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第三章 起承転結の転。主人公とヒロインの間にサブキャラがからむの図。・その3

       2




「何があったんですか?」


「ちょっとな。仲のいい姉妹の鬼ごっこに巻きこまれたんだよ。ゲホゲホ」


 ひっくりかえった机を元に戻しながら俺は静流に返事をした。訳がわかって無い静流はキョトンとしている。


「ま、何があったかは気にしないでくれ。じゃ、いつもの講義と行こうか」


「わかりました」


「ウー」


 静流が返事をし、俺の横で由紀乃がうなった。春奈が俺に抱きついてくる。


「佐田さん助けてえ」


「佐田に触るんじゃない! ていうか、最近ガチで言うこと聞かなくなってきたね春奈。もう遊んであげないよ?」


「そのときは佐田さんと遊んでもらうんだもん。ベーだ」


「ううう、やっぱり殺す」


「あの、どうして春奈ちゃんもいるんですか?」


「俺もよくわからないけど、由紀乃と一緒に遊びたくてきたんだろ」


 適当なことを言って俺は席に着いた。隣に座った由紀乃が怒りの眼光をむけると同時に春奈が後ろから抱きしめてくる。


「佐田さん、お姉が怖ーい」


「大丈夫だから」


 春奈をなだめて、俺は真向かいに座った静流を見つめた。ま、由紀乃のことだから、少ししたら怒りも収まるだろう。


「で、主人公とヒロインの主要キャラも決まったことだし、あとは基本的なストーリーとのからめ方を考えるとしようか」


 静流が考えて、俺と由紀乃がアドバイスって形で話を進めればいいと思っていたんだが、静流は少し困った顔をしていた。


「あ、あの、その前に、私、佐田師匠に質問があるんです」


「あ、そうなのか」


 自分から質問があるとは。静流も成長しようとしてがんばっているんだろう。俺は感心した。


「で、どんな質問なんだ?」


「あの、実は」


 訊いたら、静流が困ったみたいな顔でうつむいた。


「あのあと、私、自主練習もかねて、プロローグの続きを書こうと思ったんですけど。その、文章が浮かばなくなっちゃって」


「は?」


「どうしてか、急になんですけど、どう書いても、なんだか変な文章になっちゃって。頭のなかで思い描いていた情景を表現できないっていうか。それでも無理に書くと、小説じゃなくて、ドラマの脚本みたいな、セリフだらけになっちゃうって言うか」


「なんでだよ? プロローグ、ちゃんと書けてたじゃん? あれ、悪くないと思ったよ」


「俺もそう思ってたんだけど。ビギナーズラッキーだったのかな」


 俺も首をひねった。冷静に考えたら、生まれてはじめて小説を書くんだから、こういうスランプはあって当然だったのかもしれない。ライトノベルを書く基本もいいが、静流には、それ以前の初歩の初歩も教えないといけなかったようだ。


「そういえば、一シーンを書くだけなら誰でもできるけど、最初から最後まで書くのは大変だって、どこかで聞いたことがあるな」


「それで、あの、佐田師匠、こういうときはどうすればいいんでしょうか?」


「わかった。つまり、文章を上達させたいわけだな」


 俺は虎の巻を開いた。


「これは一九九六年、庄司卓先生が『倒凶十将伝 巻之伍』に書いたあとがきからの抜粋だ。『文章がうまくなりたいんでしたら、毎日、新聞に目を通したらいかがでしょうか? 現在の文学シーンを打破するような、斬新で革命的な文体を駆使したいのならばいざ知らず、単純に不特定多数の読者に自分の意思を伝えたいのなら、毎日、新聞を読み、そこに載っている文章の構成を学ぶのが、いちばん安上がりだと思います。いわゆる三面記事から有名作家や評論家のコラムなど文章もバラエティに富み、ついでにネタ探しにも役立ちます』」


 読んでから顔をあげた。静流は感心したような感じだったが、由紀乃は納得のいかない感じだった。


「それって、つまり、新聞読めってことじゃね? それだけでいいのか?」


「それだけでいいってことはないだろうな」


 俺は虎の巻を閉じた。


「そもそも、このアドバイスは一九九六年のものだ。俺たちが生まれるより前の話だし、当時と現在ではライトノベルの事情も違うだろう。確かに新聞を読めば、いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのようにした。という5W1Hの勉強にはなると思うけど、ライトノベル特有の文章を学ぶことは不可能だな。新聞には三点リーダーもないし」


「……三点リーダーてなんだよ?」


 由紀乃が変な顔をして聞いてきた。


「あ、そうか。知らないんだな。えーとだな……」


 俺は少し考えた。


「……つまりだな。登場人物が、少しの間、黙っているとか、時間が経ちましたって表現するときの点点点のことだ。ほら、プロ作家が書くことないときに行数稼ぎで使ったりもするだろ」


 横で聞いていた春奈が、あ、と声をあげた。


「お姉、あれだよ。工作の時間の切り取り線みたいな奴だよ」


「……あ、あれか」


 春奈の説明に、由紀乃も納得という顔をした。とりあえず機嫌は治っているらしい。


「ああいうのは、ライトノベルを読まないと学習できないからな。だから、新聞とライトノベルを半々で読むといいと思う」


 普通のワナビだったら、言われなくてもライトノベルを読んでるんだろうが、静流はライトノベルをほとんど読まないって言ってたからな。助言としては、このへんが的確だろう。

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