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城門も壁に漏れず、古びて今にも壊れそうな様相を放っている。蔦が絡まり、大きさはそのままに木でできたそれはあちこちがひび割れ、元の白いペンキは剥げて下の茶色の地が斑に見えてしまっている。片方の扉などは二つ付いた、金でできた蝶番の上の方が外枠の木ごと取れてしまっており、不格好に傾いている。
ドアノブや両側に一つずつ付いたステンドグラスの窓枠も金で出来ている。それは昔はきっと地の白と金の色合いが美しい扉だったに違いない。しかし、寂れてしまえば金の誂えもこの場には過分な装飾でしか無い。遥か昔に打ち捨てられたこの城のそれらを拝借する事を止める者はこの場にはいない。
男は、トレジャーハンターだった。
良い言い方をするとそう言えるが、要は誰も住まなくなった今回のような城や古びた遺跡、忘れ去られた墓場等に行き、金目の物を盗ってくる事を職にしていた。当然ながら余り真っ当な仕事では無い上に気性の荒い者が多い事から、他人からは『墓荒らし』『遺跡泥棒』等と呼ばれ、嫌がられる事もしばしばだ。
男はその気性の荒い者達よりは落ち着いた性格をしていたが、仕事自体やる事は同じ。その城や遺跡や墓場の主がいない事を理由に、裁かれない盗みをする。
この金は帰りに持って行こう。そんな事を考えながら、蝶番が壊れていない右側の扉を引いて城の中に入って行った。