第二章 起承転結の承。主人公、ヒロインと遊びに行くの図。・その5
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「へー。こんなところにプールがあったんですか」
バスに乗ってプールまで行ったら、静流がおもしろそうにプールを眺めた。なんとかランドって名前である。ウォータースライダーとか流れるプールがある、まァ、普通のレジャープール施設であった。
「私、引っ越してきたばっかりで知りませんでした。由紀乃先輩、教えてくれてありがとうございます」
静流が由紀乃に頭をさげた。由紀乃が苦笑して手を左右に振る。
「気にしなくていいから。えーと、ちょっと早かったかな。ここで待つって約束だったから。ちょっと付き合ってくれね?」
ということで、レジャープール施設の入口で約束の時間までボケーっと待っていると、小学生くらいの、ショートカットの、目のパッチリした美少女がやってきて、俺たちを見かけてこっちへ駆けてきた。
「お姉!」
この美少女が由紀乃の妹らしい。
「あーきたね春奈」
駆け寄ってきた小学生の頭を由紀乃がなでた。気のいいお姉ちゃんって顔である。
「思ったより年が離れてるんですね」
意外そうに静流がつぶやいた。俺も口には出さなかったが同意見である。静流の言葉に、春奈と呼ばれた小学生の美少女が顔をあげる。誰だ? て顔をした。
「あの」
「あー、こっちのふたり、あたしの学校の知り合いでね。ついでだからつれてきたんだ」
「あ、そうだったんだ」
「どうも。春奈ちゃんっていうのね? 私は御堂静流。由紀乃先輩の後輩だから。よろしくね」
「俺は佐田哲朗。由紀乃の同級生」
静流と一緒に自己紹介したら、春奈がぱっと俺を見た。なんか、珍しそうな顔をする。
「あーそうか。佐田哲朗。だからTSだったんだ」
「TS?」
「なんだお姉、背が高くて格好いい人じゃん? なんで教えてくれなかったんじゃんよ? ちゃんと紹介してくれたら、あたし、笑ったりしなかったし」
「わー!」
由紀乃そっくりの口調で春奈がしゃべりだしたら、慌てた声をあげて由紀乃が春奈の口を抑えた。なんか、顔が真っ赤である。
「ちちち違うから! この人じゃねーから!」
「違うって、何が?」
「なんでもねーから! ほら、行くよ!」
由紀乃が赤い顔のまま、春奈の腕を引っ張ってプールの入口まで歩いて行った。
プールの入口では、本当に水着を売っていた。俺は適当にバミューダパンツ型の水着を購入。静流はワンピース型のピンクの水着を買っていた。
「あ、きたね佐田さん」
入場料を払って更衣室でバミューダパンツに履き替えてプールに行くと、由紀乃と春奈が待っていた。由紀乃は赤いビキニ、春奈は黒いスクール水着である。小学生だからな。
「あの、お待たせしました」
そのまま、さらに待ってたら、ワンピース姿の静流がやってきた。なんか、恥ずかしそうである。そのまま、赤い顔で俺の前まで近づいてきた。
「佐田師匠、あの、私、変じゃありませんか?」
「は? 変って?」
「あの、だから、その、この水着とか」
「よく似合ってると思うけど」
という返事しか俺にはできなかった。間違っても似合ってないとは言えないし。
それに、実際問題、清楚な感じの静流にワンピース水着はよく似合っていた。
「そんな恥ずかしそうにしないで、堂々としてていいと思うぞ」
「そ、そうですか」
俺の言葉で自信がついたのか、静流が微笑んで顔をあげた
「じゃ、あの、私、カップルの会話とか、そういうの、見てきますね」
「あんまりジロジロ見てると怒られるから、こっそり観察しろよ」
「はい。じゃ、行ってきます」
静流がピョコンと頭をさげて、そのままプールサイドまで歩いて行った。さて、俺はどうするかな。と思っていたら。
「佐田さん、泳ぎって得意ですか?」
春奈が訊いてきた。
「ま、泳げないってわけじゃないけど」
「じゃ、あたしにクロール教えてくれませんか?」
「へ? べつにかまわないけど」
とりあえず返事をしてから由紀乃を見たら、由紀乃も変な顔をしていた。
「クロールくらい、あたしが教えてやんよ? つか、春奈、クロールできなかったっけ?」
「できなかったよ。それにあたし、佐田さんにクロールを教えてほしいんだ」
言って春奈が俺の腕をグイッと引いた。
「じゃ、佐田さん、行きましょうか。お姉のことは放っておいていいから」
「え、放っておくって、春奈ちゃん」
「ちょっと春奈」
「あたしのことは春奈でいいです。それからお姉、着替えてるときも、この人じゃないって、ずっと言ってたじゃん? なら、あたしにちょうだいよ」
「――ちょうだいって、俺はものじゃないんだけど」
「いいじゃないですか佐田さん。学校の男子なんて馬鹿な餓鬼ばっかりだし。あたし、佐田さんみたいな大人の男の人が趣味なんです」
「そりゃ光栄だな」
小学生だからな。背伸びしたくなる年齢なんだろう。俺の横で由紀乃が慌てた顔をした。
「あのね春奈? あんま馬鹿なこと言ってると怒るよ?」
「あれ? お姉、いつもと違う。あたしが欲しいって言ったもの、いつもだったらなんでもくれるのに」
だから俺はものじゃないって言うのに。俺はいたずらっぽく笑っている春奈の頭をなでた。
「あのな春奈ちゃん?」
「春奈でいいですってば」
「じゃ、お言葉に甘えて、春奈。教えてほしいんならクロールは教えるけど、教えるのは由紀乃も一緒だから」
俺が言ったら、春奈が不満そうな顔をした。
「なんでですか?」
「君の保護者はお姉ちゃんの由紀乃だから。兄弟でも親戚でもない、俺みたいなのが、君みたいなかわいい女の子と一緒にいると、勘違いされた人に通報されちゃうんだ」
「あ、そうそう。佐田ってむっつりスケベだから。人の裸なんて平気で見るし」
「あれは事故だったろ」
「事故でもなんでも見たじゃん」
「それならそれでいいけど。ところで俺、誰の何を見たんだっけな?」
由紀乃をにらみつけながら訊いたらおとなしくなった。
「佐田さん、誰かの裸を見たんですか?」
「あ、春奈ちゃんは気にしなくていい。じゃ、クロールを教えるけど、その前に準備体操をしようか」
「そうそう、準備体操をしないとね」
言いながら由紀乃が春奈の手をひいた。そのまま顔を近づけて
「いくら春奈でも余計なこと言ったら殺すからね」
小声で言っているのは聞こえていたんだが、俺は聞こえないふりをした。姉妹にもいろいろあるんだろう。




