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第二章 起承転結の承。主人公、ヒロインと遊びに行くの図。・その5

       3




「へー。こんなところにプールがあったんですか」


 バスに乗ってプールまで行ったら、静流がおもしろそうにプールを眺めた。なんとかランドって名前である。ウォータースライダーとか流れるプールがある、まァ、普通のレジャープール施設であった。


「私、引っ越してきたばっかりで知りませんでした。由紀乃先輩、教えてくれてありがとうございます」


 静流が由紀乃に頭をさげた。由紀乃が苦笑して手を左右に振る。


「気にしなくていいから。えーと、ちょっと早かったかな。ここで待つって約束だったから。ちょっと付き合ってくれね?」


 ということで、レジャープール施設の入口で約束の時間までボケーっと待っていると、小学生くらいの、ショートカットの、目のパッチリした美少女がやってきて、俺たちを見かけてこっちへ駆けてきた。


「お姉!」


 この美少女が由紀乃の妹らしい。


「あーきたね春奈」


 駆け寄ってきた小学生の頭を由紀乃がなでた。気のいいお姉ちゃんって顔である。


「思ったより年が離れてるんですね」


 意外そうに静流がつぶやいた。俺も口には出さなかったが同意見である。静流の言葉に、春奈と呼ばれた小学生の美少女が顔をあげる。誰だ? て顔をした。


「あの」


「あー、こっちのふたり、あたしの学校の知り合いでね。ついでだからつれてきたんだ」


「あ、そうだったんだ」


「どうも。春奈ちゃんっていうのね? 私は御堂静流。由紀乃先輩の後輩だから。よろしくね」


「俺は佐田哲朗。由紀乃の同級生」


 静流と一緒に自己紹介したら、春奈がぱっと俺を見た。なんか、珍しそうな顔をする。


「あーそうか。佐田哲朗。だからTSだったんだ」


「TS?」


「なんだお姉、背が高くて格好いい人じゃん? なんで教えてくれなかったんじゃんよ? ちゃんと紹介してくれたら、あたし、笑ったりしなかったし」


「わー!」


 由紀乃そっくりの口調で春奈がしゃべりだしたら、慌てた声をあげて由紀乃が春奈の口を抑えた。なんか、顔が真っ赤である。


「ちちち違うから! この人じゃねーから!」


「違うって、何が?」


「なんでもねーから! ほら、行くよ!」


 由紀乃が赤い顔のまま、春奈の腕を引っ張ってプールの入口まで歩いて行った。


 プールの入口では、本当に水着を売っていた。俺は適当にバミューダパンツ型の水着を購入。静流はワンピース型のピンクの水着を買っていた。


「あ、きたね佐田さん」


 入場料を払って更衣室でバミューダパンツに履き替えてプールに行くと、由紀乃と春奈が待っていた。由紀乃は赤いビキニ、春奈は黒いスクール水着である。小学生だからな。


「あの、お待たせしました」


 そのまま、さらに待ってたら、ワンピース姿の静流がやってきた。なんか、恥ずかしそうである。そのまま、赤い顔で俺の前まで近づいてきた。


「佐田師匠、あの、私、変じゃありませんか?」


「は? 変って?」


「あの、だから、その、この水着とか」


「よく似合ってると思うけど」


 という返事しか俺にはできなかった。間違っても似合ってないとは言えないし。


 それに、実際問題、清楚な感じの静流にワンピース水着はよく似合っていた。


「そんな恥ずかしそうにしないで、堂々としてていいと思うぞ」


「そ、そうですか」


 俺の言葉で自信がついたのか、静流が微笑んで顔をあげた


「じゃ、あの、私、カップルの会話とか、そういうの、見てきますね」


「あんまりジロジロ見てると怒られるから、こっそり観察しろよ」


「はい。じゃ、行ってきます」


 静流がピョコンと頭をさげて、そのままプールサイドまで歩いて行った。さて、俺はどうするかな。と思っていたら。


「佐田さん、泳ぎって得意ですか?」


 春奈が訊いてきた。


「ま、泳げないってわけじゃないけど」


「じゃ、あたしにクロール教えてくれませんか?」


「へ? べつにかまわないけど」


 とりあえず返事をしてから由紀乃を見たら、由紀乃も変な顔をしていた。


「クロールくらい、あたしが教えてやんよ? つか、春奈、クロールできなかったっけ?」


「できなかったよ。それにあたし、佐田さんにクロールを教えてほしいんだ」


 言って春奈が俺の腕をグイッと引いた。


「じゃ、佐田さん、行きましょうか。お姉のことは放っておいていいから」


「え、放っておくって、春奈ちゃん」


「ちょっと春奈」


「あたしのことは春奈でいいです。それからお姉、着替えてるときも、この人じゃないって、ずっと言ってたじゃん? なら、あたしにちょうだいよ」


「――ちょうだいって、俺はものじゃないんだけど」


「いいじゃないですか佐田さん。学校の男子なんて馬鹿な餓鬼ばっかりだし。あたし、佐田さんみたいな大人の男の人が趣味なんです」


「そりゃ光栄だな」


 小学生だからな。背伸びしたくなる年齢なんだろう。俺の横で由紀乃が慌てた顔をした。


「あのね春奈? あんま馬鹿なこと言ってると怒るよ?」


「あれ? お姉、いつもと違う。あたしが欲しいって言ったもの、いつもだったらなんでもくれるのに」


 だから俺はものじゃないって言うのに。俺はいたずらっぽく笑っている春奈の頭をなでた。


「あのな春奈ちゃん?」


「春奈でいいですってば」


「じゃ、お言葉に甘えて、春奈。教えてほしいんならクロールは教えるけど、教えるのは由紀乃も一緒だから」


 俺が言ったら、春奈が不満そうな顔をした。


「なんでですか?」


「君の保護者はお姉ちゃんの由紀乃だから。兄弟でも親戚でもない、俺みたいなのが、君みたいなかわいい女の子と一緒にいると、勘違いされた人に通報されちゃうんだ」


「あ、そうそう。佐田ってむっつりスケベだから。人の裸なんて平気で見るし」


「あれは事故だったろ」


「事故でもなんでも見たじゃん」


「それならそれでいいけど。ところで俺、誰の何を見たんだっけな?」


 由紀乃をにらみつけながら訊いたらおとなしくなった。


「佐田さん、誰かの裸を見たんですか?」


「あ、春奈ちゃんは気にしなくていい。じゃ、クロールを教えるけど、その前に準備体操をしようか」


「そうそう、準備体操をしないとね」


 言いながら由紀乃が春奈の手をひいた。そのまま顔を近づけて


「いくら春奈でも余計なこと言ったら殺すからね」


 小声で言っているのは聞こえていたんだが、俺は聞こえないふりをした。姉妹にもいろいろあるんだろう。

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