人造人間を作った理由【カリナ過去編】
こに突然入ってきた横槍がオルフェインだった。最初は隣の研究員が研究成果を取りに来たのかと思ったが、調べてみたところそうでもない。
むしろ、オルフェインはその研究施設からないがしろな扱いをされており、半分窓際部署のような所でひたすらにプログラムの入力をさせられているという結果も知れた。
信用はならないが、信用してみるか。
最初はただのカリナの気まぐれだった。来てもいいぞ、と言った時の彼女の嬉しそうな顔は今でも忘れることができない。
それに、あとから聞いた話、彼女がこの研究所に出入りしているのは彼女が勤めている研究施設の誰も知らないらしい。一体どうやって抜け出したのかは疑問であるが。
そんなこんなで彼女は気が付けば人造人間開発計画にも加わることになっていた。
彼女の技術はなぜ窓際部署に行かされていたのかというほど確かなもので、カリナが躓いていた箇所も彼女の機転をきかせた発想により解決することがとても多かった。
とんとん拍子に進んでいく開発に、カリナは少し嬉しくなっていた。
それから数年が過ぎたある夜の事だった。
就寝時、そろそろ布団に入ろうかと支度を整えていたカリナの元に、突然オルフェインがやってきた。
「…遅い時間にごめんね」
いつものような元気は全くない。今にも死にそうな顔をしていた彼女を見たカリナは、何があったのかと彼女に訪ねる。
「研究所にさ、出入りしてたことさ、職場にバレちゃって」
よく見れば彼女の体にはアザがいくつもあった。今にも泣きだしそうな顔。腫れている体。
それを見たカリナの心に怒りと後悔が押し寄せる。
「…悪い、さっさと来るなっていえばよかったな。俺も甘えすぎてたわ」
苦虫を嚙み潰したようなその顔。オルフェインがそれを見たのは初めてだったかもしれない。
「違う違う!カリナのせいじゃないって! カリナのせいじゃなくて、私がトロくて、ダメダメだったから」
慌てて手を振り、否定したその言葉の後、長い長い沈黙が部屋一帯を支配した。
「…研究のことはバラシてないよ。その代わりクビになっちゃったけど」
「お前…」
「だってさ、カリナがずーっと大事に頑張っている研究でしょ? それをあんな奴らにばらすわけないじゃん。この研究はさ、カリナが形にしないとダメだし、カリナじゃなきゃやれないし」
また沈黙。数分ほど二人は何も話さずただただうつむいていた。
「お前、俺の研究所に来い。給料待遇は保証してやるし、寝るとこも研究所の寮を使えばいい」
これしか俺にできることはねえから、と少しだけカリナが笑って彼女に手を差し延ばす。
「…いいの?」
「おう、ただ散々こき使ってやるから覚悟しとけよ。あとから入らなきゃよかったなんて認めねえからな」
カリナの言葉に彼女は大粒の涙を流す。とめどない、決壊したように泣きわめく彼女に、カリナは小さくため息をつけばタオルを差し出した。
「ありがと…ありがとう…ごめんね」
「ばーか、謝るくらいならさっさと寝て明日また弁当でも作ってこい」
「…へへ、私の弁当なしじゃカリナ何食べてるかわかんないもんね」
「うっせえ、ばーか」
研究がうまくいかず暗い雰囲気が多かった研究所に、一筋の光が差した瞬間だった。