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第二章 起承転結の承。主人公、ヒロインと遊びに行くの図。・その3

「すると、ドラゴニアンのマリアは、主人公の佐竹鋼哲朗が中二的にすごい実力を持っているって知ってるわけか。自分で召喚したわけだし」


「はい、そのとおりです」


「ということは、もろラブでいいだろうな。自分で召喚したんだし。私のドラゴンスレイヤー様って感じで」


「あ、それ、いいですね」


「それから、魔法学園でトップクラスの実力者なんだから、性格も温厚なイメージがあるな。『なんとかですわ』って感じのしゃべり方とか」


「わかりました。そうします」


 静流がノートに書きこんだ。


「で、もうひとりのケモミミのジルだけど。これは、魔法学園で、どういう立ち位置なんだ? やっぱり、優等生のマリアとは対照的に劣等生だとか?」


「あ、ジルは、そもそも学園の生徒じゃないってことにしようと思ってます」


 今度は静流が俺にむかって手を左右に振った。


「ほら、魔法学園を舞台にしてても、ずっとそればっかりだと、読者が飽きちゃうんじゃないかって思っちゃって。私も、サーバナイトの、学園以外の世界も書きたいし。だから、ケモミミのジルは、魔法学園じゃなくて、下町の女の子にしたいんです」


「なるほど」


 俺はうなずいた。俺に話を聞くだけじゃない。静流も結構考えてるんだな。


「すると、主人公の佐竹鋼哲朗は、魔法学園だけじゃなくて、学園の外の下町も歩きまわるわけか」


「はい。そこで知り合ったケモミミのジルと仲良くなるんです」


「知り合うきっかけは、何か考えてるかな?」


「えーとですね。下町だから、なんか、トラブルがあって、それで、たまたま通りがかった主人公の佐竹鋼哲朗が活躍して、ケモミミのジルを助けて、そこで知り合う、なんていいんじゃないかと思います」


「なるほど。ベタだけど、ありなネタだな」


「で、そのケモミミのジルってのは、どんな性格なのさ?」


 由紀乃が訊いてきた。静流が笑顔でノートをめくる。


「性格って言うか、雰囲気なんですけど、ドラゴニアンのマリアとは対照的にしたいから、ここは、主人公の佐竹鋼哲朗にもろラブじゃなくて、気さくな友達って感じにしたいんです」


「なるほどね」


 返事をして、由紀乃が首をひねった。


「あのさ、ちょっと確認。その、ケモミミのジルって、下町のお姉ちゃんって設定なんだよね?」


「はい。そうするつもりです」


「で、主人公の佐竹鋼哲朗は、異世界サーバナイトにきたばっかりなんだから、サーバナイトの文化とか伝統は知らないわけじゃん? てことは、ジルから見れば、佐竹鋼哲朗ってのは、ものを知らない田舎者に見えるんじゃね?」


「――えーとですね」


 静流が少し考えた。


「はい。そういうことになります」


「じゃ、性格、もう決まったみたいなもんじゃん。下町のお姉ちゃんが知り合った男は、自分のことを助けてくれたヒーローだけど、ものを知らない田舎者でもありました。だったら『これだから田舎者は』なんてのを口癖にしておけば特徴になるし」


「あ、それいいな」


 俺も会話に加わった。


「それ、設定の説明でも使えるぞ。主人公に、『何がどうしたんだ?』とかなんとか言わせて、詳しいキャラに『これはこうなんだよ』で教える会話の形式で、読者に設定を説明するパターンだ。異世界トリップものでよくある常套手段だけど」


「あ、そうなんだ。じゃ、これ、マジで行けるんじゃね?」


 由紀乃がうなずいて、静流を見た。静流は無言でノートに書きこんでいる。もう採用は決定したらしい。


「ということは、あれですよね? ケモミミのジルは、主人公の佐竹鋼哲朗がドラゴンスレイヤーだって知らないことにしなくちゃいけませんよね?」


 顔をあげて静流が訊いてきた。


「ほら、佐竹鋼哲朗がドラゴンスレイヤーだって知られると、下町育ちのジルは、驚いて『いえいえ私なんて』てなっちゃうし」


「あ、それは、まァ、そうなるな。確かに」


 俺はうなずいた。


「じゃ、あれだ。水戸黄門とか、暴れん坊将軍とか、遠山の金さんのパターンだな。主人公の佐竹鋼哲朗は、魔法学園ではドラゴンスレイヤーとしてドラゴニアンのマリアに尊敬されてもろラブされてるけど、お忍びで下町に遊びに行ったときは、ただの田舎者で、ケモミミのジルに『これだから田舎者は』なんてからかわれてるわけか」


「おもしろそうじゃんそれ」


 由紀乃が興味深そうな顔をした。静流も嬉しそうにうなずき、ノートに記録しはじめる。


「あとは、もう少し、ケモミミのジルの性格を掘り下げてみるか」


 俺はつけたした。


「ドラゴニアンのマリアは、ドラゴニアンで、魔法学園の優等生で、主人公をリアル世界から召喚して、しかもラブしてる。おまけに『なんとかですわ』ってしゃべり方。十分すぎるほど特徴があるけど、ケモミミのジルは、もう少し特徴を強くしないと弱い気がする。どこにでもいる下町の女の子なんだし」


「あ、そうですね」


 静流がうなずいた。少し考えるようなそぶりを見せる。


「えーと、ケモミミで、下町で働いていて、田舎者と思ってる主人公の佐竹鋼哲朗と知り合って、それで仲良くなるんだから、面倒見がいい性格ってことになりますよね」


「そこまでは決定でいいと思う」


「だから、あとはえーと、下町で面倒見がいい性格なんだから――あっ」


 何か思いついた感じで静流が顔をあげた。


「あの、エルフの妹がいるっていうのはどうでしょうか?」


「は?」


「ほら、下町で面倒見がいいんですよね? だから、捨てられたエルフとか、そういう小さい子供を拾って、お姉さんとして面倒を見てるとか。それで、そういう姉妹の会話シーンを入れると、ジルの面倒見の良さとか、すごく強調されると思うんです」


「なるほどな」


「それに、ほら、ヒロインを決めるとき、ドラゴニアンとケモミミとエルフにするって話があったじゃないですか? だから、エルフも入れておけば、全部採用されるからいいと思いますし」


 俺は感心した。その手があったか。

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