表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/39

終章  起承転結以降の終。主人公、ヒロインを助けたあと、自分も話を書くの図。・その2

 帰り道、由紀乃が訊いてきた。


「ま、無理だろうな」


「あ、無理か。――はっきり言うね」


「本人もいないしな。大体、生まれてはじめて書いた小説が公募で受賞するなんて、常識で考えてあり得ない話だ。それに、今回、静流が書いた話は王道すぎる。悪く言うなら、誰にでも書けるってことだ。ま、基本はわかったと思うから、あとは書いて応募して、落ちまくって書評をもらって、自分でチャンスをつかむしかない」


「なるほどね」


「それに、意外と静流はがんばれるんじゃないかって俺は思う」


「へェ? なんでだよ」


「小説を書くのが好きでやってるわけじゃないからな。趣味でやってる奴は、飽きたらやめちまう。静流はそうじゃない。静香の夢を代わりにかなえようとしてやってるんだ」


 言い、俺は虎の巻を開いた。


「これは出版社Sで聞いた話だ。『写真家とカメラマンという違いがありましてね。ヒマラヤに登って、雪山の写真を撮ってくるのは写真家。あまり売れないでしょうけど、信念があるから尊敬の対象です。カメラマンは、水着のアイドル写真を撮って「もっと胸を寄せてみようか」こんなでしょ? 売れるだろうけど、信念がないから尊敬はできない。それと同じで、作家とライターの違いがあるんですよ』で、ある人の名前をだして『あいつは完全にライターです。自分の信念なんて何もない。売れるものを書いて、金を稼いで、それで満足な奴なんです。我々も儲かるから使ってますが、作家として尊敬はしませんね。「は! おまえなんか作家じゃねーよ。ライターだよ」と言ってます。それでいいって言う人種もいるんですよ』」


 ここまで読んで、俺は顔をあげた。


「いまの静流が、まさにこのライタータイプだな。仕事でやってるのと同じだから、最初から飽きる飽きない以前の問題だし、うまく極めたら、かなりのところまで行けると思う」


「ふゥん。そういうもんなのか」


「ま、『無理して書いても、好きでやってる人間にかなうわけがない』なんて意見もあるけど、俺は賛同したくないな。そういうのは、『凡人が努力しても天才には勝てない』と言ってるのと同じだ。凡人でも努力すれば天才に勝てる。そう信じてがんばっている人間なんて、いくらでもいるだろう。俺はそっちの味方をしたい。静流を見てて、そういう気分になってきた」


「なるほどねー」


 俺の横を歩いていた由紀乃が、少し感心したような顔をした。


「あたしも、マンガは読むのが好きなだけで、描けるわけないって思ってたけど、試しに描いてみようかな」


「え、お姉、マンガ描くの?」


「マンガって言うか、イラストでもいいかな。サーバナイトにでてくるドラゴニアンとかさ。マンガの絵を真似して描いてれば、そのうちうまくなるかもしれないし」


「それでいいんじゃないか? 千里の道も一歩からって言うし」


 適当に相槌を打って、なんとなく俺は空を見上げた。


「俺も、久しぶりに長編を書いて応募してみるかな」


「え、佐田も書いてみるのか?」


「まァな。静流のがんばってる姿を見てたらやってみようって気になった」


「そういえば、佐田って、なんで書くのやめちゃったんだよ? 一回、短編を書いて雑誌に載ったくらいなのに」


「あ、その話か」


 俺は頭をかいた。照れ隠しに苦笑して見せる。


「長編を、半分くらい書いてて、途中であきて投げ捨てちまったんだよ」


「――は? 佐田が? そんなんで、静流に師匠みたいな顔して偉そうにものを言ってたのか?」


「長編小説ってのは、想像以上に書かなくちゃいけなくてな。俺も甘く考えてた」


 俺は虎の巻に目をむけた。


「これは庄司卓先生の言葉だ。『とにかく最後まで書きましょう』」


「――なんだよそれ? あたりまえのことじゃん」


「それが俺にはできなかったんだよ。極意は基本にあり、だったんだけどな。俺も気がつかなかった」


 俺は虎の巻をポケットに突っこんだ。


「とりあえず、俺も何か書いてみるわ。静流を見ていて本当に勉強になったよ」


「で、どんな話を書くのか考えてるのかよ?」


「一応、ネタがあるにはあるんだ」


 言ってから、俺は少し考えた。ま、説明しても問題ないだろう。


「参考にしている虎の巻が同じなんだから、ストーリーの基本とか、メインヒロインを複数だすとか、そういうのは、どうしてもサーバナイトと近いものになると思う。差別化するとなると、設定はファンタジーじゃなくて、現代日本にするべきだろうな」


「はいストップ」


 由紀乃が口をはさんだ。横をむくと、おもしろそうに笑っている。


「あのな? 質問を変えるから。佐田が書こうと思っていた話なんだけど、ものすごく簡単に、何がどうしてどうなる話なのか、それを言ってもらえるかな? 時間で十秒。小説で言うと、一行でおわるくらいの、ものすごく短めの文章で」


「――あァ、そうだったな」


 俺は苦笑した。人に聞くときは的確にアドバイスできるのに、いざ自分が語るとなると、やっちまうもんらしい。指摘されないと気づかないものだ。


「えーとな」


 俺は由紀乃に笑顔をむけた。


「ライトノベル作家志望者の夏休み部活動、かな」




 本日のおさらい。


・「なんらかの資格は持っていた方がいいです」(声優林原めぐみさん)


・「とにかく最後まで書きましょう」(庄司卓先生)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ