レジスタンス
「我々は抵抗するものだ! もう、後戻りはできない。」
一言、一言がレジスタンスの人々の心を奮わせる。今宵、レジスタンスはこの帝国の都に攻め上る。もう、後戻りはできない。そうしようとする者すらいない。
「我々は平和を求めてきた。しかし、安寧と平穏、この二つが失われ、もう、十年が経つ。平和的に解決することはできない。だが、この戦いで安寧と平穏が取り戻されることを願い、我々は今宵、帝都に攻め上る。」
帝都への道は険しく、危険で敵も多い。勝ち目なんて言葉すら知らないレジスタンスは、奪われた安寧、失った平穏を取り戻すため、帝都に攻め上る。
「皆、我に続け!」
言葉一つ。たった一つの言葉に死んで来い、勝って来い、殺して来いなんて物騒な意味が含まれている。帝国は軍隊を十つ持っており、一つ一つが精鋭である。レジスタンスに勝ち目は薄い。しかし、そんなこと、レジスタンスは知らない。レジスタンスは勇気と正義、自由を掲げて、帝国を破る。そんな、夢に等しいことを思い描いた指導者は今、こうして、出撃前の鼓舞をしている。レジスタンスが敗北することを免れるための唯一つの方法は、隣り合った共和国の助けを得ること。
「我々には共和国という、とても強い後ろ盾がある。皆、恐れずに続け。」
行軍途中も、指導者は鼓舞を続ける。帝国に殺される恐怖を忘れさせるために。なんと馬鹿馬鹿しいことを、と帝国は思うだろう。しかし、彼らも必死である。レジスタンスを甘く見てはいけない。そう思うばかりである。
「行け、平和のために。行け、正義のために。行け、平和のために。」
声は次第に強くなる。行軍するにつれて、指導者の声しか聞こえなくなる。そうすることで、この苦しさを労ってもらうのだ。平和、正義、自由を手に入れられるのならば、レジスタンスは何も恐れない。なににも苦労しない。どんなに苦しかろうと、我慢できるだけの力が湧いてくる。レジスタンスは恐ろしく強い。帝国にとって、恐るべき存在になりつつある。行軍の最中ですら、彼らは進化を続けている。少しずつ、士気を上げていく。
「我らはもう、何にも負けない。我々は強い。信じろ、己の強さを。」
ついに、帝都に辿り着く。そこでも、レジスタンスは恐ろしく強い。帝国など取るに足らない雑魚であるかのように。二日で三個の軍隊を潰した。勝算など、一かけらも見えなかったはずのレジスタンスが今、こうして帝国を蹴散らしている。しかし、当の本人たちは、何も見えていない。唯一つ、見えているものがあるとすれば、平和でも、自由でも、正義でもない。それは、希望だ。このままいけば、帝国を倒せる。そんな希望が彼らを突き進ませるのだった。たとえ、死に向かう道だとしても、彼らは希望のために、その希望を途絶えさせないために、自らの命を捨てていく。
「敵を蹴散らせ。勝てる、勝てるぞ!」
鼓舞も、もはや、鼓舞の形を留めていない。ただの怒号に過ぎない。しかし、彼らには希望となる。その希望が、遂には四つの軍隊も倒した。帝国は残すところ、もう、三つの軍隊しか持たない。といっても、相当の数がいるのではあるが。しかし、彼らは強い。どこまでも強い。希望はどこまでも人を突き動かす。希望があるから戦える。戦うことが出来るから、勝つことが出来る。
レジスタンスは、帝国の軍隊をすべて破った。軍の形も留めずに、士気だけで、希望だけで戦った。彼らは強い。希望は強い。