第四章 起承転結の結。主人公、ヒロインを守るために切れるの図。・その4
「サーバナイトの世界のドラゴンにも、いろいろな考えがあって、人間に友好的な種族と、そうでない種族がいるんです。で、友好的なドラゴンと人間の間に生まれたのが、お互いの橋渡しになっているドラゴニアン。で、人間をよく思っていないドラゴンと人間の間にドラゴニアンは生まれていません」
「ふむふむ」
静流の説明は、やっぱり設定の説明からはじまった。ま、仕方がない。基本的な設定がわかってないと、メインストーリーを把握することもできないような組み立て方をしているんだろう。
「で、人間側には、ドラゴンと互角に戦えるドラゴンスレイヤーがいます。これが人間側の希望なわけです。だから、人間と仲良くする気のないドラゴンは、ドラゴンスレイヤーが邪魔なわけです。ここまでいいですか?」
「うん、わかる」
「あたしもわかる」
由紀乃がPB商品のポッキーもどきをポッキポッキ食べながら返事をした。その隣に座っている春奈もうなずく。俺たちが設定を把握していると確認したらしく、静流が話をつづけた。
「だから、人間をよく思っていないドラゴンは、ドラゴンスレイヤーを殺そうとするんです。人間の街まで、人間の姿に化けて。それで、主人公の佐竹鋼哲朗と一騎打ちをして、最後は敵のドラゴンをたおすんです。それでエンドです」
「なるほど。わかりやすい説明だった」
俺はうなずいた。
「最初に言っていた、主人公が活躍するというテーマや、ジャンルはアクションだという基本路線も守られてるし。書いてるうちにブレてくることもあるんだけど、この分だと安心していいようだな」
「はい。ありがとうございます」
「ただ、ちょっと突っこむけど」
「はい?」
「その敵キャラの設定なんだけどな。ちゃんとした理由もなしで人間を憎むのは、少し問題かもしれないんだ」
俺はまとめをだした。
「これは出版社Mで聞いた話らしいな。『敵も、ただ悪い奴じゃなくて、何か考えがあって、話を聞いたら、こいつの気持ちもわからなくはないな、というキャラにしてください』だそうだ。だから、人間と敵対するドラゴンも、何か理由付けが欲しいと思う」
「あ、そうですね。それ、何か考えないと」
「あのさー。ちょっと質問」
ここで由紀乃が声をかけてきた。
「そのサーバナイトの設定って、ドラゴンは長生きだってことでいいんだよね?」
由紀乃の質問に静流がうなずく。
「はい。基本的に一〇〇〇年以上生きるって設定になっています。ドラゴニアンの寿命は、その半分で、五〇〇年くらいですけど」
「じゃァさ、その敵のドラゴンって、初代のドラゴンスレイヤーを知ってるってことじゃね?」
「えーと」
静流が少し考えた。
「はい。そういうことになります」
「だったら、初代ドラゴンスレイヤーに恋人のドラゴンを殺されて恨んでるってことにすればいいんじゃね?」
「――あ、それいいかもですね」
由紀乃は何気なく言っただけなんだろうが、これはいい提案だった。
「それと、主人公以外は女にしろ、だっけ? そんな話もあったから、敵のドラゴンは雌にするといいかもね。そんで、初代ドラゴンスレイヤーに殺されたのが、恋人の雄ってことにしてさ。あ、それだと、最後に殺しちゃうの、なんかかわいそうかもね。どうしようか?」
「あ、それはですね。えーと。だったら、最後は殺すんじゃなくて、とどめを刺さずに、見逃すってことにします」
「ふむ、悪くないかもな。あまり残酷なのは公募ではじかれる危険もあるし」
俺も同意した。
「それに、いまの話だと、敵側にもドラマが生まれるし、どうしてドラゴンスレイヤーを憎んでいるのか? という説得力も生まれる。最後、戦うしかない流れも必然性が生まれてくるし、うまくすれば続編も書けそうだ」
「あのさ」
由紀乃が手を挙げた。
「主人公も決まって、ヒロインも決まって、敵も決まって、サブストーリーも決まって、メインストーリーも合格したんだからさ、もう、そのまんま、パソコンでタカタカ打ちこんで書き上げちゃえばいいんじゃね?」
「もちろんそれでいいと思うけど、最後に、そのメインストーリーと、サブストーリーと、キャラクターがどうからんでくるのか、そこまで聞いておきたい。で、俺から何か助言できるようなら、いまのうちに助言しておくから。書きあげてから、細かく修正すると二度手間になるし」
「あ、はい。わかりました」
素直に返事をし、静流がノートを開いた。最初に持ってきた中二設定資料集じゃなく、あとから制作したキャラ表のほうである。
「まず、主人公のドラゴンスレイヤー佐竹鋼哲朗ですけど、このキャラはラスボスのドラゴンに狙われて、で、ラストバトルで戦って勝つっていう関係だから、これはこれでいいですよね?」
「それはいいと思う」
「で、メインヒロインで、ドラゴニアンのマリアなんですけど、このキャラは、やっぱり、敵のドラゴンに狙われるってことにしようと思っています」
「は? なんでだ?」
「だって、敵のドラゴンからすれば、ドラゴニアンは、ドラゴンと人間の橋渡しの役目をしているから、ドラゴンスレイヤーと同じで、やっぱり邪魔なわけだし。あと、差別もあると思います。ほら、ハーフエルフが、エルフにも人間にも邪魔者扱いされるみたいな感じで」
「あ、そうか。それはあるだろうな」
「もちろん、人間と仲のいいドラゴンや、普通の人間は、ドラゴニアンを差別してないってことにしたいんですけど。それから、マリアはドラゴンスレイヤーを現実世界から召喚したわけですから、人間と仲良くしたくないドラゴンからすれば『おまえのせいで話がややこしくなったんだ』となるわけですよね? だから、主人公の佐竹鋼哲朗以上に命を狙われてるってことにしても問題ないと思います」
「ふむ」
俺は腕を組んだ。感心したのである。メインヒロインの特徴づけでドラゴニアンという設定にしたはずなんだが、意外とメインストーリーにからむ設定として使える方向に話がむいてきた。




