第四章 起承転結の結。主人公、ヒロインを守るために切れるの図。・その5
「で、もうひとりのケモミミのジルはギリギリまで、主人公の佐竹鋼哲朗がドラゴンスレイヤーだって、気づいていないってことにしたいです。それで、ラストバトルで、ものすごい力を発揮する佐竹鋼哲朗を見て、本当はすごい奴だったんだって気づくってパターンで」
「前に言ってた、遊び人の金さんのパターンだな。それもそれでいいと思う」
「あと、サブストーリーででてくる、初代ドラゴンスレイヤーの子孫のリーンも、それを見て、『ドラゴンスレイヤーは血縁でなれるものじゃない。ドラゴンスレイヤーズソードも、佐竹鋼哲朗を主として認めた。だったら、私も認めるしかない』なんて感じで、話を丸く収めたいと思います」
静流の意見を聞いて、俺は少し考えた。
「うん、いいと思う。そのキャラ、ストーリーで書けば、とりあえず形になるんじゃないか?」
「ありがとうございます」
「ただ、最後に」
頭を下げた静流に俺は言葉をつづけた。
「その、主人公の佐竹鋼哲朗だけど、ラストバトルで、ラスボスのドラゴンを相手に、すごい力を発揮するって言ってたな」
「はい」
「それ以前の、序盤のあたりでは、主人公は、何か、常軌を逸した力を発揮したりはするのか?」
「あ、はい。そのつもりです。ほら、こういう話は、やっぱり中二設定の俺ツエーものだってお話だったじゃないですか。それに、ケモミミのジルと出会うきっかけも、騒動に巻き込まれたジルを助けるってシーンがありますから、何かしら強いってことにしておかないと」
「あ、そうか。言ってたな。ということはラストバトルでは、ただでさえ強い奴が、さらに巨大な力を発揮するということか」
少し考え、俺は虎の巻をだした。
「えーとだな。これは一九八九年、サルでも描けるまんが教室という漫画があったそうだけど、そこからの抜粋だ。『エスパー漫画はイヤボーンの法則で動いている』」
読んでから顔を上げたら、静流も由紀乃も春奈も不思議そうな顔をしていた。
「あの、イヤボーンの法則ってなんですか?」
「これによるとだな。エスパーヒロインがピンチになって『イヤアァァ!』と叫ぶ。すると眠っていた力が目覚めて、敵の頭が『ボーン』と爆発する! ということだそうだ。類義語に『スーパーサイヤ人化現象』があるらしい」
言ったら、由紀乃がなんだって顔をした。
「あれか。熱血漫画でたまに見るパターンか。ブチ切れて、本当は疲れ果ててるって設定ガン無視して大暴れするって感じの。中二病じゃなくて、マジに中二な奴」
「そうそう。そういうのは、見ていて、やっぱり爽快だからな。だから、主人公の佐竹鋼哲朗は、最初から強くてもいいけど、ドラゴンを倒すほどの力は持っていない程度に強いって描写にしておくといいと思う。それだと、サブストーリーで絡んでくるリーンも、『あなたは確かに強いけど、ドラゴンスレイヤーを名乗れるほどじゃないわ』ということになるし、ラストで『これが彼の本当の力だったのか』てことにもなる」
「あの」
今度の挙手は春奈だった。
「佐田さん、それだと、このお話、主人公の仲間が誰か死んじゃうんですか? それで、その怒りで、眠っていた力が目覚めるんですよね?」
「あ、それは殺さなくてもいいと思う。たとえば、ラスボスのドラゴンが、ドラゴニアンのマリアに『貴様のようなものがいるから人間どもが大きい顔をするんだ』とかなんとか言って、ぶっ叩いて怪我をさせるとか。それを見て、切れた佐竹鋼哲朗が、眠っていた本来の力を発揮する、とか、そういうのでいいと思う」
春奈に説明してから、俺は静流のほうをむいた。こういうアイデアはどうだろう? と聞くつもりだったんだが、もう静流は真面目な顔でノートに書き込んでいた。確認するまでもなく、イヤボーンは採用されたらしい。
「よし、いまの時点で、言うべきことは全て言ったと思う。では、本格的な執筆活動に入るとしようか」
俺が言ったら、静流が嬉しそうに顔をあげた。
「はい、じゃ、これから書いていきますから、読みながらもご指導お願いします、佐田師匠」




