第二章 起承転結の承。主人公、ヒロインと遊びに行くの図。・その7
で、なんだかんだあって三〇分後。バタ足やらなんやらやった挙句。
「佐田さん、これでいいですか?」
子供用プールでジャバジャバ泳いでいた春奈が俺に訊いてきた。一応、クロールの形にはなってると思う。
「合格。あとは、ひたすら泳いで慣れることだな。習うより慣れろって言うのが芸事の基本だし」
「はい、わかりました」
「じゃ、俺、ちょっと休憩するから」
「え、そうなんですか?」
「高校生が子供用プールにいるのも、あんまり格好良くないからな」
言って俺は子供用プールをでた。先にあがった由紀乃がプールサイドに座っている。
「ま、ざっとあんな感じかな。ちゃんと泳げてるだろ?」
「うん、サンキュ」
隣に座って言ったら由紀乃がうなずいた。一応、真剣な顔でジャバジャバ泳いでる春奈を見ている。
「からかったり意地悪したりもするけど、なんだかんだ言って妹思いなんだな。シスコンて奴か?」
「年が離れてるからね。血もつながってないし」
茶化すように言ったら、なんかすごい返事がきた。
「あ、あの、えーと」
「べつに大したことじゃないよ。親が結婚したとか離婚したとか再婚したとか、そういう理屈。春奈は義理の母親の連れ子だったんだよ。はじめて会ったのは、あたしが一〇歳で春奈が四歳だったかな。で、その母親は母親で仕事についてて、要するに再婚しても共働きでさ。ガキのころは、あたしが春奈の面倒見なくちゃいけなかったんだ。お風呂に入れたり、小学校にあがったら勉強を教えたりね」
「へえ」
「それに、なついてほしいとも思ったし。それで優しくしてたんだよ。ま、最近は反抗期なのか、クッソ生意気になってきたけどね。でも、最初はかわいかったよ。あ、いまもか。――本当の姉妹じゃなくて、血がつながってないから、そのコンプレックスで、普通の姉妹よりも仲良くしようとしてるのかもねあたし。自分でもよくわからないけどさ」
「――なんか、ちょっと意外だった。由紀乃って家庭的だったんだな」
「夕飯はレトルトばっかだったけどね」
「それでも立派なもんだ。見直したよ」
それに、なんとなく、由紀乃の話し言葉にも納得がいった。前々から常識外れだと思ってたけど、両親からちゃんと教わってなかったのか。鍵っ子で、学校の友達と話してばっかりならわかる。春奈も同じ話し言葉なのは問題だと思うが。
「あのさ」
考えてたら、由紀乃が声をかけてきた。いつもと抑揚が違う。振りむいたら赤面していた。今日は由紀乃の赤面をよく見るな。
「あの、いきなりなんだけど。さっき春奈が言ってた話ってさ」
「あー大丈夫。よくわかってるから」
「え!」
「あんな下手な嘘、すぐわかる」
「そそそれはその」
「ただ、遊んでほしいからって泳げないふりをするのはどうかと思うけどな。春奈ってクロールできるんだろ本当は」
「――え」
「違うのか?」
「――違わないけど。あの、ほかには、何か言うことないの?」
「ふむ」
俺は少し考えた。
「とくにないな」
「とくにないって――」
「あ、とくにないっていうのは、少し違ったか。えーとだな」
俺は由紀乃のほうをむいた。
「何もない」
「何もないって、ここここのウルトラ鈍感野郎!」
いきなり由紀乃が切れた。なんだ? 変に思う俺の横で由紀乃が仁王立ちで俺をにらみつけてくる。
「おまえみたいなのは静流とラノベ講座だけやってろ! て言うか子供用プールで足つって溺れちまえ! それからプールで腹を冷やして下痢便だして死ね馬ー鹿!」
無茶苦茶なこと言って、背中をむけてドスドスと行ってしまった。春奈がひとりで泳いでるから、しばらくしたら戻ってくるだろう。こういうときは頭が冷えるまで放っておくに限る。
「佐田師匠、カップルって、意外に普通の会話しかしないんですね。驚きました」
入れ違いで静流が戻ってきた。
「ウォータースライダーがおもしろいとか、アイスクリームは何を食べるとか、意外に普通で驚きました。――どうしたんですか? 由紀乃先輩は?」
「プールで腹を冷やして下痢便がどうとか言ってた」
「あ、トイレですか。――そういうのは言わなくてもいいのに」
勘違いした静流があきれたような顔をした。
本日のおさらい。
・「少年マンガにつきものなのはパンチラである。転じて、ライトノベルにもラッキースケベはつきもの。ギャグとしても使える。少なくてもあって困るものではない」(サルでも描けるまんが教室。アドバイスのアレンジ)
・「ロリはそれだけで一定の需要がある」(出版社S。要約)




