けると白いもふ毛に覆われていた。


 いや、訳がわからないよね? ふつう取り乱すよね?


 まぁ、だけど目が開けられるようになって一日が経ち、ようやく心の準備ができたのでいろいろ考えなくてはならないことがあった。


 俺は体を観察して……おそらく。


 鏡で見ていないのでまだ本当に確信は持てない。


 もちろん本当は認めたくないんだが、白銀色のもふ毛に包まれた猫になっているようなのだ。


 おそらく定期的に俺の顔や体をペロペロと舐めてくる巨大な猫は母親であるのだと思う。


 そして、俺の他に居た俺と同じくらいの大きさの猫達はおそらく兄弟ということなのだろう。


 あ……ちなみに一つだけ語弊があるかもしれない。


 母親が巨大な猫というのは微妙に違った。


 俺自身が子猫となって小さくなっているため、巨大な猫に見えたのだが、周りの物と対比して見ると動物園とかにいるトラと同じくらいだろう。


 猫としてはかなり大きいが、巨大という表現は違ったかも知れない。


 さて、俺には現状を理解するために考えなくてはいけない問題がいくつかあった。


 まずは、どうして猫になっているのかについてだろ。


 これは転生したということになるのだろうか?


 だとすると、前世の記憶を持って転生したと言うことだろ。


 そもそも俺は死んだんだよな……?


 これが夢だったら嬉しいのだけど。


 ただ、おそらくこの体で何日も過ごしていて夢オチの可能性は低いのだろうなぁ。


 俺は廃墟となったゲームセンターの跡地で火に巻かれて……死んだ?


 死んだときのことを一瞬思い出そうとして。


 俺の背筋がざわざわと寒気が走る。


 そして、手が……足が……プルプルと小刻みに震えているのがわかる。


 俺の体に心に深く深く刻まれるように……。


 あの熱さ。


 あの激痛。


 死に際の痛みは手に取るように今でも思い出させる。


 ……俺は死んだ。


 俺の両親を含めた家族と言える人達……あの人も、みんな……大切な人は死んでいる。


 だから、死んだと言っても悲しく……ないわけないか……。


 目付きが悪い俺にも少ないが友達はいたんだ。


 はぁ……今はいろいろ考えないようにしようか。


 テンションが下がるだけだ。


 話を戻そう。


 それで死んだ俺は現在猫の姿で意識を取り戻した訳だ。


 それで、今……すごく切羽詰まった大問題を抱えていた。


 それは……。


 グー。


 俺のお腹が小さくなった。


 うん。お腹が空いて、痛いレベル。


 えっと、ここはどこかわからない洞窟、当然ながらここには牛丼やコンビニ、スーパーも見当たらない。


 まぁ……もし、あったとしても俺は猫になったので買い物をすることはできない。


 うん、俺は猫になったのだ。


 正確には……子供の猫になったのだ。


 子供の猫になった俺には……つまり全く力がない。


 じゃ……俺のご飯は?


 もうほとんどの人は分かると思うのだが……親猫のおっぱいであるのだろう。


 実際に周りの兄弟と思われる猫達が親猫のおっぱいのミルクを飲んでいる。


 おそらく、目が開けられる前は飲んでいたんだと思う。


 その時は目が開かなかったから意識することはなかった。


 しかし、目が開くようになって親猫のおっぱいからミルクを飲むと言うのはハードルが高かった。


 今まで恥ずかしくて空腹を我慢していた。


 しかし、もう我慢できないくらいの空腹感が襲っている。


 俺はのどをゴクンと鳴らして、意を決して親猫に這うようにして近づいていく。


 その時だった。


 ダン! ドン! ドドン!


 洞窟の外が騒がしくなる。


 親猫も外の音を敏感に察して、起き上がると……俺達の住処と思われた洞窟の出口から顔を出す。


 そして、そのまま外に飛び出した。


 ……何かあったのだろうか?


 外の様子が気になった俺は空腹を抱えたまま起き上がった。


 そして、洞窟の出口に向けてヨタヨタと拙い足取りで歩き出す。


 うぐっ、四足歩行って……歩きにくい。


 かと言って二足歩行には筋力が足りないのと猫の身体の作り的に難しいよう……。


 う、思ったように身体が動かないのが、腹立たしい。


◆・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・◆

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