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二度寝勇者は、じっちゃんの遺産で新世界の神になりスライムの逆鱗に触れる!~なろう向けエディション~

作者: 復活系妖魔

*「スライムが統治する世界野で異変があったらしい」

*「何、奴はチートな能力を持つ時代の申し子ぞ」

*「出兵の準備を、偵察を開始するのだ」


無限遠方に膨れる世界で噂が飛び交う。好奇心が正体を露に異世界モノの始まりを予見した。

世界の三分の二はスライムに支配されていた。スライムとはすべてを飲み込み消化し吸収する。万物の頂点に君臨する絶対生物である。それは長きに渡る営みの破壊者だった。しかし、スライムによる進攻の歴史長く。台頭していなかった記憶は消滅してしまっていた。無尽蔵の貪欲さで世界は支配されていた。


「ドラゴンは凄かったんじゃぞ」

「じっちゃん。その話何度も聞いたよ」

少年に擬態したドラゴンは白髭を蓄えたドラゴンの話をうんざりしつつ聞いていた。

「じっちゃんには悪いけどドラゴンは変装をせずに地上を歩けない日陰者だよ」

少年の言葉は現実を切り抜いていた。ドラゴンは成長が早く、良質な肉のとれる生物として乱獲され、家畜として飼い慣らされるまでになった惨めな生き物だった。少年の親も狩人に捕まりどこかで飼育されている有様なのだ。難を逃れた二匹とて殺傷性の高い刃物に悉くドラゴン適性が付加された世界では怯える以外の生活は出来ないのであった。

「それは違うぞ、誰よりも強く誇り高い生き物。それがドラゴンなのじゃ」

孫の言葉に傷つき涙を零す白髭。そのよわよわしい風体が少年を余計惨めにさせるのだった。

「だったら、だったら証明してみせてよ。お父さんもお母さんも帰って来ないじゃない!」

存在を隠す結界を施された洞窟にはドラゴンのすすり泣きが今日も反響していた。


弱肉強食の世界で、スライムとドラゴンの差は明らかだった。どんな属性にも耐性を持っていて、無限に近い生命力を持つスライムは皆の恐怖の対象だった。出遭えば死ぬ。故に誰もが存在を避け生き延びれる土地でひっそりと暮らしていたのだった。その暮らしの中で文字通り食い物にされているのがドラゴンなのだ。

「またドラゴンシチューかよ、たまには別の肉を食いたいぜ」

「何言ってんだい。スライム様の食べ物を私たちが食べるなんて寝言は寝ていいな」

食堂で人間の親子がそんな話をしている。それはありふれた日常だった。

「あら、肉は嫌いですか?」

剣を脇に刺した冒険者にウェイトレスが問いかける。

「いや、ベジタリアンなだけですよ」

「そうですか。この地域にはとても優れた牧場がありまして、看板料理だったばっかりに失礼しました」

オーダーの際に確認を怠った非を詫びられると、慌てて恐縮した振る舞いをし冒険者は宿に上がっていった。

『あらあら、犯行声明くらい出してもよかったのに』

女の声がする。冒険者は「フン」と鼻を鳴らして無視を決め込んで、床にはいる。


「今日は随分頑張って来たようね」

先程の物騒な言葉の張本人が現れる。

「スライムの生息域調査ついでに魔物の巣を見つけただけさ」

「それでここの人たちの当面の食料は確保出来たんでしょ」

「ああ」

頷いた冒険者は明日の予定に意識を向ける。

「律儀なんだから、やりたい事だけやればいいのに」

そんな事ではスライムと変わらない。男が常に意識する美徳を知りつつも女は軽口を叩いていた。

「最高の回復を掛けてあげるわ」

――冒険者(ドラゴン)の精神力が全回復した。


次の日。街の食糧庫から火の手が上がっていた。牧場にも異変が起こっていたようなのだが、交錯する情報に埋もれ真実は判らぬ状況だった。

「逃げたのか」「殺したのか」そんな怒声が響き渡っていた。


「其方がドラゴンを討伐した冒険者か」

領主の謁見を受けているのはベジタリアンの冒険者だった。

「急な事でしたので、血肉残さず葬り去る技に頼らざる得ませんでした」

礼に則り片膝をつき、頭を垂れつつ事情を説く。その顔には笑みが含まれていた。

観衆は金に汚い冒険者を白い目で視ている。

「報酬なのだが、今回は被害甚大な故に入用も多く、勇者の称号で納得いただきたい」

言い終わりは消え入るような言葉だったのだが、勇者は世界の伝達される称号である。その肩書を持つだけで、技やスペルの習得に制限がなくなるのだ。

「ぜひとも、世界の為に精進しなされ」

被害を被った農場主や商人達が嫌らしい笑みを浮かべていた。しかし、新米勇者はその言葉や態度を気に止めず屋敷を後にしたのだった。


スライムが支配した世界を民衆は受け入れていた。領主連盟はそんな世界に勇者を派遣し、強き人類が世界を取り戻すという希望を描いていた。それは夢物語のような話であり、一説には力を有する者を生贄にスライムから領地を守っているという噂まである成果の乏しい行いだった。


……こんな事を書いていると、小説家仲間から、新人賞を開催しても出版物を流通させる本棚を持たない無責任な出版社みたいだな。なんて指摘を受けてしまう


実際、領主連合は必要なステップを見つけられていないのであった。勇者にすべてを任せている。


それは利益にあざとい出版社が求める。「話題性を作って読者の関心を焚き付け発行部数の底上げをする。そんなオールマイティな才能」のようなものを個人に欲するのに似た振る舞いだった。


ベジタリアンの勇者はその点において有能だった。様々なスキルの習得を熟し、技を磨いて世界の真理を解いていった。その活躍は止まるところを知らなかった。無敵と思しき快進撃を続けていた。


順調な冒険はじっちゃんの昔話通りだった。世界にある祠を巡っていればスキルが身につく。道中で敵を倒していれば技術値が溜まり、様々な領地の訓練場で技を伝授されてきた。


……途中で裏切りに遭いスライム除けに崖から落とされた事もあったし、勇者という肩書で救えなかった災害をゴロツキのような冒険者に揶揄われる仕打ちまで受けていた。詳しくは、「いじめや暴力的表現を擁護する行為」に抵触する為、記載する事は叶わないが、シンプルなサクセスストーリーは、多くの困難と決別を繰り返す日々を経て、築き上げられていた。もう一度注釈を入れるが、それらを美談にするとストレス過多な社会を肯定していると捉えかねないので、バッサリと割愛する事とする。


人の目の当たらぬ場所でドラゴンとして宙を舞う。スライムの危機から逃げ延びる勇者の強みはドラゴンであった事と、じっちゃんの入れ知恵と、もう一つ。

『精神力足りてる?』

「回復を願おうか」

勇者を支える女の存在だった。女は夢魔と呼ばれる生き物だった。夢の中でどんな事も叶えてしまう。

――勇者の精神力が全回復しました。ステータスの回復がコールされる。

「ふう、お前の能力は最高だな」

一瞬の仮眠で擦れ切った精神を癒された勇者はいつものようにスペルの詠唱を始める。

「我、奇跡を以て治癒を欲す。おっぱい、おっぱい、おっぱい」

――スキル奇跡級詠唱により精神力使い果たしました。勇者の気力が全回復しました。勇者の体力が全回復しました。

ムクムクと元気を取り戻す勇者。漲る気力によっていつでも技を繰り出せる状態になる。それは全気力と引き換えの必殺技すら放てる超回復だった。

『もう一回、精神回復しましょうね』

勇者はいつも二度寝により万全なコンディションを得るのだった。

『ふふふ』


ベジタリアンの勇者の噂は全世界に伝わっていた。一説にはすべての必殺技を会得し、すべての奇跡を詠唱できる怪物と称されるほどだった。しかし、同時に孤高の存在として、一人旅を続けているという話も広まっていた。


「待って居ったぞ、よく帰って来たな」

年老いたドラゴンは勇者を認めて話を始める。

「その様子じゃと、ドラゴンの秘宝で歴史を学ばずともすべて学び終えたのじゃろう」

「ああ、じっちゃんの伝えたかった事は見て来た」

二人は寂しそうな空気に包まれる。

『スライムの支配した現実世界もドラゴンの治める世界も私は気にしてないけれど、あなた達の誇りが望むなら止めないわ』

それが始まりの合図だった。全力でドラゴン同士の戦いが始まった。伝承された力の真価を見せつける古龍。それに気づきを得て技に磨きをかける勇者。真理を掴むための長い長い戦闘が繰り広げられたのだった。


……同族殺しや、解体作業といった公序良俗に反する行いが繰り広げられた為、社会福祉の充実した日本で勇者の涙の理由を明記する事は叶わない。されど、勇者は未来の為に泣く泣く行為を遂行したのだった。


――勇者は、すべての必殺技と奇跡を開放しました。これにより、究極奥義(チートスキル)が開放されました。発動にはドラゴンの秘宝が必要です。

「本当にじっちゃんが伝説のドラゴンだったんだな。世界のすべてを知りすべての中心に存在する唯一の神龍」

『先代のスライム除けの加護が切れたから、早くした方が良いわよ』

夢魔の指摘はすぐに現実を呼び込んだ。世界は一変した。三分の二で止まっていたスライムの侵攻が活性化し、全土がスライムの波に洗われ始めたのだ。

《ついにこの時が来た。伝説のドラゴンの力が途絶えた。これにより悲願を成就させる。我がこの世界のすべてなり》

天空に響き渡る宣言に生きるもの全てが絶望した。

恐慌の感情が声を発するまもなく飲み込まれる。大きなうねりがすべてを包もうとしていた。

「我らが守るべきものは、万物を見守る誇りなり、全知の力を用いて、我が全ての始まりを願い。宣言する。いまここで、新世界の神になる!」

勇者の詠唱虚しく世界はスライムに取り込まれた。僅かに生じた世界の綻びは見落としてしまうほど些細なモノだった。

《別の世界に逃げたか》

しかし、完全生物たるスライムは見覚えのある違和感を見逃すほどの愚かではなかった。



小さな世界があった。机と椅子を置いたら終わってしまうような小さな世界である。ベジタリアンの勇者はそこから始めるしかない事を知っている。己の記憶の限りを一から創造しなければいけない。まさに小説家の抱く生みの苦しみを感じていた。蠢く多くのモノに居場所を与えねばならない。その為に……。


『さっさと片付けますか』

《みぃつけた》

言葉遣いにも粘着質な様が露になっているスライムが品性の悪さを全面に出しつつ侵入する。

《世界のすべてを手に入れるのが我の宿命だ》

「スライム。お前は強い。それに引き換えドラゴンは弱点ばかりの弱い種族だった。仲間を募りいつでも襲い来る敵に怯えていた。どんなに強固な砦や結界を使っても、君らの野望を阻止する事は出来なかった。負ける運命。逃げる術。それを受け入れるしかない種族だった」

《なんだ、よく知っているじゃないか。逃げ方が未熟で追いかけっこが終わるんだけどね》

覇道を欲しいままにするスライムは新世界にじわじわとカラダを送り込みつつ嘲笑う。

「ああ、終わりだよ。ゆっくり休むといい」


「ドラゴンは全ての生き物を支えておるのじゃ、血肉を食わせてスライムの危機から遠ざける。我らは秘宝さえあれば永遠に復活出来る生物じゃから、恐怖なんてないのじゃ」

安らかな寝息をたてる前に、よくよくじっちゃんが諭していた言葉が甦る。泣きじゃくり愚図る子供にその後暖かい光を見せて寝かしつけていた。

スライムの前進を目前に、勇者は思い出の眩い光を世界に灯した。

完全生物の意識が飛んだ。



「は~あぁい、元気?」

《ここは何処だ?》

「ここは私の世界よ、世界転移お疲れだったでしょ、存分に休んで行って」

夢魔はニコニコとスライムに話掛ける。

《なに奴》

戸惑うスライムに自己紹介もせず、

「あなたは一度も寝たことがなかったわね。単細胞っていうのは元気だけが取り柄だものね」

見下したような寸評を始めた。

《ほほぉ、これが俗にいう夢の世界というやつか》

「そうよ、今回のドラゴンちゃんが一番最初に作った理。すべての生き物は夢を見る世界。良いわよね」

ニコニコと笑う夢魔は美しかった。しかし、スライムは脇目を振らずに激昂する。

《夢なぞまやかし、現実だけあればそれでいい》

正体に似合わず意思の硬さをアピールしていた。

「でもここで私に勝てなきゃ絞られておしまいなのよ。貴方は気持ちよくスッキリ力を抜き取られる運命なの」

夢魔は舌舐め摺をした。

「ダメダメ、あなたは電撃も、打撃も、火も剣も効かない最強生物なのだから、起きるような外的要因は何もないの。あなたが起きるには私の許可が必要。それだけなのよ」


ドラゴンの意志を継ぐ者はあっけない最後を感じ取っていた。ぐずぐずと沸騰するスライムはまるで給湯器を通過する水のように世界転移の境目から生命の源を還元し続けていた。

【疲れて寝たら最期】

――夢魔が示した討伐方法は締め切りに追われる誰もが感じる恐怖だった。

勇者はその奈落にスライムを突き落とし、平和な世界を作り始めたのだった。



夢を描く創世のドラゴンが寝た。

*「帰還せぬ兵士の遺族から賠償請求が来ております」

*「ええい! うるさい、家族毎異世界流しじゃ! 墾田永年私財法だわ!」




ドラゴンの世界は着実に大きくなっていった。記憶にない生物も含めて順調に平和を育んでいる。


「創世のドラゴンっていつも寝てるよね」

子供達が山のようなドラゴンにレジャーシートを敷いて昼寝を始める。


「楽しい楽しい夢の世界にようこそ!」

夢魔の元でドラゴン、スライム、子供達が楽しそうに時間を過ごしていた。創世を終えた時代では争いを忘れた怠惰が、平和と呼ばれていた。



スライムの敗因:過労による居眠り


この小説は全編に渡りギャグでございます。文学賞タグすらギャグなのでございます。そういった楽しみどころを見つけて頂けると幸いです。(意訳:見直す為にブックマークせよ!)


では、お読みいただきありがとうございました。感想や評価があるともっと楽しい気持ちになれます。この文章を審査員や出版社の方に読ませるにはまだまだポイントが足りませんので、楽しい未来を夢見て、皆様の今後に期待しております。(意訳:一泡吹かそうぜ!)

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