人造人間を作った理由【カリナ過去編】
「おー!来よったな貞子!どんだけ仕事しとんねん、アホみたいに仕事しとったら堅物がまーた堅物なってまうやないか」
「相変わらずうっせえな。朝っぱらから酒ばっか飲んで元気じゃねえかよ」
図書館について開口一番片手に酒瓶を持った朔真がカリナを出迎えた。
よく考えれば、寿命の無さに忘れていたが、研究を始めてからほとんど他の四賢者とは会っていない気がする。このやりとりも懐かしいな。なんて思ってるカリナに、思い出したように朔真が声をかけた。
「うるさいの俺だけちゃうで、そろそろ来るんとちゃうかな…あ。来よった。後ろ見てみ」
「後ろ?」
若干嫌な予感がしつつカリナが振り返ると、ラグビー選手も驚きなほどのタックルの体制でカリナに突っ込んできた女性がいる。
カリナに抱き着いたかと思えばその腕にはどんどん力が込められていき、次第にカリナの骨からはミシミシという鳴ってはならない音が鳴り始めていた。
「あああああぁぁぁぁぁあああ!!? 折れる!折れるから!やめろって!!」
「カリナだああぁぁぁぁあああ!!」
一瞬だけ命の危険を感じたものの、しばらく放っておいたのは自分のほうだから何も言えない。
というか、何か言いたくても痛みで声がうまく発せない。
殺人的な抱き着きをかましてくる彼女は、他の誰でもない四賢者アリアであった。
「…あかんアリア!カリナの顔が血色悪くなっとる!!」
「え?」
大戦で死んでいった仲間が「駄目だ!こっちに来るんじゃねえ!」って呼びかけられた気がしたが、おそらく気のせいだろう。
長時間移動の末、殺人マッサージを受けたカリナは少し息を荒くしながら「…よう」と二人に返した。
それから三人は近況報告もかねて他愛もない話も交えながら夜が暮れるまで話していた。
「そういやアリア。そっちのほうはどうだ。俺の方はあと10年もすれば形にできるかって感じなんだが」
「あ、そうなんだ。私のほうももう少しって感じかな。ただやっぱりまだ上手くできないんだよね」
お互いの進捗はどうやら同じくらいらしい、競争していたわけではないが、それを聞いて「やっぱ同じくらいになるよな」と納得したようにうなずいた。
四賢者といえど得手不得手はもちろんある。だがそれは同一の分野に至っての話であり、お互い得意な分野を用いて人造人間開発を進めていったら、同じくらいになるだろうとカリナは予測していたが、どうやらそれが当たったらしい。
「まあ、俺にはこんなもの作っちまう部下がいて同じ進捗だからな。アリアにはやっぱり勝てねえか」
「お、すごいじゃんこれ。全然気にしてなかったけど、カリナから漏れてた魔力が全然感じなかったのこのおかげなんだね」
カリナが外して見せた髪飾りに、アリアは感銘を受けたようにそれを見る。後ろから覗き込んでた朔真も「ほー。俺でもこんなん作るの大変やで」なんて感心したようにそれを見ていた。
「カリナ、なんか変わったね。クロムと喧嘩した時とは別人みたい」
「せやな。なんか気持ち悪いわ。昔の不愛想なホラー御用達貞子ちゃんが懐かしいで」
とりあえず朔真に一発ボディブローを入れてため息をつく。
「なんも変わってねえと思うんだけどな。最近部下からも同じこと言われてよ」
「うん、なんか丸くなった。とんがってないって感じかな?」
「…なんでぶったねん」
腹を押さえてうずくまる朔真を横目で見つつ。そんなもんかね、と髪飾りを見ながらカリナは少し考えた。
「そんなに俺とんがってたか?」
「うん、私たち平気だけど、戦争のときみんなから何て言われてたか知ってる?」
「いや、知らねえ」
「氷の処刑人形とか、機械人間とか言われてたよ。最後の戦争のときにみんなと戦ってからは少し言い方変わって、デレがないツンデレとか、絶対氷土とかってなってたけど」
「どれも全然褒め言葉じゃねえな。すげえ扱いじゃねえか」
「…ぶったことに触れろや」
それに比べたら今全然人間っぽくなったよ、と言われて少しカリナは嬉しくなった。
オルフェインを入れた影響がこんなにいい影響を生んでるとは思わなかったからだ。
「あいつのおかげかな」
小さく呟いてカリナは席を立つ。
「お、もう帰ってまうんか?」
「ああ、休みもらったっっても、あっちでやらなきゃなんねえこともあるからよ」
荷物をまとめて図書館を後にしようとするカリナに後ろからアリアが声をかける。
「ねえ、あんまり無理しないでね」
「せやせや。俺達もついとるからな。暇んなったらいつでも顔出しに来てええで」
酒でも一緒に飲もうや。と朔真が言えば、気が向いたらな。とカリナが返した。
そしてカリナは図書館を後にして研究所へと帰る。夏の大陸名物の菓子も買って、あいつらこれで喜ぶかね。と思いながら、帰路につくカリナの足も軽いものだった。