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第一章 起承転結の起。主人公、ヒロインと出会うの図。・その8

「どれもこれも、大同小異って言うの? なんでそういうパターンばっかりなんだと思ってたら、売りたくて大量に女だして、それで、ひとりに決めると話がおわっちゃうから、恋愛関係だと主人公がヘタレになるのか」


「そうそう」


 うなずきながら俺も感心した。萌え豚アニメなんて言葉もあるけど、商業として、ちゃんと考えられてるんだな。分析するまで俺も気がつかなかった。


「とにかく、主人公が男で、ヒロインがふたりか、それ以上は理に適ってるんだ。だから、それでキャラクターを考えるように」


「わかりました」


 静流がうなずいた。その場で考えるように首をかしげる。


「えーとですね。サーバナイトは、ドラゴンと人間の混血が存在する世界なんです。ドラゴニアンって名前で、角が生えてて、魔力もすごく強いんですけど」


「あー、昨日も言ってたな」


「だから、ヒロインのひとりをドラゴニアンにすると、もうひとりのヒロインと差別化できると思うんです」


「なるほど。それ、いいかもしれないな」


 俺はうなずいた。ライトノベルはビジュアルも関係してくるからな。角のあるドラゴニアンはいいかもしれない。


「じゃ、もうひとりのヒロインは人間にするのか?」


「それは――」


 何気なく聞いた由紀乃に、静流が少し考えた。


「佐田師匠、どうしましょうか?」


「あ、それは、俺が決めることじゃない」


「え」


「なんだかんだ言って、俺は静流にアドバイスをするだけの人間だ。マンガの原作を考える立場じゃない。キャラクターは、話を書く人間が決めないと」


「――そうでした」


 静流がうなずいた。


「じゃ、私が考えないと。えーと」


「それくらいのアドバイスなら、あたしでもできるんじゃね?」


 由紀乃が言ってきた。


「だって、ファンタジーじゃん? エルフとかケモミミだせばいいんじゃね?」


 あっさりと言ってきた。俺は、静流に、自分で考えさせたかったんだが。静流が不思議そうに目をむける。


「由紀乃先輩、ケモミミってなんですか?」


「狼男の女版とか、そういう奴だよ。獣の耳でケモミミ」


「あ、なるほど。そうか。それがいいですね、ケモミミ」


 静流もあっさり同意した。


「じゃ、ヒロインふたりは、ドラゴニアンと、あと、エルフかケモミミってことで」


 なんか、簡単に決まってしまった。ま、静流がそれでいいって言うんなら、それでいいんだろう。


「じゃ、ヒロインはこれで差別化ができたな。それから、順番が逆になったけど、主人公を決めないと」


「主人公ですか」


 あらためて静流が考えこんだ。


「やっぱり、ヒロインがドラゴニアンとエルフかケモミミなんだから、主人公は人間がいいと思います」


「それは、俺もそれでいいと思う。主人公が人間なら、読者も感情移入しやすいだろうし」


「で、やっぱり強いのか?」


 由紀乃が訊いてきた。


「ほら、ファンタジーなんだろ? で、アクションって言ってたじゃん昨日。だったら、主人公が殴り合いでヘタレじゃ話にならないし、ドラゴニアンとか、なんかヒロインもスゲーし。主人公、俺ツエー系じゃないとまずいんじゃね?」


「俺ツエー系ってなんですか?」


 また静流が訊いてきた。


「主人公が無茶苦茶強い話だよ。ほら、アクションもので、主人公が苦しむと、読んでてスカッとしないじゃん? 主人公は強くてナンボだから」


「あ、なるほど」


「て言うか、静流も少しはネットで少し勉強するといいじゃね? ライトノベルを書こうってんだから、調べられるものは調べておいて損はしないじゃん?」


「はい。そうします」


 静流がうなずいた。俺だけじゃなくて由紀乃も創作の達人だと思っているらしい。変に疑問を持って質問してくれないのはありがたかった。


「じゃ、主人公は俺ツエー系ということで」


「となると、主人公には中二的な能力でも付加させるか」


「やっぱ、そうなるよな」


 由紀乃が言い、これに関しては、静流も嬉しそうにした。


「中二という言葉は昨日も使ってましたですね。それは私も知ってます」


「あ、それは話が早い。じゃ、それで行くか」


 地味な訓練で強くなるというのはリアルの常識だが、そういうのは読者が共感しない。俺は虎の巻を開いた。


「これは一九八〇年代後半ごろ、漫画家の高橋留美子先生が言っていた意見なんだけどな。『少年漫画の主人公は、読者があこがれる対象で、青年漫画の主人公は、読者が共感できるものにするといいと思います』だそうだ。だから、静流が書こうとしている話の読者を何歳くらいするかで書き方は変わると思うけど、このへんは意識するように」


「わかりました」


 静流がうなずいた。


「つまり、主人公は、最初は普通の男の子で、それで読者に感情移入させて、何者かに、何かの資格で選ばれて、急に強くなる中二設定ってことでいいですね?」


「合格!」


 俺は軽く手を叩いた。時計を見る。そろそろいい時刻だった。


「じゃ、今日はこれで終了だけど、最後におさらいだ。静流が書くサーバナイトは、異世界ファンタジーで、主人公が悪い奴をやっつけるアクションもの。主人公は男で中二設定。ヒロインはふたりで、ひとりはドラゴニアン。もうひとりはエルフかケモミミだな」


「はい! ありがとうございました、佐田師匠」


 静流が元気に返事をした。そりゃいいんだが。俺は内心、額の汗をぬぐった。とりあえず、本日のところは、俺がラノベの達人ってことでごまかしが効いたようである。


 その日の夜。


>というわけで、うまく指導できました。ありがとうございます。


 ネットのチャットでプロ作家に礼を言ったら、こんな返事がきた。


>主人公が人間で、ヒロインがドラゴニアンとケモミミって、それは外見的な特徴と設定でしかないですよね? ライトノベルはキャラクター小説なんだから、性格等、内面も考えないと、ただの設定資料集でおわっちゃう気がするんですけど?


「――あ。そうだった」




 本日のおさらい。


・「『舞台を学園しろ』『主人公は男以外ダメ』『主人公以外の主要キャラを女にしろ』『ラブを入れろ』」(読み人知らず)


・「まずは形から入れ。習うより慣れろ。型破りは型を覚えてからだ」(市川猿之助丈先生。要約)


・「メインキャラは三人以上」(出版社F。要約)


・「ダーティペア・コンセプト。ヒロインは複数」(出版社A。要約)

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