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第三章 起承転結の転。主人公とヒロインの間にサブキャラがからむの図。・その9

「――新人賞?」


 日沢がおうむ返しに聞き返した。


「御堂さん、プロになりたいの?」


「うん」


「プロになるのって、そんな簡単じゃないのよ?」


「それくらいは、私も知ってるから。ネットで調べたし。だけど、それでも私はプロを目指してるの」


「――じゃ、どういう話を書いてるのか、見せてくれる?」


 もう俺なんかガン無視の状態で日沢が御堂に申しでた。べつに嫌な顔をするでもなく、静流がうなずいて、持ってるノートをだす。


「まだ書き上げてないけど、これ、サーバナイトっていう異世界ファンタジー。テーマと、ジャンルと、キャラ表と、あらすじと、サブストーリーと、あと、ライトノベルを書くためのアドバイスが書いてあるから。それから春奈ちゃん」


「はい?」


「その、サーバナイトの設定、ちょっと返してくれる?」


「あ、はいはい」


 さっきの続きで、まだ持っていた中二ノートを春奈が静流に返した。それが、そのまま日沢の手に渡る。


「これが世界設定。夏休み中に、この話、書こうと思ってるのよ」


「ふゥん」


 大して期待しているってわけでもない感じで日沢がノートを開いた。――のだが、見た瞬間、表情を変えて顔をあげる。


「これ、本当の出版社とか、プロ作家のアドバイスなの?」


「うん」


「すごい」


 月並みな表現だが、目を丸くして日沢がノートをめくりだした。


「――なんか、あたりまえのことも書いてあるけど。でも、女の子をたくさんだすとか、こういうのって、読んでる人間じゃなくて、編集部もわかってて、意識的にやってたんだ。いままで知らなかった。すごい。高橋留美子先生の意見まで載ってる」


「私も、最初は驚いたわ」


「あの、これ、誰から聞いたの?」


「佐田師匠だけど?」


 なんでもないって顔で言う静流の返事に、日沢が驚いた顔でこっちを見た。


「佐田先輩が? あの、これって」


「大したことじゃない。ネットで知り合ったプロ作家が教えてくれたんだ」


「そうだったんですか。じゃ、御堂さん、このあらすじは?」


「設定とキャラが決まったから、そこから、じゃ、こういう感じの話になるだろうって感じで、佐田師匠にいろいろ教わりながら、話し合いで。由紀乃先輩も手伝ってくれたし。ストーリー制作のアドバイザーって言うのかな。由紀乃先輩、マンガが好きだから、すごくためになること言ってくれたし」


「え? あたし、そんなこと言ったっけ?」


 キョトンとした顔で由紀乃が聞き返した。静流が苦笑する。由紀乃は雑談してるだけのつもりだったらしい。


「あ、あの」


 狼狽した顔で日沢が静流と俺を交互に見た。


「おふたりとも、漫画部にきていただけませんか?」


「――は? 俺も?」


「あの、だって、こんな高レベルのことやってたなんて、いままで知らなかったし。佐田先輩も御堂さんも、漫画部にきてくれたら、漫画部もすごいレベルアップになると思うんです。て言うか、漫画部にくるべきです。こんなところにいるべきじゃありません」


「ちょっと待てよ。あたしは?」


 不愉快そうに由紀乃が訊いてきたが日沢は返事をしなかった。仕方がないから俺が手をあげる。


「悪いけど、俺は文芸愛好会で、ダラダラやってるのが好きなんだ」


「私は、佐田師匠に教わってるし。佐田師匠と一緒にいないと」


「そうそう、いいこと言うねふたりとも。だからごめんな、日沢」


 少しだけほっとした顔で由紀乃がつぶやいた。日沢がおもしろくなさそうな顔で由紀乃を見る。ついでに春奈も。


「だって、こんな、意味のないところに。て言うか、そもそも、この小さい子はどなたなんですか?」


「あたしの妹だよ」


「その妹さんが、どうしてここにいるんですか? どう見ても小学生じゃないですか」


「夏休みだし、べつにいいじゃんよ? あたしの学校が見たいとか言ってたし」


「お姉の学校じゃなくて、佐田さんの学校が見たかったんだよあたし」


 由紀乃と日沢のやりとりを聞いていた春奈が口をはさんだ。そのまま笑顔でこっちをむく。


「あたし、佐田さんに、あたしのお兄さんになってくださいって言ったんですもんねー? 佐田さん、いいって言ってくれましたもんねー?」


「あーそれはその」


 俺、いいって言ったか? 記憶を探って返事をしようとしたが、それは不可能になった。目の前の女性陣の表情が一気に変わったのである。赤かったり青かったり、顔色は様々だった。


「ははは春奈! あんた、あたしがいないときにそんなこと言ったの!?」


「佐田師匠、春奈ちゃんのお兄さんになるって、そそそそれって」


「だから、前から言ったじゃんよ! あたしたちはそんなんじゃないって」


「佐田師匠、前に、由紀乃先輩とはそういうんじゃないって。あれ、嘘だったんですか!?」


「は? いや、嘘とか、そんなんじゃなくて」


「ちょちょっと待ってよお姉も静流さんも。誤解してるよ」


 春奈がうろたえる俺をフォローしてくれた。


「あたし、ただ、佐田さんを逆ナンしただけで」


「「は? 逆ナン?」」


「不潔よー!」


 いきなり絶叫したのは日沢だった。驚く俺の前で、狼狽した顔の日沢が立ち上がり、部室の入口まで駆ける。


「ここって、そんな場所だったんですか! それで御堂さんまで毒牙にかけようとして! 私、こんなところにいられません!」


 ドガラピシャーン! と扉をあけて日沢が飛びだした。ダダダダだと音を立てて走り去っていく。


 と思ったら、すぐに戻ってきた。


「でも、私、こんな部活は絶対に認めませんからね!」


 訳のわからん捨て台詞を残して、ピシャラドガーン! と扉を叩きしめ、あらためて日沢がでていった。突然の剣幕に、由紀乃と静流もキョトンとした顔になる。


「なんだったんだあれ?」




 本日のおさらい。


・「文章がうまくなりたいんでしたら、毎日、新聞を読むといいかもしれません」(庄司卓先生。要約)


・「自分のことは客観的に見られない。だから他人に感想を聞くしかない。で、自分のいいところと欠点に気づく。あとはいいところは伸ばして、欠点は直す。これが上達する練習方法」(一般論)


・「状況を描写するのではなく、伝えたいものを表現する。『ただパンツを見せるだけではダメだ。パンツを見られて恥ずかしがってる女の子を書くまでがセットなのだ!』」(出版社G。要約)。


・「うちに応募してくる人にも勘違いしてる人がいっぱいいて、変な奴だせばいいんだろうって思ってるみたいなんですけど、小説の基本はストーリーです」(出版社F。要約)


・「主人公をとにかく追い詰めろ」(ベストセラー小説の書き方。要約)

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