第四章 起承転結の結。主人公、ヒロインを守るために切れるの図。・その3
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「ふゥん、ここなんだ」
バス停から降り、静流について町のなかを五分ほど歩くと、どこにでもある一般住宅が俺の前に姿をあらわした。ラノベで定番の、お嬢様の大邸宅とか、そんなんじゃない。本当に普通の家である。二階建てだった。
「アニメなんかの定番だと、大豪邸だったりするんだけどねー」
俺の隣で由紀乃がつぶやく。同じことを考えてたらしい。口にだして言うのはどうかと思うが。
「どうぞ、あがってください」
気にしたふうもなく、静流が玄関のドアをあけた。
「「「お邪魔します」」」
俺と由紀乃と春奈が言い、静流につづく。
「あら、いらっしゃい」
はじめてお邪魔する家だ。とりあえず、礼儀正しくしておこうと思っていながら靴を脱いでいた俺に、はじめて聞く女性の声が飛んだ。顔をあげると、俺の母親と、あんまり変わらない年齢の女性が立っている。この人が静流のお母さんか。
「ただいま」
静流がお母さんにむかって言い、それからこっちをむいた。
「それで、この人たちが」
話を振ってきたから俺は頭をさげた。
「どうも、佐田哲朗って言います」
「あたしは、鴻上由紀乃です。こっちの小さいのは妹の春奈です」
「春奈です」
由紀乃と春奈もあいさつした。静流のお母さんが笑顔をむける。
「どうもありがとうね。今日は勉強会だって聞いてるけど、静流の面倒をちゃんと見てあげてくださいね」
「はい、安心してください」
勉強会の時点で大嘘だから安心も何もあったもんじゃないんだが、とりあえず静流との約束通りに俺は話を合わせた。
「あら、でも」
これで基本的なあいさつは終了だと思っていたら、静流のお母さんが小首をかしげた。
「そちらの――春奈ちゃんだったかしら? そのお嬢さんも、静流の勉強会に?」
「あ! こいつの勉強はあたしが見るんですよ。こいつも夏休みの宿題でわからないところがあるって言うから、じゃ、一緒に勉強しようってことになって。騒がせたりはしませんから安心してください。あはは」
「あ、そうだったの。仲のいい姉妹なのね」
静流のお母さんがほほえんだ。由紀乃のとっさの機転でうまく逃げ切れたな。女性脳というのはこういうアドリブに強いそうだが、おかげで助かった。
「じゃ、私たち、部屋に行ってるからね」
たぶん、俺と同じでほっとしてるだろうに、顔にださずに静流が言い、玄関のすぐ前の階段を上がっていった。俺も静流のお母さんに会釈して、あとにつづく。
「春奈、行くよ」
「うん」
振りむかなかったが、背後の会話からすると、由紀乃と春奈もついてきてるらしい。
「こっちです」
言い、二階にあがった静流がスタスタと廊下を歩いていった。
「ここが私の部屋です」
言いながら静流が扉をあける。
「どうぞ、入ってください」
「どうも。じゃ、あらためて、お邪魔します」
「お邪魔します」
「どうも」
俺と由紀乃、春奈が静流の部屋に入った。
「――なんか、ずいぶんちゃんとしてる部屋だな」
とりあえずでてきた感想がこれだった。絨毯のひいてある部屋の中央には小型のテーブル、壁際には勉強机とパソコン。それから本棚。入っているのは、申し訳程度のライトノベルとマンガだった。あと、机の脇に置いてあるのはプリンターだろうか。これでサーバナイトのプロローグを印刷して持ってきたんだな。
「オタクの部屋って感じじゃないね。マンガもラノベも普通の奴が持っている程度だし」
由紀乃も似たような感想を述べた。本当に、これで、どうしてライトノベルを書こうと思ったんだろうか。
「でも綺麗じゃん? ちゃんと整理整頓されてるし。お姉の部屋なんてマンガだらけでひどいよ? 読みかけの奴がその辺に転がってるし。ジャングルみたいだよ? ターザンでてくるよ?」
「こら春奈ー!」
「おい! 学校じゃないんだから、人の家で騒ぐな!」
俺が小声で叱咤したら、慌てて由紀乃が口をつぐんだ。そのまま春奈をにらみつける。
「いい春奈? 余計なこと言ったら本当に殺すかんね?」
「わかったよ。うわお姉怖ー」
「人の家にきてるんだから、喧嘩はなしだぞ。ふたりとも仲良くな」
由紀乃と春奈に言い、とりあえず俺は部屋の中央のテーブルの前で座った。
「じゃ、早速だけど、本題に入ろう。静流、ずっと考えていた、サーバナイトのメインストーリーを教えてくれ」




