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第一章 起承転結の起。主人公、ヒロインと出会うの図。・その7

「というわけで、とりあえず、主人公は男ということで。これが基本の型だから」


「はい、わかりました」


 静流がおとなしくうなずいた。こっちは素直で助かる。


「じゃ、あの、主人公は男ってことで」


「ほかはどうするんじゃんよ? 学園とか女キャラとかラブってのは?」


「あ、それもありましたですね」


 由紀乃の質問に静流が少し考えた。


「サーバナイトは異世界でファンタジーだから、学園ものにはできないですね。どうしよう」


「そこは、ファンタジーで学園ものにすればいいんだ。魔法学校とか」


「あ、そうか。そうですね。あと、女キャラとラブは、なんとかできるかな。考えます」


「じゃ、主人公は男で、あと、ヒロインがひとり。これで決定じゃん」


「それから、第三キャラだな」


 納得しかけた静流と由紀乃に俺がつけたした。


「「第三キャラ?」」


 ふたりしてハモって聞いてきた。視線をそらして、虎の巻をめくる。


「えーとだな。これはFっていう文庫で、一九九八年から二〇〇四年の間に聞いた話らしいんだけど。『メインキャラはボケとツッコミのふたりだけでなく、三人目を入れてください。ボケその2でもツッコミその2でも、その他の仲裁役でもいいから。メインがAとBのふたりだと、会話がAとBふたりの間だけの一種類になってしまいますが、A、B、Cの三人だと、AとBの会話、BとCの会話、CとAの会話と、会話のバリエーションが一気に増えます』だそうだ」


 虎の巻を朗読して、俺はふたりを見た。ふたりは、何か考えるような顔をしている。


「あ、そうか。そう言われたら、そうじゃん。ひとり増えただけで、会話のパターンって増えるんだな。気がつかなかった」


「ですね」


 少しして、ふたりとも納得したような顔をした。今度はわかりやすかったらしい。


「じゃ、あれじゃね? 主人公が男で、恋人役のヒロインがいて、あと、恋敵のライバルがいて、それで熱血するって言う、少年マンガのパターンで行けばいいんじゃね?」


「なるほど、じゃ、登場人物は、その三人で」


「ただ、恋敵のライバルだと、そいつも男になっちゃうな。主人公以外の主要キャラを女にするのは無理じゃね?」


「はいストップ」


 ここでも俺は制止の声をかけた。虎の巻をめくる。


「その虎の巻、なんでも書いてあるんだな」


 由紀乃が感心したように言った。実際、いろいろ書いてあるんだこれが。


「これは二〇〇〇年ごろ、Aっていう出版社があって、そこで聞いた話らしいんだけど。『ダーティペア・コンセプトと言われている考えがあります。ボーイッシュな女の子と大和撫子な女の子の両方をだせば、どちらかにはファンがつくはず。うまくすれば二倍売れるというものです』だそうだ」


 言って俺は由紀乃と静流を見た。


「だから、ライトノベルを書く基本として、男の主人公ひとりに対して、ボーイッシュとか大和撫子とか、とにかくタイプの違うヒロインをふたりか、それ以上だす。で、そのふたりが主人公に恋をしているという形が基本だと俺は思う」


 もちろん例外もあるだろうが、まずは形を修得しなくてはならない。


「あれ? でも、サーバナイトってアクションなんだろ? 恋愛なんか書いてどうするんじゃんよ?」


「アクションはアクションとして書くけど、それを踏まえた上で、さらにラブコメやラブロマンスは書いてもいいんだよ」


 由紀乃の質問に俺はこたえた。


「ほら、ハリウッドのアクション映画でも、たいていはラブロマンスやラブコメディが入ってるだろ? それと同じだよ」


「ランボーラブコメ入ってねーじゃん」


「そりゃ、例外だってある。俺が言ってるのは一般論だ。――そうだな。食べ物にたとえると、恋愛っていうのは、何にでも合う万能調味料みたいなものなんだ。飯を食ってて、塩分が足りないときは醤油をかけるだろ? それと同じだよ。ライトノベルにも恋愛要素はかけておいて損はない」


「そうだったんですか」


 静流が感心したようにうなずいた。


「わかりました。じゃ、何か考えます」


 と言う静流とはべつに、


「あーそうだ。だから、深夜アニメって女がやたらと多いんだな」


 由紀乃が納得した顔をした。


「タイプの違う女がふたりいたら、どっちかにファンがつく。ふたりで二倍売れるって言うんなら、五人いれば、五倍売れるからな。そういう理屈でつくってあるのか。ていうか、それって金儲け主義一辺倒じゃん」


「そりゃ、出版者は金儲け目的で小説を売ってるからな。慈善事業でやってるわけじゃないし」


「あ、ちょ、ちょっと待ってください」


 俺と由紀乃の話を聞いていた静流が手をあげた。


「あの、いまの話だと、深夜アニメになるライトノベルって、ヒロインが五人くらいでてくるんですよね?」


「そうだけど?」


 静流はライトノベルを読んでないと言うが、深夜アニメも見ていないらしい。――本当に、なんでプロ作家を目指そうとしてるんだろうな、と俺は少し考えた。


「それで、あの、ラブも入れなくちゃいけないんですよね? それだと、五人のヒロインが主人公に恋をするんですけど。じゃ、主人公は五人と浮気するんですか?」


「あーそうはならないんだ」


 俺は手を左右に振った。


「鈍感主人公とか、難聴主人公って言葉があってな。そういう話の場合、主人公はヒロインの好意に気づかなかったり、重要な告白は、なんでか独り言みたいな小声だったりして、主人公には聞こえないものなんだ」


「そうだったんですか」


「あ、だから深夜アニメって、そういうパターンになるのか」


 こっちは深夜アニメも見ている由紀乃の言葉だった。

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